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第3話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。





「いやぁキャスターにロックが掛かってるとは思わなかったぜ!」


「普段準備を手伝わないからだよ」


 重い重いというから何事かと思えば、テレビ台のキャスターに掛かったロックをそのままに引っ張るもんだからカーペットに跡が付いてしまった。これはお局にバレたらかなり怒られるぞ? 後で綺麗にしておかないと。


「いやぁ……なんも言えね!」


「はぁ、それにしても大変なことになってんなぁ」


 清々しいほどに開き直りやがって、それにしても思った以上に可笑しなことになっていた。朝のニュースはスマホでちらっと見たけど、その時やっていたのは集団昏睡についてだけだったのだが。


「知らなかったのか? ずっとニュースでやってるのに、まぁ同じことしかやってないみたいだな」


「俺が見た時は昏睡だけだったよ」


「あーなんか急にその話メインになってたな、なんでだろ? 今はそんな感じじゃなさそうだけど」


 朝見たニュースでは触れてもいなかった異常事態、同じく全国で起きているらしい異常についての話がテレビから聴こえてくる。この時間に会社でニュースを見る事なんてめったにない。人が居ない時の特権だが、誰か来たら怒られるだろうか、いや……来ない可能性が高くなって来た。


「それにして行方不明者続出か、神隠しってやつかな?」


「さぁ? 本当に神隠しだったとしても調べようがないだろ」


 先ず行方不明者、朝起きたら隣で寝てた人が居なくなっていた。夜勤の人間がいなくなって工場がもぬけの殻になっていた。など、あの白い空間の夢を見たタイミングで行方不明者が出ているらしく、監視カメラの映像では移動した形跡も無く忽然と人が消えているという。


「うーこわいなぁこわいな、ホラーとか苦手なんだよ、ほら俺って繊細じゃん?」


「どこが?」


「酷い!」


 繊細と言うか肝が小さいというか、確かに遅くまで残業してた時にトイレに行くのが苦手だとか言ってたな、おまえはおとめか。


 そんなどうでもいいおっさんの話はぶった切るとして、行方不明者が続出している一方でいつの間にか日本に居たという人達もいる。その人たちは同じタイミングで白い空間の夢を見て目が覚めたら日本の空港のロビーに寝ていたようだ。しかもとんでもない数らしく、現在日本の空港はすべて閉鎖されているらしい。


「なぁ、この空港の件って外国にいた人ばかりなんだろ?」


「ん? そう、みたいだな……?」


「お前の家族もいるんじゃね?」


 空港に突然現れた人々はほとんどが日本人、一部日本人に見えない人もいるが、大体が日本の国籍を持っているらしい。その辺りに共通項がありそうで、そうなると俺以外は全員海外に出ていた家族も空港のどこかに居そうではあるが、姉ちゃんはともかくうちの両親はどうだろ。


「家の両親は考古学馬鹿だからな、仕事中に現場を離れる事なんてないと思う。神隠しでもその場からしがみ付いて離れないんじゃないかな」


「……おまえ、家族は大事にしろよ?」


「してるよ」


 連絡はしばらく取ってないけど、うちは一般的な家庭から見たら異常だから問題はないだろう。放任主義な両親に歳の離れた姉、バリキャリ? とか言うやつらしい姉と連絡を取ったのはいつだったか、最後に聞いたのは何か海外受注を獲得するために海外に行くとか言っていた。海外営業っぽいなにかなんだそうだが、頭の良い姉と違って俺は特に取り得も無いから良く分からん。


「お、これすごいよな」


「陥没か、何時だったか道路が陥没したやつより酷いよな」


「あったなーすぐ埋められたけど」


 陥没、全国のあちこちに突然現れた大穴、しかも単純に大きな穴が開いただけじゃなくて地面が隆起してるとか、今テレビに映っているのは皇居近くに出来た穴で警察とか自衛隊の姿が映っている。空撮しているけど底が全く見えない様だ。あと必ず陥没の近くには見たことも無い塔が建っていて、その形はみんな一緒らしい。


「どう考えてもこの穴は人工物ですって言ってるようなもんだよな、この塔」


「誰が掘るんだよ」


 確かに目印のように地面から空にまっすぐ伸びる塔は異質で、深い緑のそれは大輔が言うような意味を含んでいそうだが、誰があんな大穴一晩で掘るんだよ。


「家の近くには無くて良かったというか残念と言うか」


「うちは、少し離れた場所にあるけど……一駅二駅分くらい離れてるから問題なさそうだな」


 テレビに地図が映し出されて確認されている陥没の場所が示されていく、今住んでる場所から一番近いのが江戸川の大穴だな、丸印の場所的に河川敷辺りっぽいがそんなところに大穴開けられるものだろうか。


「あ、緑のお化けの情報も出てるのか」


「緑のおばけ?」


「これだよこれ、これって……そうか自分しか見えないのか」


「あーこの緑の壁か」


 テレビではウィンドウと呼んでいるらしい緑の壁、大輔にはおばけにみえたらしい。確かに突然こんなの目の前に出てきたらお化けにも見えるかもしれない。自分に見えているウィンドウは他人には見えない、触るとそこに文字が映し出されるらしい。


「お前の恩恵何よ?」


「いやまだ触ってない」


「は? おっくれてるーって、おま!? ゴミを投げるな!?」


 とりあえず割とウザかったのでグルグルにまとめて固くしたおにぎりのフィルムを投げつけておく、やっぱり朝はシーチキンマヨネーズだな。


「おまぁなー? もうちょっと年上を敬ったりないの?」


「なら自分の仕事は全部自分でやってね」


「へへへ、もう羅糸さんたらいけずなんだから」


 生け簀に沈めてやりたい。


 それにしても恩恵か、あんなふうに文字が浮き出るのか……今日帰ったら調べてみようかな。正直職場で何かする気にならない、なんと言うか安心できない。


「ちなみに俺の恩恵は急速睡眠だぞ」


「きゅうそくすいみん?」


「即座に眠れる超便利な恩恵だ!」


 テレビでも説明しているが、恩恵と言うのは緑の壁に名前と説明が浮き出るらしく、確認後すぐに使える超不思議な力だそうだ。テレビでも手から火を噴きだしたり水を出したり、ありえないジャンプ力の人の動画が流れている。どうやらどれもSNSに投稿されているよだが、即座に寝れるか……ちょっとうらやましいな。


「もう使ったの?」


「おう! クッソ快眠だった。こんなにぐっすり眠れたのは何も考えずに毎日遊べた小学生の頃以来かも知れない」


「地味に羨ましいな」


 正直な話、社会人になってから何も気にしないでぐっすり眠れたという記憶がない。高校卒業後すぐ就職して数年ずっと眠りがどこか浅い気がして、たまに不安で眠れなくなるし、理不尽な事が合った日なんか全然眠れないこともある。そう考えると大輔の手に入れた恩恵とやらは超有能な恩恵だろう。


 しかし恩恵か、これが救済なんだろうか? 確かあの白い空間では6っの問題が出てたし、どうせならそれぞれに対応した恩恵でもくれたらいいのにな。


「まぁ羨ましがっても俺みたいな有能恩恵は手に入らないかもしれんがな」


「似ていてもみんな微妙に違うのか、おんなじでいいだろう。平等にさ」


 今のところ全く同じ恩恵を手にした人が居ないらしく、種類が多いのか元々一人一つの恩恵なのか、これから調べてわかるものか不明だが、これでは俺が睡眠関係の恩恵を貰える確率は低いんじゃないだろうか。


「ある意味ランダム性は平等だと思うぞ? 毎日快眠の人が急速睡眠なんて貰っても宝の持ち腐れだろうし」


「まぁそれはそうだけど……」


 一回限定リセマラ無しのガチャみたいなもんか、ちょっと今日の夜が心配になってきた。ガチャは嫌いじゃないが、俺って運はそんなに良くないからな、そう言えば今やってるソシャゲで毎日一回無料ガチャやってたな、そこで外れ先に引いてれば恩恵ガチャのレア度上がらんかな。


「あれ?」


「どしたん? 恩恵見たのか? なんだった?」


「いや、それがソシャゲにログインできなくて」


「……なんで今だよ、それならたぶんネットワーク異常だろ、なんでも海外のサーバーが繋がらなかったり一部のネットワークに不通が出てたりで大混乱中だぞ?」


 え? マジで? めっちゃ大輔が無言で頷いてるんだが……マジか。


<―――官房長官の緊急記者会見の映像に切り替えます>


「緊急?」


「なんだなんだ?」


 テレビの映像が中継に切り替わる。災害時とか大きな事件事故とかで見るやつだな、最近だと地震と大雨洪水とかでやったか、あれは気象庁だったか。


「おいおい、本格的にやばいだろ」


「……」


 緊急記者会見の内容は驚くべきものだった。どうやらネットワークの通信障害とかそんなちゃちな話じゃなく、通信するべき場所が無くなっていたり通信するための衛星が無くなっていたことがすべての原因だったようだ。


 テレビの話を聞いても頭がまとまらないが、どうやら日本以外の国の所在が不明らしく、地図やレーダーを用いて周辺の国を調べた結果、本来そこに存在するはずの島や陸地、建物なども存在せず、無いはずの陸地や島が発見されているという事態に陥っている様だ。また電波を使った呼びかけにも返ってくる声は無いらしく、それはどんなに考えてもあり得ない事の様だ。


「あー、あれだ」


「ん?」


「ほら、日本が異世界に転移する系のやつ、きっとあれなんだよ」


 何を馬鹿な事をとも思うが、そう考えてもおかしくはないような状況だろう。実際に自衛隊の艦艇も偵察機、哨戒機、使える物は何でも使って調べている様だが、結果は今聞いたものから変化はなく、今回の記者会見の時間もあまりに異常な事が起きている事で、予定の時間から繰り上げて始めたいるらしい。


「そうなると、領空侵犯して戦争みたいな流れか?」


「……やべぇな、仕事してて大丈夫か?」


「いや、それ以上に……」


 戦争が起きて生活に支障が出ると不安そうに呟く大輔だが、それ以前にうちの会社にとって大問題が発生したのを気付いていない。まぁこいつは毎日サボって真面目に仕事してないから気が付かないのかもしれないが、この会社に勤めている人間なら最大の問題にすぐ気が付くはずだ。まてよ、だから誰も出社してないのか? いやそんな事で出社しないとかありえないし、やっぱりわからない。解るのは唯一つ。


「俺たちどこから品物入荷したらいんだよ」


「ん? …………ああっ!!?」


 やっと気が付いたのか顔色が蒼くなっていく大輔。うちの会社は海外の珍しい製品を輸入し、企画込みで小売りに商品を提供する会社だ。貿易業、輸入ビジネスと言われるジャンルであり、それなりにブームを作って来たこともある会社だが、今回の政府発表が事実なら、俺達は全ての商品提供元を失った可能性が高い。


「これは、電話来るぞ」


「ひぇ」


 特に俺たちは日本国内の販売先からの依頼で見積もりを纏めたり、倉庫に出荷の細かい連絡をする部署だ。こんな記者会見を客が聞いたらどう思うか、勘の良い人達もう動き出しかねない。


「納品依頼と在庫の確認、絶対馬鹿が発注してないから倉庫で在庫の確認しないと、あと届いてないやつはもう届かないと考えた方が良い」


「お、おう」


 絶対めんどくさい事になる。特に課長と部長は客に良い顔する為に無理な発注取って来るから絶対に納品出来ない案件があるはずだ。昨日の書類を再確認して在庫と照らし合わせないと、その前にクレームの電話が来そうだけど、とりあえずやることはやろう。恩恵とか気にしてる場合じゃねえ。


「今日は電話祭りだな……」


「ひぃ」


 悲鳴上げたって結果は変わらないんだよ、まだこの時点で気が付けただけ御の字、最悪なのはこの時間になっても誰も出勤してない事の方が問題だ。行方不明者か……何の法則があって行方不明なのか、それとも恩恵と一緒でランダムなのか、どこにも救済要素なんてないじゃないか。

 いかがでしたでしょうか?


 電話祭り確定フラグが立ちました!いったい異世界では何が起きているのか……。


 書籍化目指してますので、応援してもらえたらうれしいです。次回もお楽しみに!

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