第30話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「うーん? これは銅かな?」
銅なんだろうか? よくわからん。やっぱり交換所で調べてもらった方が良いか、折角綺麗にしてもらったライトがバラバラになったから何となく行き辛くて家にまっすぐ帰ってきてしまった。
少し後悔している。それにしても銅っぽくはあるんだよな、茶色だし。
「銅は盗まれるくらいだからそこそこ値段にならないかな」
良く盗まれる電線とかたぶん銅だと思うからそれなりの値段になるんじゃないかと期待できるが、あの昆虫みたいな足の化物、どっか情報上がってたかな? 全然見覚えが無いいだけど、それにあのドローン。
「えっと、江戸川大地下道、ドローン、奥」
Tの検索で何か出ると良いんだけど、お? 割と動画の件数が多いな、単純に見落としかもしれない。
「あーいや、やっぱりそう言う事か」
調べて出てくるのはどれも悲痛なコメント付きの動画ばかり、そうだよな、ドローンって高いもんな、壊されたらそりゃ叫びたくもなるか。
「あの缶バッタの所為で奥が不明なのか」
一応辛うじて動画に映った部分と今日の経験からあの昆虫脚はバッタだと分かった。子供の頃捕まえたトノサマバッタの足によく似ている。動画を検証している人たちもバッタのほかにゴキブリとかカマドウマとか昆虫の名前を上げているようだ。特に可能性が高いとされているのが意外にゴキブリとコオロギ、暗くて涼しい場所に現れるからかバッタが候補から外されている。
どの動画もあの弓を引きぼる様な音の後にドローンが壊されているので原因は全部あれなんだろう、石で受け止めた時の違和感がまだ手首に残っているからな、たぶん軽い捻挫なんだろうけど、あんなの食らったら軽量化されてるドローンなんて一発だろう。自衛隊の頑丈なドローンなら耐えられるかな。
「まぁ、自衛隊とか普通に突破できそうだけど」
装備が違うからな、わざわざドローンで調べなくても自分たちの足で調べそうだし、確か自衛隊は小さな装甲車みたいなドローンも使ってたはずだから、一般人と比べてもしょうがない。かと言って自衛隊がCでも入れる異界を調べるとも思えないんだけどな。
「忙しいだろうし、もっと有益な場所があるだろうし」
あの馬鹿高い薬も自衛隊産だし、聞いた話によればどっかの異界にはとんでもなく強いけど美味しいドロップを出す化物がたくさん居て、そのどの異界も自衛隊が封鎖してると言う話だ。最近Tでもその異界について話している人が居て、国が富を独占していると抗議運動を開くとか言う話だ。そんなの今更な気もするけどね。
あと調べときたいのは、あれだな。
「えーっと化物、光」
Tの使用人口が増えたからハンターの人工が増えたからか異界情報がすぐ出てくるのは助かる。たったこれだけでほしい情報や動画が出て来た。
「なるほど、スケルトンは光感知、ジュース缶は照らしても反応なかったけど」
やはり道中の骨が俺に反応していたのは自転車のライトが原因のようだ。
動画の検証班によると、光の種類でも反応の仕方が違う様で、スケルトンなんかは強く光を照査することで反応が良くなるらしい。たしかに壊れたライトも広い範囲ではなく狭い範囲を照らす様にしていたはず、道中の人の視界を妨げないようにと思っていたんだが、取り付け角度が悪かったようだ。
「情報が無いし検証していくか」
うん、ジュース缶に関してはあまり情報が無いから自分で調べた方がよさそうである。普通に狩れるし急ぎじゃないけど一応可能性はいくつか上げられるから、それで調べればいいか、あとはバッタ対策にあれを持って行くとして、残りは途中で買って行くから明日は少し遅出だな。
「道具は、百均かな」
うん、やっぱ百均が一番だな、途中に結構品揃えのいい百均があったはずだからそこで壊れて良いライトを買って、あと確か片付けしてた時に掘り出した物がこの辺にあったような。
「うん……これでいいか」
あったあった、まさかこんなものが役に立つとは、人生分からないものだ。微妙に釈然としないけど、これもまぁ壊れたり落としたりしても気にならないから良いか。
「さ、風呂に入って飯食って早めに寝よ」
明日はジュース缶が居たら調べて、見当たらなかったら真っ直ぐ缶バッタに再挑戦だな、あー思い出しただけでお腹が痛くなってきた。ボディアーマーが壊れて無くて良かった。薄いとは言え今持ってる中で一番真面な防具だからな、ああ言うのってどこで買うん・・・・・・ん?
「うわ!? 青痣になってる!」
なんじゃこりゃ!! 押すと痛い、うぉぁ……完全に青痣じゃん。
「いや、えぇ……ボディーアーマーあったのに」
いやいや、えー嘘だろ? うん、ボディアーマーで守られてたはずの場所だ。ボディアーマー当てて鏡で見たら完全に隠れるもん。鳩尾のチョイ下か、もしかしたらあのバッタ心臓狙ってない? いや、放物線を描いて飛んできて、突き出した石にぶつかってここなんだから……これも試してみよう。怖いけど。
「ふぅ、涼しい」
相変わらず異界に入ると涼しい、昨日用意した道具と買い足してきた物が自転車のバッグに入っているから今日は余計に汗をかいた気がするからより涼しい、時折吹く風が気持ち良い。不思議な風だけど、空気の流れが無いだけですごく気持ち悪いからとても助かる。
あと、ジュース缶が全然見当たらなかった。中央を走って来たからなんだろうけど、意外と活動範囲が狭いのだろうか、下手に壁際で囲まれたら対処不能になるから絶対に無理はしない。丸焼きなんてもうごめんだし、次やったらガチで借金地獄になっちまう……いや、人がいないから死ぬな。
「ん?」
何か頭上から音が聞こえる。左側の壁際の、あれはドローンかな? 航空障害灯みたいに赤いランプを点滅させて床を照らしてるけど、あれ大丈夫なんだろうか? いや、大丈夫じゃないからドローンの墓場か、暗視カメラ的なものじゃダメなのかな。
「監視かぁ?」
ハンターの監視用か、それとも調査用か……まぁどっちにしろ近付かない方が良いな、仕事の邪魔をしたとか後で言われたら気分悪いし、こっちの邪魔にもなりかねない。あ、でもアレが監視なら万が一火だるまになっても見つけてもらえるのかな? いや、でも助からないか……うん、安全第一! 前方良し! 足元確認! あ、ここだ。
「よし、先ずは検証だ」
自転車の照明を点けてないから見落とすところだったけど、帰る時に摘んでおいた石積み。とりあえず自転車を停めて周囲を確認しながら検証に入ろう。あっと、石積みは先に壊しとかないと忘れると何の目印かわからなくなっちゃうな。
「ライトを置いてと」
何用のライトか分からないけど、百均に売ってあったランタン型のライトを少し大きめの石の上に置く、ぎりぎりまで光は手で遮って、良し逃げるぞ。
あんな小さなライトでも流石LEDだからか結構明るく見える。
「……きた!」
おお、一直線にランタンライトが置いてある場所に移動してくる……やっぱりあれはバッタだな? 胴体部分以外バッタで、頭は無いのか、地味に気持ち悪い見た目だ。あの後ろ足長さ30センチ以上ありそうだし結構太い、昨日俺のお腹に当たったのはあの足か、なんだか背中がぞわぞわしてくる。
「あ! おお! ……壊れたな」
マジか、ランタンライト軽いから吹っ飛ばされるだけだと思ってたけど、粉砕された。ありゃ普通に食らったら骨折するんじゃないか? いや、罅が入るくらいかも? まぁいいや。
「結論は出た、缶バッタは光感知だ」
バッタは光、骨も光、江戸川大地下道ではライト禁止、これは流石に知っとかないと不味そうだからTで呟いておくかな。まぁフォロワーも居ないから誰が見るかってとこだけど、一応知らしめたって足跡が大事だからな。
協会に報告しても良いんだけど、C級の報告なんて当てにしないだろうし良いだろ。
「いや、光も感知だな」
俺が動いたら急に動きを止めて周囲を気にしだした。俺は今光る物なんて持ってないし今日の服装は黒一色、外を歩いてたら不審な目で見られたけど僕は強い子、気にしないぞ。
「フライパンよし!」
そしてこれが秘密兵器! 5年ほど使い込んだ1000円のフライパン! すでにテフロン加工が剥がれてるので、どんなに油を引いても餃子がくっつく素敵フライパン、フライパンにくっつかないが謳い文句の冷凍餃子もがっちりくっ付けて剥がさないんだからもうどうしたものかと思っていたけど、ここで一花咲かせようじゃないかブラザー。
「…………こっちだ! ぐぬお!?」
両手で支えてこれかよ!? 結構デカいフライパンだから衝撃も分散するかなとか甘い考えだった。でもあき缶バッタの飛んでくる軌道は思った通りだ。
「やっぱりこいつ、鳩尾辺りを常に狙ってくる!」
心臓と言うより鳩尾に近い場所を前回と今回の二回とも偶然って事は無いだろう。あとは試行回数を増やして行けばって言ってるうちに上に跳ね飛ばした缶バッタが落ちてきた。とりあえず手で触りたくないから足で行ってみよう。
「ふん!」
結構固い! もう一度……お! 胴体踏んだら黒い塵が出始めた。この昆虫特有のギザギザした脚はすごく硬いけど、胴体の空き缶は普通の缶詰の缶と耐久力は変わらないかな。
「……安全ブーツも欲しいな、まぁでも踏めば死ぬ」
スニーカーだとちょっと心許ないな、せめてもう少し厚底の靴が欲しい所だ。うちの会社に安全靴の在庫なんてあったかな? 倉庫管理部にならありそうだけど、倉庫管理の資材なんてどこあるか分かんないし、何でも会社の資産に頼るのも、なんか癪だ。
「ドロップ拾ってっと」
暗いから良く分からないけど何かの金属、昨日と同じような形なので、この凸凹とした形状は仕様なんだろう。キューブを無理やり半分に割ったみたいなそんな形をしてる。
「いくぞ」
とりあえず検証を続けよう。百均から買ってきたライトはランタンライトだけじゃないんだ。次は君に決めた! なんかどっかで見たことある様なキャラクタ型ライト! ……やっぱ用途不明なんだけど、ただの飾りって事なのか、売れてるのだろうか。
それから俺は地面にライトを設置しては粉砕刺され、粉砕された同じ名の仲間たちの仇を取って回った。
「ふぅ、慣れてきたな」
うん、慣れた。手がちょっと痺れて来たけどまぁ問題なく対処出来ている。もうフライパンがべこべこになっているけど、まだまだやれると相棒は言っている。取っ手はもげちゃったけど盾としては十分である。
でも、なんでC級は盾の所持も認められていないのか、化物対策協会の人間に小一時間ほどねちっこく問いたい。
「でも、音や振動じゃないとなると何だろう」
空き缶バッタと命名した化物は必ず鳩尾の辺りを狙って跳んで来ることは分かったのだが、人を感知する方法が良く分からない。光には鋭敏に反応するのだが、フライパンを叩いて鳴らしたり声を上げたところで寄ってこないのだ。
それでも、傍に近寄ると急に動きを止めて周囲を気にしだし、体の正面をこちらに向けるとすぐに動きだし、一定の距離に入ると体を後方に伸ばして縮めた後ろ脚を解放、弾けるような音を鳴らして跳んでくる。
「熱? 蛇の親戚かな?」
熱なのかなぁ? と言った程度の感想なのだが、もしかしたらもっとファンタジーな要素でこちらを判断している可能性もあるので安易にこれだとは言えない。それでも行動パターンが分かれば狩る分には困らない。
「にしても、ドローンの墓場だな」
手提げ袋が重くなって来たので少し休憩、バッタは攻撃の前にキリキリと言った軋む音を必ず鳴らすので音にさえ気を付けていれば問題ない。地面に手提げ袋を置いたら、周囲に転がるドローンを見渡しながら息を吐く。
正直もったいないなぁと言う感想しか出てこない。回収には来ないのだろうか? いや、出来ないのか。あのバッタは耐久力こそ大したこと無いが、攻撃力と命中精度に関してはかなりのものだ。ふわふわ空を飛んでるドローンなんて良い的だろうし、ヘッドライトなって付けて来た日にはヘッドショット間違いなしだろう。
んー、こうやってゆっくり考えてみれば割と凶悪だなあのバッタ。
「この辺じゃ交換の恩恵も意味ないなぁ」
俺も下手したら最初の遭遇でやられていた可能性があるわけだし、交換魔法なんて言う限定条件の多い魔法は使い道が無い。もしあのバッタが何か持っていても、脚じゃ交換できないんじゃなかろうか? あれ? 動物も昆虫もみんな脚しかないから俺の恩恵の天敵なのでは? ジュース缶に手が付いていてよかったぜ。
「結局人型用魔法って事か」
手が無いと役に立たないとか中途半端な魔法だ。レベルアップすると機能が増えるなんて話もあるけど、今のところそんな兆しは見えない。
「少なくなってきた。そろそろ新種ラインか……帰ろ」
休憩は挟んでさらに小一時間、中央ラインを左右にふらふらしながら狩っていたが急に化物の数減ってきた。これはこれまでにもあった現象で、新しい化物が出る場所が近くなると化物の数が急に少なくなるのだが、互いに喧嘩している化物など見たことは無いが、縄張りのような物があるのかもしれない。
「自転車も無事だな、人以外は攻撃しないのかも」
重たい手提げを床に置く。
特に停めた時から変化が無い様に見える自転車のバックパックに手提げ袋の中身を分別して行くと、金属の塊に混ざって白いのが出て来た。ここまでくる途中でやっぱり骨に絡まれたのでいくつか骨キューブが混じっている。でもライトを付けていた時に比べると全くと言っていいほど絡んでは来なかった。
「これでよし」
多分今回の骨は逃げたハンターによって中央まで連れてこられた骨だろう。今の骨エリアには中央を歩く人影が見当たらないくらいに壁際が人気スポットである。湧いて出るのが壁際だからなのだろうが、そんな骨狩りをするハンターの中にも逃げ帰る人が居るようだ。
「うーん、骨キューブだけこっちで売っとこうかな」
骨キューブの数は3個、たぶん600円になると思うけど、このくらいならこっちで売っておこうかなと思う。向こうで売っても大して金額変わらないし、ジュースが飲みたいけど財布に小銭が無いから背に腹は代えられん。お札を崩すのってあんまり好きじゃないんだよね。
暑い、外に出た瞬間喉が焼けるように空気が熱い。さっさと買い取って貰おう。あ、間違って金属も手提げに入れちゃったけどまぁ売らなければ良いか。
「お願いします」
「タグをタッチしてください」
「あ、はい」
やっと順番が来たのでカウンターの上に骨を三つ並べて声を掛けたが、先にタグを読み取り機にタッチしないといけない様だ。青山の場合は最後にタグ確認だったんだが、場所ごとにやり方が違うのだろうか。
「買取りは初めてですか?」
「はい」
ここでは初めてです。
所でつかぬことを聞くわけでは無いので思うだけですが、何で受付けってどこも女性が多くて若くて可愛い人が多いんでしょうか? 採用基準に水着審査とかあったりするの? お姉さんもよく日に焼けて陽の気配がしますね。
「えっと望月様、C級ですので優遇ポイントは付きませんがご了承ください」
「はい、大丈夫です」
おう、C級だと分かった瞬間に表情が暗くなりませんでしたか? 被害妄想ですかね? 声もワントーン落ちた気がしてならないんですが。あと少し不安そうに見て来るって事は優待ポイント絡みで問題出てたりします? いや、不公平だとは思いますけどね。
「そちらも一緒に買取りしますか?」
「こっちは民間に買い取って貰うので」
これは売らんぞ! 何か色が違うので調べてもらって一種類ずつコレクションに入れるんだから。
「そうですか、参考まで見せていただくことはできますか?」
「えぇまぁ」
何の参考? まぁそのくらいなら良いけど、おっさんに頼まれたら断っているところだ。これが男の悲しい習性と言うものか、若さとは恐ろしいものだ。
「これは……どちらの異界でドロップした物ですか?」
ん? どういう意味だろう。
「え? どちらと言われても、骨が出るもっと先です」
そうとしか答えられないんですが、あれかな、別の異界で採って来た物でもここで売れるのか? いや、そんな面倒な事しないだろうけどさ、たぶん売り忘れがあっても俺なら面倒だからとリサイクルタワーにポイしそうだ。
「そうですか、ありがとうございます」
「いえ?」
何か困惑した表情だったな? 駄目だぞ、受付や客先に出る人間は常に冷静に対応して感情を見せてはいけない。感情を見せていてはすぐに足元を見られて値下げ交渉をしてくるからな、その点うちの部署にいた女性社員はにっこにこ営業スマイルを一切崩さないプロだった。まぁ、あれだ……ロッカールームに入った瞬間罵詈雑言の嵐だったけど、何回女子更衣室のロッカー扉を修理した事か、靴がめり込むってどんだけって話で……やめよ、なんだか鬱になってきたわ。
女は怖い、よって怒らせるな、Q.E.D.である。
いかがでしたでしょうか?
女は怖い、羅糸が会社員時代に学んだ生きる上での重要な事柄である。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー




