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第26話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「…………人が多過ぎる」


 ツカレタ……。足が棒のようだとはこのことだろう。


「せっかく戦えるようになったのに」


 二日目の青山霊園大地下墳墓の狩りは散々だった。


 交換魔法の使い方が判明してさぁ狩るぞと思ったらなんだこの人の数、異界に入るだけでも昨日の五倍以上はあると思える長蛇の列、昨日は整列していたと言うのに今日は喧嘩まで起きて、階段から落ちた人間も数人出て警察が出動したことで一時閉鎖。


 入ってからはこれまた人が多くて相当奥まで入ったが、複数のA級グループが居たらしく、新しく出て来るより早く根こそぎスケルトンが狩られ、化物が居なくなったら別の場所へ移動するとまた根こそぎ狩る事を繰り返していた。さらに負けられないと焦ったB級のグループが倒せないレベルの化物を奥から連れてきて阿鼻叫喚の地獄絵図、死人は出なかったが重症者3名の大事件が発生。


「今日の稼ぎは六千円……」


 それでも数体狩れた俺は偉いと思う。でもA級グループが根こそぎ狩る影響で弱いスケルトンは残っておらず、昨日見たような装備の良いスケルトンばかり、ドロップは良いけど石を砕くハンマーとか奪っても振るえないから、両手に石を持って泥仕合で倒す羽目になったのだ。


 マジで疲れた。


「うーーん」


 これは不味い、非常に不味い、昨日の感覚なら毎日来ても問題ないけど、今日の様な状態なら連日とか無理、明日も狩りとか考えただけで心が死ぬ。と言うか足が絶対に疲れでどうにかなってしまう。それで病院とか行った日には本末転倒も良い所である。


「どうしたものか」


 特需に乗っかろうと思ったけど、こんなパワープレイヤーが居る中での活動は無理だ。別の方法を考えないと、実際恩恵が使えるようになったんだから選択肢は増えてるはず、でも先ずは休んでゆっくりして考えよう。疲れすぎて頭には悪い想像しか浮かんでこない。


「おかえり、しけた顔してんね」


「あ、ねーちゃんただいま」


 共用の出入り口からねーちゃんが出てくるところだったようだ。ホワイトなんたらとか言う色の髪がサラサラと風に揺れていてどこか涼し気だが、今からお出かけなのか薄着だけどかっこいい感じのジャケットを羽織り腰に手を当て、なぜか俺をしかめっ面で見下ろしている。


「……で? どうしたんだい」


「あーちょっとお金がね」


 前に白髪と言って殴られた綺麗な髪を掻き上げるねーちゃんは、俺の返事に眉を寄せて睨む。怖いので睨むのは止めてほしい、怒ってないとは言えねーちゃんも美人なんだからそう言う顔すると凄味が違う。近所のおばちゃんが宝塚の男役みたいだと褒めてたのを覚えている。


「お金は貸せないよ」


 いや、借りようとは思ってないんだけど、そう言う風に言われると地味に傷つくのでやめてほしい。まぁこんなこと言ってるけどお願いしたら多分貸してくれる。それがねーちゃんと言う人だ、少しだけ不器用で美人で人情とかそう言うのをとても大事にするタイプのかっこいい美女、男役と言われて複雑な表情を浮かべ、ついでに照れ隠しの拳骨がアホほど痛い。俺はただ純粋に褒めただけなのに、思い出しても未だに解せぬ。


「借りないよ、ちょっと20万足りなくてさ、骨キューブが高騰してるから狩りに行ったんだけど、人が増えて稼げなくなったんだよ」


「あぁ、そう言えばそんな話があったね? ……多分すぐにその高騰も落ち着くと思うよ」


「え?」


 なんですと? 昔から妙に情報通と言うか何でも知ってるねーちゃんだが、どうやら異変が起きた後でもそれは健在のようだ。どこから仕入れて来るのか分からないけど、ネットやニュースに出ないうちから色々知ってるので情報屋なんじゃないかと思った時期もある。


 それにしても今の話は洒落にならないんですけど、いつか特需も終わるとは思っていたけど、ねーちゃんの表情や口ぶりを見る限りすぐってのはかなり早めの印象、なんだったら数日と言っていいかもしれない。そんな早く特需が終わるなら……まてよ? あの異常なA級の乱獲、喧嘩するほどの謎の焦りを見せるハンター、何か俺の知らない情報がすでに広まっていたりします? あの、その苦笑いはとても怖いんですけどお姉さま。


「みんな考える事は一緒、そして偉い奴は少しでも安く仕入れる為なら動きは早いって事さ」


「マジかぁ……」


 権力者、ここでも俺の邪魔をすると言うのか……まぁ俺の邪魔をした権力者は会社の上層部とか上司とかお局くらいで、よく言われる権力者なんて縁遠い存在まったく関係ないけどね。でもまぁ底辺を這いずり回る庶民としては、恨み言の一つや二つ吐く権利はあると思う。


 少なくとも俺をC級にした連中は嫌いであるし、C級を殺したいのかと思う制度しか作らない連中も嫌いである。なんでも買取り所で貰える優遇ポイントを貯めると最新のゲーム機も手に入るとか、手に入れたとかTで呟いてるやつが居て羨ましい限りだ。


「そうだね、私が協力できそうなのは民間の買取所を紹介するぐらいだね」


「民間?」


 民間の買取所? それはアウトレットとかリサイクルショップ的なものでは無くて? 確か試験用の講習では、異界で手に入れたドロップは公営買取り所での売却を推奨すると書いてあって、あんまリサイクルタワーに入れんなボケみたいなことが書かれていた気がするけど、民間でもドロップ買取りとかやって良いのだろうか、もしかしねーちゃん闇市的な人達と関係が、あってもおかしくないと思えるのは何故だろう。


「ああ、色々法律が一気に変わってね。まぁガス抜きだろうけど、民間の方が少し高く買い取ってくれるはずだよ、それも需要次第だろうけど……そうだね、燃料系は常にかつかつらしいね」


「あー、燃料か。ねーちゃんも困ってるんだろ?」


 燃料で困っていると言えば身近なのはねーちゃんだろう。たまにでっかいバイクで走っているのを見かけるし、昔大きいからいっぱい走るのかと聞いた時に燃費の悪さと余りある魅力をたっぷり聞かされたがあまり覚えていない。なんか鳥っぽい名前のバイクだった気がする。


「そうなんだよ、リッター200だよ? まだ上がってるからね、やってらんないよ」


「え、買取りの5倍じゃん」


 ネットで確認した公営買取り所の買取リストにはガソリンも明記されていて、確認した時の価格は1ℓ40円だったはずだ。今のガソリン事情がどうなっているか分からないけど、たぶん買い取ったガソリンも出回っているはずだから、5倍にして売ってるようなものだろう。


 Tでも燃料については色々論争が起きてたけど、そりゃみんな怒りたくもなるか、結論として車とかバイク乗りのハンターは自分で使った方が得という所に収まってたはずだ。と言っても、問題のガソリンが中々手に入らないんだけどね、一応は江戸川大地下道でも手に入ることは手に入る。俺にとっては因縁のある相手のドロップなのだが、そうか燃料を求める人は多いわけだ。


「は? どんだけ暴利を……」


「大変だね」


 情報通で何でも知っていそうな気がしたねーちゃんも、ハンターの公営買取り所価格については知らなかったようで、驚き、怒り、呆れと何を考えているのか表情をころころ変えていた。でも何でそんなジト目で俺を見るんだい? 感情が読めないから僕は不安になるよ。


「私は趣味のバイクだからね、車持ってる奴はたいへんだろうよ」


「なるほどなー……」


 趣味でも大変なのは変わらないと思うけど、車に比べれば給油の量も少なくて済むのかな? でもタンクの容量についても何か愚痴を零していた気がするけど、金のかかる趣味も大変だ。俺はゲームくらいかな? あとは、おや? 俺もそこそこちょこちょこ金が減ってく趣味が多いはずだが、最近使ってないな……あ! 使う金が無いからだ。


 ……お金を稼ごう。そして趣味に走るんだ。


「あまり変な事考えるんじゃないよ」


「大丈夫大丈夫、無理はしないから」


 大丈夫、ちょっと趣味に手が付かないほど忙しくて、そのくせお金が無い現実に悲しくなっただけだから、お金稼ごうと思っただけだから、恩恵も使えるようになったし、ちょっとだけ難しい事に挑戦するだけだよ? いけるいける。たぶん、きっと……。


「……わかった、あとで玄関ポストに買取所のパンフとメモ入れとくから、メモ見せて私の紹介って言いな、悪いようにはならないから」


「うん、ありがとう」


 ありがたい。買取所ってねーちゃんの知り合いか何かなんだな、紹介状と言う奴だろうか? ねーちゃんが何してる人か知らないけど、少しは高めに買ってくれると言いな。


「過保護だが、ありがたい……自転車取って来るか」


 俺が自分の部屋に入るまで見送ってくれたけど、昔から妙に過保護なんだよなぁ? なんでだろう。そう言えばねーちゃんと知り合ったのって何時だったかな? だいぶ小さい頃から近所のねーちゃんって呼んでたから、物心つく前からなのかな? ん? それって幼馴染? いや、結構歳離れてるからもっとちが、ひぇ!? 謎の寒気が、これ以上この話題には触れてはいけない気がする。


 さっきまで暑かったのに、温かいお風呂が恋しい。



 いかがでしたでしょうか?


 女性に年齢の話をする時は、死を覚悟するべきなのかもしれない……。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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