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第25話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「うーん、多めに生活費を抜くと20万たりない。稼がないとな」


 妖怪20万足りないが現れた。


 足りないのは分かっていたし、支払いも待ってもらえているので焦ってはいないけど、支払いがあるだけでストレスなのでさっさと解消したいが20万である。金持ちにとってははした金かもしれないけど、俺には給料1か月分でも足りない大金、何とかなるのだろうか。


「何か稼ぐのに良い異界は、ん?」


 スマホのニュース記事が目につく。それはとあるドロップの高騰記事、公営買取り所でも値上げするほどの需要増についての話題である。


 そのドロップは骨キューブ。


 記事によると最近問題になっている畑の作物が化物に変化する現象を抑制する効果、その成分が骨キューブに含まれるらしく、急激な食糧需給量低下の主原因である化物化に対する有効な手立てとして骨キューブの供給が急がれる、と言う事の様だ


「これはいける」


 今まで二束三文っていくらか知らないけど、いままで2円買取りと言うアホ価格がなんと200円になっているらしい。どうやら俺が入院している間の話らしく、各地の異界ではすでに骨キューブのゴールドラッシュが始まっているらしく、稼いでる人は一日に何十万も稼げているようだ。


「自転車は後回しだ。行くぞ青山霊園」


 ここから一番近くて、一番骨キューブのドロップが多い場所、それは青山霊園に発生した異界、青山地下大墳墓と言う名前が付けられた異界である。


 実はこの骨キューブ異界からしか産出されないので、自衛隊が外で頑張っても手に入らず、自衛隊が狩場としている異界ではスケルトンの様な化物が少ないようだ。その為お国は一般ハンターに異界から採って来て貰おうと言うことのようで、値段を200円に上げても黒字が見込めるくらいには重要物資だと、青山霊園異界のポータルサイトに書いてある。





「ここが青山霊園……すごいことになってるな」


 受付は北側から入ってすぐの辺りでタグをスキャンさせればいいだけなのだが、買取り受付の人だかりが半端ない。すぐそばの将軍様も苦笑いしてそうな混雑ぶりだ。


「もう、なんか……古墳?」


 受付からずっと南に進んだ先にあるのが大地下墳墓の入り口なんだけど、見た目は土と草で出来た巨大なかまくら、ミニチュア古墳と言った印象だ。都道との十字路を占拠して通行止めにしているそのミニ古墳には石造りの入り口があり、入ってみると急に気温が下がると同時に大きな螺旋階段が現れる。


「人が多い」


 古墳前には結構な行列が出来ていて、みんな行儀よくミニ古墳に入って螺旋階段を一列になって下りていく。


 なんでも我先にと進もうとした奴が落ちて複雑骨折して以来、ここでは列を乱さないと言う暗黙のルールが出来たとか、霊感のある人が言うには列を乱す人を睨む軍服の霊が居るとか、怪談ネタに尽きない異界らしい。


「大きいな」


 結構長い階段を下りて見返して見れば、階段は4階建てのビルくらいの高さがあって妙に大きく見えるが、不思議なところは螺旋階段は途中から階段を支える支柱も壁も無くなっているところだろう。そりゃ列を乱せば落ちると言うものだ。


「立ち止まらないでー!」


 階段から地面に降りても立ち止まると危ないようで、警備員が声を上げて立ち止まる人に注意をしている。まぁあれだけ人が下りて来てたらそれもそうだろうし、地下はとてつもなく広いからいくらでも広がって歩けるから問題ない。


 そう、アホほど広いのだ。


「階段周辺は警備員が居ますので! 狩りの方は奥に入ってから狩ってください!」


「奥か……」


 先行して調べた自衛隊の調査結果では、この地下墳墓は螺旋階段を中央にして円形に広がる空間と思われるとされている。思われるとされているなんて妙な言い回しの理由は、まだ壁が見つかっていないからの様だ。


 天井も結構高くて開放的とあって、当初はホームレスが目を付けたらしいが、足元は妙な匂いがする土の地面で、石も江戸川大地下道並みにゴロゴロ落ちている。しかもどうやらその石は墓石の一部の様で、半分枯れたような背の低い草が生い茂る中からは墓石がいくつも生えていた。


「丁度いい石はあるな、拾っておこう」


 気味の悪い墓石の欠片だとしても俺にとっては生命線、買ったばかりのチョークバックに粉じゃなくて石を入れて行く。


 気味悪そうに俺を見ている視線なんて気にしない。俺はお前らみたいに武器を携帯できないんだから仕方ないだろうと言いたいところだが、まぁ言ったところで理解してもらえないだろう。見るからに陽キャでリア充な男女グループに嫉妬しているわけでは無い、断じてないのである。


「人が多いなぁ」


 それにしても人が多い、階段下りてからずっと歩いているがどこもかしこも人がいて、スケルトンが地面から生えて来た瞬間、その頭をバールやバットで殴り殺しているようだ。傍から見たら狂気の沙汰だが、あの一発で数百円になるのだから実際に金と言う狂気に取りつかれているのだろう。


「そっち沸いたぞ!」


「それは俺たちのだ!」


「ふざけんな!」


 ほら、あそこでもスケルトンの取り合いでいがみ合っているし、その間に地面に出たスケルトンは離れた場所に居る女性のターゲットになっている。割と女性も多いのだが、キャー怖いとか言っている女の子と言うのは幻想生物だったらしい。


「骨キューブ1個200円、ここのスケは結構な割合で2個以上、一体倒して最低400円。400円で人はこうも……恐ろしい」


 こわやこわや、もしかしたらこの異界は俺に合ってないのかも、江戸川大地下道よりずいぶんと明るい異界だけど、気分は地下道歩いている時より暗くなっていく気がする。もしかしたら地形特性的なデバフが掛かってるのかもしれないと思うのはあまりにゲーム脳だが、そのゲーム脳が異変以降は持て囃されているのだから分からないものだ。


「奥に行こう」


 こう言うのはたぶん大輔の得意分野だと思うんだけど、来ないだろうな、あやつお化け苦手だし。


「急に人が居なくなったな」


 円形に広がって歩いてるわけだから人の密度は下がるものだけど、まったく人の気配を感じないのはおかしいな? 少し戻ろうかな、初めての場所だし慎重大事、のっと慢心。


「ん? 出た!」


 スケルトンの気配も無いから、狩られた後かと思いきやすぐ近くに生えてきた。ここのスケルトンは足音感知で生えてくるのだろうか、その辺は分かっていないらしい。


「……えぇ」


 いやいや、ちょっと待とうか? 君スケルトン? 俺が知ってるスケルトンとだいぶ違うんですが? さっき頭殴られていたスケルトンとも結構違うんじゃないですか?


「盾持ちなんて聞いてねぇぞ!?」


 しかも生え方早いじゃん! 何? 何なの? その飛び上がるような動き、そしてカッコよく盾を構えて半身で後ろに剣を構えるポーズ、普通に強そうなんだけど……でもまぁやることは変わらないけどな。


「ふん!」


 わかってました! 貴方が盾で石を防ぐこと、これは結構大きな石じゃないと小動もしないんじゃないかな? あぁでも動きはスケルトンだ。


「動きは鈍いけど盾が厄介すぎる」


 じりじりとゆらりゆらり揺れながら近づいてくるスケルトンに煉瓦みたいな石をシュート! まったくダメージが入らない! 盾! 盾が優秀過ぎる。


「くそ、あの手に持った盾じゃまだ!」


 いや、よろけはするのよ? でも頭を守る様に構えた盾がその位置からほとんど動かない。何度も石を投げるが同じ、すでに切りかかって来ても良い距離なのにまだそのまま近付いて来るあたりかなり慎重な骨である。直殴りの泥仕合、いやそれだとこっちが圧倒的に不利だ。


「こっちはC級で武器も盾も使用禁止なんだぞ! そっちばかりずるいじゃないか! うお!? ……くそが、世の中理不尽だな俺の石とその盾交換しやがれ骨野郎」


 くそ切りかかってきやがった、ほかのスケと一緒で切った後の動作は遅いけど、盾が邪魔で殴れ……は? え、俺の手。


「は?」


 重い。石が急に重く……。


「……あ? っと!?」


 あぶねぇ!? 切り上げてきやがった! 盾が無ければ死んでいた。


「盾だな……え、もしかしてそう言う事?」


 なんで俺の手に盾が? もしかして交換の魔法と言うのは、だいぶ条件厳しめ魔法だったって事? このボロボロ具合は完全にさっきまで骨が持ってた盾ですよね。ほら、あの骨も手に石持って取り落としてるし……勝つる!!


「こ、交換!」


 左手には盾、なので右手に小石を持って恩恵を使ってみたら光る小石。


「おお、これなら!」


 そして次の瞬間には手の中に剣の柄が現れ、その先にぼろっぼろの刀身が現れる。もう剣ではなく鈍器としか言いようがないボロボロ具合だ。


「…………倒せた。あれ?」


 あっけなく倒せた。目の前の頭を殴ればあっと言う間に塵となって行ったスケルトン、そして手の中の盾と鈍器。


「あースケルトンの持ち物だから」


 どうやら相手の武器を奪ったとしても、化物が倒されればその持ち物だった武器も塵となって消えるらしい。これは異界でない外であれば消えることは無いのかもしれないが、それはA級にしか出来ない事で俺には縁のない話だ。少し悲しくもなるが考えないことにする。


「まぁいいか、これは要検証だな」


 とりあえず今は突然使えるようになった恩恵の検証だ。うまく行けば特需に乗っからなくても稼げる手立てが見つかるかもしれない。その為には安定性が大事だ、良く分からない不安定な商品なんて誰も欲しがらないからな。


「え、三つ?」


 おおお! 幸先が良すぎるじゃないか、三つ以上出る確率は結構低かったはずだ。


「……奥だな」


 これは面倒なスケルトンだったから多く出た可能性もあるな、奥に行けば行くほどスケルトンの種類も増えるらしいから、もっと奥に行けばボーナススケルトンが居るかもしれない。ちょっと、楽しくなってきたな。


「交換!」


 もう何体目だろうか? 交換の仕様が大体わかってきた。


「よし!」


 とりあえず交換で奪ったこん棒で頭を殴る。割れる頭蓋骨、武器は強い。石は弱い。


「三つだ」


 やはりこの辺りの骨は一段階強いようだ。たぶん人が少なかった理由もその所為だろう。いくら三つ出るスケルトンだとしても盾と武器持った革鎧のスケルトンとか相手したくないのではないだろうか? 土から出てくるスピードも速いのでモグラたたきも出来ない。


「キーポイントは手だな」


 でも交換の魔法があれば何とか戦える。どうやら手と言うのがポイントだったようで、色々試しながら狩った結果、俺の恩恵である交換魔法は、対象の手と自分の手の間で交換を成立させている様で、左右は関係ないがとりあえず手に持っていないと交換できない様だ。


 それでも一瞬で相手の攻撃力と防御力を低下できるのだから強い、あとスケが持ってるものより重たい物を交換すると相手はよろける。これは大きな隙となってとても狩りやすかった。


「割と応用の幅はあるだろうけど、あ! 説明が変わってる」


 なんとなしに思い浮かべるとすぐに表れる緑の壁、最近のネット環境より優秀な壁には依然調べた時とは違って使い方の詳細が増えている。と言っても先ほど判明した自分の手と対象の手の間で交換を成立させると書き足されただけであるが、それでも確信できるのだからありがたいと言えばありがたい、しかし距離やその他の部分に関しては何も書いてない。何回か試す中で距離もある程度近くないと使えない様だったのだが、緑の壁には何も触れられていなかった。


「自分で理解しないと説明に反映されないのか? いや、毒の沼の看板じゃねーんだから」


 実際に使って理解しないと出てこない説明書きとか、不親切極まりない。きっと距離に関しても詳しく計測して初めて説明書きに出てくるのではないだろうか、そんなのただの覚書なのである。


「でもこれなら俺でも戦えるな、武器所持は運搬の禁止だったから」


 そう、この恩恵を使えば武器運搬をするわけじゃないから異界でも武器が使えるのだ。元々武器所持に関する特例で問題になっているのは、街中で問題を超す馬鹿対策や思わぬ事故を防止する意味合いが強い。それでなんでC級がこんなに不遇かは全く分からないんだけどね! こう言うの反逆したくなるんだけど、悪いことはしない方向で反逆したい。


「ここの買取所は対応良かったな? 異界ごとに色々違うのかな」


 でも買取所で骨キューブ売っちゃう、悔しい! くもないほどに対応が良かった。江戸川大地下道の買取り所なんて、隠しもせずにこっちを見下して来るのにいったい何が違うのか、腹が立つから今後は絶対に江戸川大地下道で公営買取所を使わないことにしよう。


「二万八千円……おいしいな、これならすぐに20万たまるかも」


 今日だけでこんなに稼げた。特需すげぇ……これは人が集まるわけだよ。それにしても青山霊園か、霊園にこんな人が多いってどうなんだろう? お盆とかは増えそうだけど、寝てる人がうるさいとか怒ったりしないんだろうか、それとも嬉しいものなのだろうか? 死んだこと無いから分からないけど、忘れ去られて寂しく朽ちるよりかいいかもな。


 地下の墓石は、忘れられた先にある自分の姿かもしれないなんて馬鹿な事を考えると、この異界は欲望まみれの人間でもいいから、騒がしくしてほしかったのかもしれない。


 正直、地下墓地は寂しい場所だったけど、人がいるだけで随分違って見えるものだと思った。



 いかがでしたでしょうか?


 特需到来、借金返済?買ったなガハハな羅糸でした。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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