第35話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「今日も暑いな」
昨日の疲れか朝起きるのが遅くなったのですっかり太陽は顔を出してジリジリと背中を焼いてくる。自転車を漕いで風を浴びているのに汗が止まらない。
「ん?」
車の少ないルートでなるべく止まらずに河川敷の異界安全区域まで付いたが、入り口を潜って異界の出入り口ゲートを目指すと何やら騒がしい気配を感じる。俺と同業であろうハンターたちも困惑した表情を浮かべているようだ。
「警察?」
その原因は異界のゲート前で検問している警察。なんでこんなところで検問と思ったが気にせず進むとなにやら余計に騒がしくなる。
あ、原因分かった。
「おい! 貴様止まれ!」
「なんだよ、飛び出してくんなよ当たり屋か?」
あの迷惑おじさんだ。ゲートに向かって走る俺の目の前に跳び出してきやがったんだが、新手の当たり屋かな? 偶にいるんだよな、ぶつかった轢き殺されると叫びながら自分から突っ込んで来るやつら、アホなのかな。
「ちょっと、落ち着いてください」
「少し話を聞きたいんだけど、いいかな?」
「職質?」
どうやら職質の様だが、警察に捕まってるおっさんがニヤニヤとした気持ち悪い表情を浮かべている。暑いから頭やられたのかな? ご愁傷様です。あと警察はもっと自分たちの影響力を考えてほしい、そんな五人も六人も来て一人を囲むとか怖すぎる。
「そうだね」
「手短に頼むよ、これから狩りだからさ」
でもそんな警察の群れも1山本恐怖度より低いので耐えられる。ありがとう公安の山本さん、貴方の恐怖の笑顔を体験したおかげで尻込みせずに済みました。あと俺が職質された時の為にとか言う話のフラグ回収です馬鹿野郎。
「何が狩りだ! お前の不正は解っているんだぞ!」
「……何の話?」
ほんと何の話? 不正? 何かやったかな? 警察の人もめっちゃ睨むやん、でも全然怖くない。山本さんなんて無表情でこっち見るだけで怖いんだぞ? あの真っ黒でドロドロした目で見られると殺されると思うよね。子供とか睨らまれたら心停止するんじゃないかな。
「荷物の確認をさせてほしいだよ」
荷物検査したら判明する不正って何だろう? 許可証は持ってるし、タグもあるし、あとは飲み物とかお腹空いた時に食べられるよう入れておいた栄養調整用食品くらいか、異界に飲食持ち込み禁止とかないはずだよな、わからん。
「良いけど、財布とか入ってるから丁寧に頼むよ」
「わかりました」
財布の中身抜くなよ? 悪い奴はどこにでもいるからな、まぁ抜く金もあんまり入ってないわけだけど……悲しくなってきた。
「自転車も構いませんか?」
「自転車も? まぁいいけど」
パトカーのボンネットの上にトレーみたいなの置いて荷物広げているけど、自転車もって事は下りるのか、仕方ないな。あとなんか見られ方が覚せい剤とかの所持を疑われている人みたいで嫌なんだが、ほら今も異界に出入りする人にめっちゃ見られてひそひそ話されてるし、なんちゅう場所で職質して来るんだか。
「これでお前も終わりだな! 俺の大地下道で好き勝手はさせんぞ」
「あの、この人誰ですか?」
この三下感マシマシのおっさん誰? 管理協会の職員だろうとしか知らないから名前も知らないんだけど、俺リアルで初めてそんなセリフ聞いたよ。こんなこと言う人っていたんだな、てか俺の大地下道ってどっかの飲食店みたいですけど頭大丈夫かなほんと。
「あのですね、邪魔するんなら帰って貰えます?」
警察もイライラしてるな、暑いとイライラするよね。ただでさえ暑いのにあんな喚いてるの見たら余計に心が熱くなってきちゃうんだけど、早く異界に入りたいなぁ。
えぇ、めっちゃバックパック裏返そうとかしてるんだけど、それ硬いから裏返せないよ? 壊さないでほしいんだけど。
「なんだと! ふざけるな」
「はいはいこっち来て」
「おい触るな!」
おっさん退場、散々良く分からないことを喚いて警察に拘束されての退場である。俺はあんな大人にはなりたくないし、警察のお世話にもなりたくないのだが、ここ数ヶ月でめっちゃお世話になってる事実がとても解せない。今も偶に山本のおっさんからメール来るしなんなんだろう。
「特に問題は無いですね、許可証も携帯していますし、C級の望月羅糸さんで間違いないですよね?」
「はい……何の疑い? 任意みたいだけど」
任意は別に受けなくてもいい、とは言え下手に逃げるよりちゃんと応対した方が良いとは山本のおっさんのアドバイス。逃げると追いたくなるし、馬鹿な警察官だと殴ってくるから馬鹿を見ると言っていた。でも単独で職質して来る詐欺師も居るから気を付けろと電話番号を教えてくるの、寧ろ山本のおっさんの方が怪しいまであるんだけど、何の疑いなのやら。
「こちらは?」
今度は自転車を調べていた警官から声がかかる。ほんと人数が多い。
「フライパンです」
「フライパンですね」
「フライパンだな……問題ないだろ」
フライパンである。警察官4人と俺で見詰めるのはチタン製のフライパン、買ったは良いが今のところあまり活躍してない。空き缶バッタはスルーしてるからな、転ばぬ先のとは言え、偶には活躍してもらおうかな。
あと、大人五人でフライパンを見詰めるのは実にシュール、あとフライパン持っている警察官が軽いですね、良いですねとか言ってるけど、それ料理に使ったこと無いんですごめんなさい。
「外で振り回さないようにな」
「盾代わりです」
「C級か、大変だな」
盾代わりと言ったら料理好きそうな警官の男性がショックを受けたように顔を上げるし、一番年配の男性はものすごく心配そうにこちらを見てくる。何だろう、つい先ほどまで犯罪者を見るような目をしていた警察の人たちが妙にお疲れと言うか、気が緩んでいる感じだ。良いのかそれで? 俺は良いんだけど、結局なんなんだろう。
「ほんと、盾ぐらい普通に使わせてほしいですよ」
「ふむ、特に問題は無いな? 君は奥で活動しているそうだが、危険はないのか?」
危険か、危険はいっぱいだよ。
「中はどこも危険ですよ? 今のところ注意さえしてれば大きな危険はないですけどね。ミスると大変ですけが……詳しくは教えませんよ?」
「ああ、そこは理解している。少し前にも無理やり聞き出そうとして問題になっているからな」
警察でも問題になっているのか、まぁ飯の種を深く探ってくる相手なんて怪しくて仕方ないだろうからな。特にハンターなんて半分は失業者だとか言うし、突然クビになって必死な人もいるだろうから余計に周囲が信用できないだろうな。
怪しいと言えばあのおっさんだろう、しつこく報告しろとか訴えるとか言ってたし、今回のこれも十中八九あのおっさんが通報したからだろ。だって、俺が捕まってから異界出入りしてる人いっぱいいるけど何の職質もされて無いし、最初から俺が狙いだったとしか思えない。ご苦労様です。
「あの人はしつこく聞いて来ましたけどね、教えないと訴えるとか」
「ほう? 今度はあっちに詳しく聞かないとな」
うわ、なんか警察の人の目にギラギラした光が宿った気がする。こう、ロボット物のアニメで暴走とかする前にアイカメラが点灯するような感じだ。こわいわぁ。
「行って良いですか」
「ご協力感謝します。お気をつけて」
めっちゃにっこにこでバックパック返してくた。あと何人か警察がおっさんを連れて行った方に駆けて行く。とりあえず敬礼を返しておくことにした。
あと、警察関連で面倒に巻き込まれたら名前出していいぞとか、連絡しろとか山本のおっさんが言ってたけど、まぁ匂わせくらいしとくか。今度電話かかってきた時にでも笑い話にするとしよう。
「いえいえ、公安の知り合いから職質は逃げない方が良いと聞いてたんで」
「え?」
なんか警察の人の顔が引き攣ってるけど、公安て嫌われてんのかな。……山本のおっさん顔がこわいからなぁ? あと一緒にいた人たちも体格が厳つかったし、あんな人たちしかいなかったら怖いか。
「あ、お疲れ様です。大丈夫でしたか?」
いつもの警備員の女性が声を掛けてくる。なんだか最近フレンドリーじゃないですか? 童貞男子はすぐ勘違いするのでやめてください。突然の笑顔とか心臓に悪いです。
「狩りもしてないのに疲れました」
「申し訳ありません。どうにも彼は色々勘違いしているらしく」
勘違いおっさんだったか、俺も変な勘違いして問題起こす様なおっさんにならないように気を付けないと、だからこの笑顔も営業スマイル、汗だくの俺に大丈夫ですかとか声かけて来てるけど、これも社交辞令、証明完了。
「あの人ってこの異界の所有者なんですか? 自分の物と言ってましたけど」
とりあえず気になることは聞いておこう。ここの土地権利者とかだと歯向かって出禁にされるかもしれない。
「はぁ……異界は現状誰も所有できないことになっていますよ、管理は任されますけど、個人ではないです」
問題ないらしい。と言う事は、自分の一声で異界もお前もどうとでも出来ると勘違いしている可哀そうなおっさんでいいと言う事だ。哀れであるが非常にめんどくさい無敵のおっさんと言う事は……。
「大変ですね」
「お互いに、ですね」
疲れた表情のお姉さんは大変なことを否定しなかった。いやほんと余計なことする同僚ほど厄介な者は居ない。お姉さんが疲れるのも良く分かる。
その点何もしない大輔はある意味悪い同僚ではなかったのかもしれない。いや、パソコンのデータ消去は何回かやってるからやっぱ駄目だな。
いかがでしたでしょうか?
なんだか異界警備のお姉さんから好感度アップの音がしますね。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー




