第32話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「おい待て!」
「ん?」
なんだ? こっちは昨日のおにぎりガチャの爆死具合に疲れてるんだから勘弁してほしい、今日は早めに目的を達成してガチャを回さないといけないんだ。違う違う、だめだなガチャの結果が悪いと余計に回したくなるのは悪いところだ。
「お前だ、お前その自転車で奥まで入っていると聞いたが間違いないか?」
「ええ、そうですね」
誰だこいつ? この高圧的な態度は糞上司と似たような臭いがするぞ? 臭いな……。
「奥で何を見た、何を倒した」
「え?」
何なんだこいつ? 社会常識分からない系のやべぇやつかよ、めんどくさいのに絡まれたな、取引先にも無駄に高圧的な社員とかいたけど、何がしたいのかわからん。あとそんなに眉間に皺寄せてたら将来皺が消えなくなるらしいからやめた方が良いぞ? ソースは大輔……ちょっと不安になってきたな。
「この異界では初見のドロップを持っていたことは確認している。言え」
「嫌ですけど?」
別に話してもいいけどこいつに話すのはなんか嫌だな、昨日の受付に居たびっくりお姉さんなら話したかもしれないけど、初対面で名乗りもせずいきなり絡んでくるおっさんになんで真面な対応しないといけないんだよ。大丈夫かこいつ? 夏の暑さで脳細胞焼かれたんかな? 引くなぁ、暑いからって袋に入ったアイスを股間に入れてた部長並みに引くやつ久しぶりに見たわ。
「なんだと? 許可証を剥奪しても良いんだぞ?」
「言う必要ないでしょ」
なんだろう、この出来ないことをさも出来るぞといった態度で脅してくる痛い人、もう完全に戦争状態だよ、決めた絶対教えない。と言うかほんと誰だこいつ? 初対面の相手にここまで言える人間も珍しいな奇行種かな。
「俺が言えと言っているんだ!」
だから誰だよ、全世界的に有名なのか? そのセリフは痛すぎる。
「自分で調べたらいいでしょ? こっちは何の得もないのに」
「お前には報告義務がある!」
まぁ何となくこいつが何者なのかわかりゃするんだけど、社会人はしっかり自己紹介しないと話し始まらないよ? 察して貰い待ちとかしてくる人良く居るけど、あれ何がしたいのか分からないんだよね。たぶん化物対策協会の人間だろうな、異界管理の官民共同会社に出向してる役人はそっから来てると高橋さんが言っていた。
「なに? 馬鹿にしてんの? そんな義務ないでしょ」
あと異界に立ち入った際に見聞きした情報の報告義務はない。昨日調べたらこれらの報告強要は普通に違反らしいけど、いつもの如く回りくどい言い回しの法令で理解してる人は少ないそうだ。俺も意訳動画を見るまで分からんかった。
「危機報告義務だ! 報告を怠れば免停だぞ、いいのか?」
「C級の俺には無いね、そいつはB級以上が対象だ」
「そんなもの関係ない!」
いやいや、どんだけ自分勝手だよ。なんかものすごくイライラして来たぞ? C級になっら優遇措置を与えないばかりか何癖まで付けて来るとか、やっぱ国の人間は嫌いだな、あでも高橋さんは良い人だから好き。山本のおっさんは、ぎりぎり嫌いじゃないくらいかな? うさん臭さで大幅マイナスだな、本人に行ったら撃たれそうで言えないけど。
「ねぇわけないだろ」
もぉいいやさっさと異界に入ってしまおう。そこまで追ってこないだろ、見るからに室内から出てこないタイプの体型だし、危ない所には来ないだろう。
「おいまて!」
「あんたの方こそ、許可証所持者への違法な異界立ち入り制限にならないの? 放してもらえる?」
「ぐっ……」
これテストに出るよ、異界への立ち入りが許可されている人間を無理に入らせないようにすると普通に違反である。なんか民間人が私有地に出来た異界だからと関所を作って入場料を徴収したとかで急遽決まった決まりらしい。出入り禁止にする場合はちゃんの手続きした上で十日前に告知する事となっている。
まだ試験受けてそんなに経ってないから俺でも覚えてるわけだ。そのうち詳細を忘れる自信がある。
「何か問題がありましたか?」
「っ! 何もない、失礼する!」
「ありがとうございます」
ありがたい、助けてくれたのは俺の自転車入場を止めたことがある若い女性の警備員さんだ。彼女に対する好感度が上がった様な気がする。でもまた自転車注意されたら下がると思う。
「いえ、目を付けられたと思うので気を付けてください」
「……?」
目を付けられる? まぁあの調子じゃ謎の恨みを買ってそうだけど、それ以前にあのおっさんがこの人の恨み買ってない? ものすごく睨んでるんですけど、やだわぁ可愛い女の子があんな顔したらガチで怖いんですけど、あのおっさんなにした。
「ふふふ、私達は民間企業の出向なのであいつら嫌いなんですよ。内緒ですよ」
「ほーん、了解です」
お、突っ込まんとこ、来れガチだわ。
俺この顔知ってるんだ! 笑ってるのに笑ってない感じの微笑み! 僕は会社で見たんだ、同じような笑みを浮かべた女性社員が、部長のお茶に排水口のカゴの水入れてたの! 部長はその日急にお腹が痛くなって病院に行ってたんだ。何も言わなかった僕は女性社員からお菓子を貰ったの、去り際に人差し指で口を押えられたけど、僕にはなにがなんだか……社会人一年目の夏の話。
「お気をつけて」
やっぱ女は怖い生き物なんだな、気を付けないとあのおっさんも刺されるんじゃないか? 近付かんとこ! そうしよう、さぁ異界が俺を待ってる。
「官民協力、協力とか言いつつ壁と言うか軋轢があるのね」
あー怖かった。俺に実害があるわけじゃないんだろうけど、女の人ってニコニコしながら刺してくるとこあるよなぁ? そう考えると毎日カリカリしてたお局は、ある意味分かりやすくて良かったのだろうか? いやそれも面倒ではあるんだけども。
「おっと、気を抜いちゃいけないな」
朝から気分悪くなるは寒くなるわで気もそぞろになってしまった。ここまで周囲警戒しないで自転車漕いできたけど、化物いたら危なかったな。
「ん? 墜落ドローンが増えてるな」
この辺りまで入り込んでいたドローンは無かったはずなのに、複数のドローンが落ちている。どれもこれまで同様に拉げて落ちているので、空き缶バッタにやられたんだろうけど、よくこんな奥まで……そうか、俺が間引いて来てたからか。
「よし、ここだ」
目印発見! 降車! 目印破壊! 周囲警戒! ……なんちゃって、一人だとちょっと遊びたくなるよね、男の子だもん。
新しいドローン墓場エリアも抜けて、ここまで化物との遭遇無し、今日は妙に楽だけど何でだろう。楽なのは良い事なんだけど、新しい化物までいないとなると困る。
「さて、行くか」
一頻り周囲を見て回っても化物は見当たらない。これなら自転車を置いて行っても壊されることは無いだろう。
「……静かだな」
道中よさげな石を拾いながらゆっくり進む、焦っても良い事なんてないのでしっかり周囲を確認して行く。薄暗い、薄暗いが空き缶バッタの件があるのでこれまで通りライトは使用しない。ここまでくる間も自転車は無灯火、ちなみに異界は国外と言う扱いなので自転車のライトを点けていないからと怒られる事は無い……と思う。
「ん?」
何か聴こえた気がしたので立ち止まる。ついでに屈んで姿勢を低くして耳を澄ます。
一定の感覚で音がする。鈍い音と一緒に砂利を擦り合わせるような音。
「足音? ……こっちかな?」
足音だと思うが人の足音とはどこか違う、表現が難しいけど足音より地面の砂利をや土の音の方が大きい気がする。音がしているのは右斜め前方、両手に石を握って前進することにした。
「……なんだあれ」
薄暗い地下道で視認できる限界の場所で何かが揺れる。ゆっくり近づけば少しずつそのシルエットがはっきりしてくるが、はっきりしてきてもそれが何か今一わからない。化物なんて色々な形や大きさがあるが、大きさ的に幼稚園児くらいだろうか、いやもっと小さい気もする。
あれは、
「あれは……一斗缶?」
一斗缶、それは角型の金属缶で、たしか容量は規格で18リットルと決められているはずだ。なんでそんなことを知ってるかと言えば、大量のせんべいが入った半缶と言うのがあるんだが、その名前の由来を大輔と調べていて、そのついでに教えてもらったからだ。アウトドアで使うらしい、何に使うか知らんけど。
その一斗缶が歩いている。短い脚でフラフラ左右に揺れながら歩き、側面から這えた腕を大きく振ってバランスをとっている。
「上位互換見つけた」
完全にジュース缶の上位互換、Tの動画に出ていたランクアップ理論は正解だ。
「来た!」
こっちに気が付いて勢いよく振り返る一斗缶、その瞬間化物の体から凹む様な膨らむ様な鈍い音が鳴る。あの中身かなりの量の液体が入ってるに違いない、これまでの傾向から中身は燃料、よたよたと駆け出すが結構早い。右手に何か持っている……攻撃方法も同じか、なら交換が効く、逃げるな。
「良く見ろ、良く見ろ……っ交換! な!?」
うそだろ!?
「うおおおおおお!!?」
くっさ!? ガソリンだ!? アイツ自分で蓋開けるのはスチール缶と同じ行動だけど、ガソリンの噴出する量がおかしい、回れ右して全力で走っているのにガソリンが降り注いでくる。
「……お、おお?」
心臓が痛い、後ろを向けばガソリンで地面が湿っていてガソリンの臭いが立ち込めていて気持ち悪い。あれ? ガソリン吸引したらまずいのでは? あ、地面から黒い塵が湧き出て来た。
「これは、ライターか? あ、消えた」
手の中の、ライターだろうか? 不思議な形の道具も塵となってい消えて行く、倒せたようだ。ジュース缶シリーズ同様に中身の燃料が無くなると死ぬらしい、アルミ缶はすぐに拉げて消えるけど、スチール缶は立ち上がろうとしてそのまま塵となる。
一斗缶はどんな風に死ぬのか分からない、なにせかなり逃げたからもうすでに黒い塵の塊のようになっているからだ。大きいだけあって消えるのにも少し時間が必要なようで、スケルトンよりも時間が掛かているようにも見える。
「ドロップは」
ガソリンの臭いが立ち込める中を歩きドロップに近付く、完全に黒い塵が晴れるとそこから緑色の大きな何かが現れた。これは、ガソリン携行缶だろうか? 昔エジプトに連れて行かれた時、ジープの後ろに括り付けられていたのを見たことがある。あれを細く小さくしたような缶だ。父親にガソリン携行缶だと説明されたけど、日本の一般的なガソリン携行缶と違って後々混乱したのはいい思い出だ。
「臭っ!」
ガソリンだ! これで真面にお金が稼げる! ちょっと危ないけど何とかなると思う。それにしても臭い、ガソリンの臭いが好きな奴もいたけど、俺はそんなに好きではない。嫌いというわけでもないが、ずっと嗅いでいたいとかは思わないし、確認の為に毎回蓋開けて匂い嗅ぐのも嫌だな。
「あ、ガソリンって書いてある」
めっちゃ親切設計じゃん。
「5リットルかぁ……左右に3本ずつ、いけるか?」
容量も書いてある。新設設計すぎるが、ドロップっていったい何なんだろうな? 普通に考えればあの白い世界で言っていた救済なんだろうけど、見た目もとても人間臭い作りの携行缶、片手で持ちやすい取っ手に、給油しやすい作りの斜めに付いた蓋、妙に至れり尽くせりだよな、まぁ金になるから良いんだけど。
「とりあえず、この辺りをベースに探すか」
あまり気にしても仕方ないので地面に転がっている石を集めて目印の小山を作る。薄暗い中に浮かび上がる石積みはやっぱり不気味だ。
「それにしても臭い、完全には消えないこの匂い何とかならんのかなぁ」
石積みしてる間も思ったけど、あれだけ吹き出したガソリンがすっかり消えている。代わりに匂いは残っているような気がするんだけど、これは鼻がおかしくなっただけなのか、服に降りかかったガソリンも塵になってたと思ったが匂いは残るのだろうか? もっときれいな狩り方をしないといけないな。
「ま! とりあえずは倒せただけ良いとするか」
うん、前向き前向き、一番いい形で予測も当たったし、これで20万なんとか稼げるだろう。でも結構大きいから一日に骨並みに稼ぐなら何往復もしないといけないな、でもねーちゃんが助かるなら何の問題も無いな。
さ! 次はもっとスムーズに狩るぞ。
いかがでしたでしょうか?
目的の敵を発見した羅糸、次の目標は効率化の様ですね。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー




