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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第31話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「割れメタルか」


「割れメタル?」


 倒すと経験値がいっぱい貰えるスライムの仲間かなんかですか? 俺の魔法もレベルアップしませんかね。


「いろんな金属の破片だよ、まぁ品質は良いらしいからガチャみたいなもんだよな」


「ガチャですか」


 ガチャとな? わたくしガチャには一家言有るって程でもないけど、その言葉がとても魅力的で悪い文明なのは知っています。よくSNSで滅ぼそうとしてる人たちを見るくらいには嗜んでいますが、どんなガチャですか? 私気になります。


「ああ、金の割れメタルとかならグラム一万は固いからな」


「金かぁ」


 なるほど、金も出るのか……そりゃこんだけ持ってきてこれだけの種類があるわけだ。全部で12個あったけど売却は半分以下、それ以外はコレクション行きである。今は調べてもらった店員さんにラベルを張ってもらっているが、コレクションの話をしたら「その気持ちわかるっす!」と言ってサービスでラベリングしてくれていた。ぐう有能店員である。


「まぁ大抵は真鍮とかを金と言って持ってくるんだけどな」


「あぁ……」


 あーなんだかよく聞く話だな、例えるなら同じ会社の同じ部署の部長とか言う役職の人が、海外旅行のお土産に金杯を買って来たけど、安かったとか言って真鍮だったって落ちが付いた話とか思い出す。あのあと不機嫌になるわ、仕事放棄するわ、社員にセクハラするわで大変だった。


 あ、セクハラは何時もの事だから違うか、すぐに脛を蹴飛ばされて悶絶してたけど、そんな思い出はどうでもいい。


「これはどっから採って来たんだ? 両国大井戸か? それとも埼玉の鉱山異界か?」


 なにそこ、ちょっと気になる。後で検索しておこう。


「江戸川大地下道です」


「なに? あそこも出るのか、ああいや何がドロップしたかは聞かねえよ」


「え?」


 おや? そこは聞いておきたいところじゃないのかな? 買取り所のお姉さんは聞いて来たぞ? 変な顔してたけど。


「みんな言いたがらねぇさ、飯の種だからな。知らせないといけないなんて決まりもねぇ」


「そうなんだ」


 何か暗黙のルールがあるっぽいな、まぁ確かに自分の飯の種をあちこちに言いふらす必要も無いか、なんせ異界は現代のフロンティアとか言われ始めてるらしいからな、割れメタルで金出した日には、あっという間に金持ちだろうし……俺もこのガチャで20万を、いや止めとこう。新春お正月ガチャ大爆死とか言う嫌な思い出が蘇って来て胃がキュッとなる。


「協会も自前で雇った奴らに調べさせてるからな、聞かれても言わなくていいぜ? まぁ俺だけに教えてくれてもいいんだがな?」


「高いですよ?」


 教えてもいいけど高いぞ? こう言うのは吹っ掛けると意外に高値で買い取って貰えることがあるのだ。主に課長とか騙されやすくて良いカモにゲフンゲフン。


「お、いくらだ」


「20万で」


「高過ぎだ、まぁ美味い話ならそのくらい出すやつもいるだろうがな」


 そりゃまぁたかがガチャの回し方教える程度じゃ20万にはならないか、持ってきた割れメタルも大した金額にならなかったし、でも銅って結構高いんだね? 品質が良いからなのか1個50円になった。


 割に合わん。


「入院費があと20万払えなくて、ただの冗談です」


「おめぇさんも大変だなぁ」


 大変なんです。払おうと思えば払えなくもないけれど、そうなると家賃が払えなくなったりガスが止まったりしかねない。優先度で言えば多少待ってもらえると言う治療費と入院費の方を後回しにするしかないだろう。


「お腹の青痣も治らないし、怪我ばかりですよ」


「腹かぁ、まぁそのボディアーマー来てれば腹もしっかり守ってくれるさ」


 そのボディアーマーを付けてて青痣なんだよなぁ? でも無かったらなかったで今頃入院コースの可能性が高い。


「いや、これの上から攻撃喰らって青痣が出来たんですよ」


「はぁ!? どんだけあぶねぇ化物だよ」


 めっちゃ驚くじゃん。でも俺も驚いてるんだよね、このボディアーマー薄い割にはかなり丈夫で、衝撃も吸収する複合素材らしいけど、普通に痛かったからな。でも今はフライパンと言う心強い相棒が居るから大丈夫、若干手首に負担がかかってるけど両手で押さえればまぁなんとかなる。


「フライパンでガードできるんですけど、なんか衝撃がすごいんですよね」


「ボコボコじゃねぇか」


 ……確かに。自転車のバックパックから取り出したフライパンは、結構凹んでると言うか歪んでると言うか、べこべこの瀕死の様な気がしてきた。取っ手が外れた時点でもうだめだったかな? 隣に目を向けると店長も呆れと言うか表情が引き攣っている。


「まぁ年季入ってますから」


 一人暮らしを共に分かち合った相棒だが、割と早いうちに餃子は焼けなくなった。


「古くても良いなら頑丈な良いのがあるぞ」


 ここフライパンも置いてるのか、まぁこれは買い替えを進められても仕方ないくらいにはボロボロだから丁度良いと言えば丁度良いか。


「持って来たっす!」


「どうよ、チタン製のフライパンだ」


 すごく、大きいです。


 店員さんが持ってきたのは、取っ手も鍋部分も同じ素材で出来た継ぎ目の無い中華鍋風のフライパン。全体的に虹色の様な模様が綺麗だがそれってお高いんじゃないですか? 俺金が無いって言ったよね。


「意外と軽い」


 持ってみた感触は思ったほど重くない。でもなんだか油臭いな、使うなら洗った方が良いかな? ……いかん、すでに買う気になっている。しかしこれは軽いし取っ手もしっかりしていて折れるような気はしない。その上中華鍋風で曲面になっているから余計に丈夫そうな感じがして良いと思う。


「買ってくか?」


「お金ないですよ」


 絶対高い、今の俺の財布事情は非常に厳しい、でもフライパンを買い替えないとあそこを通るのは危険すぎる。安全第一を考えるならこれは欲しいが、しかし食費を削るのは、牛丼も食べたいし、アルコールも摂取したい。


「今なら三千、いや二千にしとくぞ? どうだ」


「ぐ、ぐぬぬ」


 二千だと!? なんだその無理すれば買えなくは無いかなーと思ってしまいそうな金額は、俺の財布の中を把握してるんじゃないこいつ。そしてこの悪辣なニヤニヤ顔、絶対違法な事の一つや二つやってる顔だ。悔しい、でも……。


「買っちゃった……」


 買いました。


 現在は帰宅してお部屋、帰りに買う予定だった牛丼を諦め、ビールを諦め、まっすぐ帰って来て床に座り込んでフライパンを蛍光灯の光にかざしているところだ。いい買い物だったとは思うが、明日いっぱい稼がないといけなくなった。


「割れメタルはレアもの以外だと錫が一番高かったな」


 一応割れメタルは売れる商品だったので数百円にはなった。一番高かったのは錫で1個200円、でも他はどれも数十円から一桁、さらに一種類ずつラベリングして貰ったのは売ってないので金にはなってない。


「目的はもっと奥だから、明日も頑張ろ」


 目的はもう少し奥のはずで、割れメタルで稼ぐのも悪くはないのだろうが、正直あそこは相性が悪いのでさっさと抜けてしまいた。いくら安定して倒せるとは言え、相手の攻撃を受けると言うのは結構精神的に疲れる。


「……コレクション、良いな」


 にしても一気にコレクションが増えた。割れメタル全種類集めるのも悪くはないかも、中には金とか銀とかプラチナなんかもあるらしいので少し楽しみだ。俺の心に染み付いたガチャ魂が回せと訴えかけてくるのだろうか、今日手に入れた割れメタルは鉄とかアルミとか真鍮など、ごくありふれたものだけど、並べるとそれなりにかっこよくも見える。


「割れメタルって何種類あるんだろ」


 全部で何種類あるかなんて今のところわかっていないが、結構合金の種類も細かく分けられているんじゃないかと言うのは店長の予想で、そうなると全部集めると言うのは現実的ではないかもしれない。


 見た目が良くなるように割れメタル並べ直していると手の甲に柔らかいものが触れた。


「スライムキューブ、特に変わらないな」


 最初のコレクションであるスライムキューブ、あれから結構時間が経っているけど特に変化はない。少し埃が積もって来てるけどカビとか変な匂いがするとかは特になく、これなら水洗いしても問題は無さそうだ。


 う、お腹が……晩御飯。


「今日はおにぎりガチャにするか」


 今日はちょっと無駄遣いしようかな、微妙にストレスが溜まってるからアルコールを求めたんだし、アルコール分はおにぎりドカ食いで誤魔化すしかねぇ。


 普通の梅、破れた梅、大きなシーチキンマヨ、うーん微妙だな。Eマーケットにはお酒とか売ってないんだよな、お茶は何種類かあるんだけど、あと無駄におにぎりの種類が多い。


 Tではお酒の入手に成功したと言う動画も出ているが、方法は秘密にされていていまだにEマーケットは分からないことが多い。どうも人によって購入できる品が違うようなのだが、とりあえず追加のおにぎりとお茶をぽちぽちっと。


 破れおかか、塩昆布、なんか大きな四角い昆布、ちっちゃい海老天、緑茶2リットル……おいちょっと待て、俺は500のペットを選んだはずだぞ? え? 当たりってこう言うこと? いやいや、分かりやすいけども、お得だけども、そうじゃないんだよなぁ……。



 いかがでしたでしょうか?


 当たっても喜び辛いガチャってありますよね(白目)


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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