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第23話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。




「二度目の異界、今回どこまで狩れるかだな」


 今日の予定は狩れるだけ狩る。昨日は少し歩いてホームセンターで軍手を購入したんだが、ちょっと高いのか安くて大量に入った物しかなく、結局コスパ優先で大量買いしたけど、うん……わるくはない。


「んー……休みだからか人が多いな」


 前回より人が多い気がするし若い子が多い気もする。あと陽の気配がビンビンするのでなるべく離れておくべきだろうか。


「ん? 学生か、腕章付けずにここまで来てるって事は狩りなんだな」


 4人の男女集団は服装から学生の様で、彼等が楽しそうに話しながら歩く中央右寄りを大きく中央側に迂回することにする。でもなんか既視感が……。


「どっかで見たような? てか睨まんでも」


 俺の足音に気が付いたのか、男子生徒が一人こちらに目を向けそのまま睨んでくるんだが、あれが若さと言うものか、私にも昔は……いやぁあんなことした覚えはないなぁ? それにしても一緒にいた女の子達はずいぶん可愛かったが、デートと言う奴だろうか? 羨ましいね。


「ああ」


 思い出した。あの時のスライム爆殺犯だ、逃げた後お縄にはならなかったのか、まぁここに狩りに来てるならそうなるよな、子供だから大目に見られたのか元々その程度の注意でしかないのか、まぁどうでも良いや。


「少し離れ……いや、反対に行くか」


 めんどくさそうな気配が睨む彼から伝わってくる。いったい俺が何をしたと言うのか、若者の考える事はわからんねぇ。


 うんうん、これだけ離れていればあの集団も見えないな、ほぼ左側の壁際だけど今日の目的は狩りであって、人間観察じゃないからな。と、言ってるうちに狩りエリアだな、前方に先客が居るので歩く速度を合わせておくか。


「こっちはこっちで違う制服の学生さんだな」


 こう、なんだろう、制服から感じる雰囲気ってあるけど、清楚な感じがするな? 女子二人だからか、いかんいかん大輔ウィルスが感染してしまったかもしれない。


「うーん」


 あの子たちが持ってるの、レンタル武器かな? 確かTの動画で紹介されていたけど優遇ポイント数ポイントで貸し出しとか言っていたか、種類はたしかメイスだったかな。


 ホームセンターの店員曰く、ハンターに一番人気は大型のハンマーらしく、メイスもまぁ似た様な部類であろう。長めの木製柄の先端が重い金属性になっていて、ある程度のリーチと攻撃力でスケルトンとやり合うには相性が良く、なんでスケルトン基準かと言えば最も多い異界の化物はスケルトンと言うのが理由らしい。


 ただ気になるのが、メイスを持つ彼女達の手元だ。使い慣れて無い感じ以前に重くて扱いきれないのか地面を引き摺っている。ちょっと見てて不安になる姿だ。


「あ、スライム」


 おっと、俺は俺の事に集中しないとな。よく見たら前を歩く女の子たちにスルーされたのかお前、しょうがないなぁおいちゃんが狩ってあげるよ。


 周りの人とスライムの位置関係を確認、石を投げても壁に飛んで行く位置、運が良ければ脇道に入るかもしれない。そんな位置から一方的にスライムへと石を投げる。今日はイボイボ付き軍手があるのでグリップが効いて投げやすい。


「人気無いなお前」


 まさかの全弾ヒット、5発でスライムは塵となって消えた。これは少し気持ちいい、そしてスライムキューブを拾い上げるが、スライムキューブを持つなら素手の方が気持ちいいことがわかった。


 よし、予め石は良さそうなのを確保しておこうか、腰に石入れ用の小さなバックがあると良いかもしれない。


「スケルトン出たよ!」


「気持ち悪い」


 お、スケルトンが出たのか、うーん二体同時とか珍しいな? いつも単独のスケルトンが多い印象があるんだけど、大丈夫かな。


「言ってないで、あたしは右やるよ」


「わかった左だね」


「たのしそう」


 普通に楽しそう。この状況でこの感想は不謹慎なのかもしれないけど、やっぱ頼れる仲間と一緒に一狩りとか憧れる。大輔? いやいやいや、あいつ一人で三回死ぬからダメだ。なんで残業と言いつつ逆鱗集めを手伝わせて来るかな、手伝った俺もあれだけど。


「ん?」


「やば!? 増えた!」


「え? きゃあ!?」


 あ、これやばいやつだ。三体目のスケルトンが脇道から飛び出してきた。文字通り飛び出してきたのだが、どう言う原理なんだ? あ、いやそれより右の子はスケルトンに組み付かれているし左の子はすでに尻餅ついている。


 助けに行くとか危険、そう言う声がした気もするけど助けに入らないと後悔するだろ、俺はもう後悔する選択とかしたくないんだ。


「……行こう」


 選ぶなら、楽しい気分になる方が良い。


「放してよ!」


「くるな! くるな!」


 走る、右の子はメイスを掴まれているようだ。あっちのスケルトンはステゴロか? 目の前の子はメイスを逆さまに持って木の柄の部分を振り回しているな、確かにそっちの方が軽くて振り回しやすいが、スケルトンはもう振り下ろしの態勢に入っている。


 間に合えよ!


「おらあ!」


「ひっ!?」


 俺もまだまだ体が動くな、それにしても蹴った感触がまるで布を蹴っているみたいに軽い。あと女の子に悲鳴を上げられると地味に精神的ダメージが入る。


「くそ軽いんだよなこいつら」


 軽くて力が伝わらなかったからか、よろけただけにとどまったが、それでも運よく足元の石に躓いて仰向けに倒れたので良しとしておこう。あとはもう目の前まで来ているスケルトン、心なしか他のスケルトンより大柄で、持っている刀? も長い気がする。


「だいじょぶか! 今行く!」


 前方から声、誰か救援に来てくれたようだ。ならあとちょっと頑張ればなんとかなる。


 と思っていた時期もありました。こいつ速い!? もう腕を振り上げってる。


「ぬお! こいつ西洋剣だと!?」


 手に持っていたのは煉瓦の様な長方形の石、それが功を奏したのか何とか両手で刀じゃなかった両刃の西洋剣を受け止めるが、こいつ他のスケルトンと違って両手で振り下ろしてきやがった。骨だけのくせに力つよ! おも!? 近接戦は避けメインじゃないと今後不味いな。


「援護する!」


「頼む!」


 先に右の女の子を襲っていたスケルトンの背骨を砕いた男がこっちに駆け出す。見た目は大学生か、同い年くらいだろうか? 彼が居なければ不味かった。


「おう! くらえ!」


 後頭部に一発、やったのはバールのようなものだが、肩甲骨の辺りで止まっている。それもすぐに塵となり始め地面に抜けた。俺の腕に掛かっていた重さも無くなってそのまま地面へと崩れるように倒れるスケルトン。


 その後ろで動く何かが見える。二人目の救援と、白い腕。


「っ……お前は起きるな!」


 手に持っていた石を投げつける。さっき俺が蹴り飛ばしたスケルトンが剣を手に立ち上がろうとしていたところに俺の石が飛んで行き、胸の辺りに当たって跳ねた。


「ナイス援護! はっ!」


 そこに二人目の救援が長柄の武器を倒れたスケルトンの首に振り下ろす。あれは薙刀だろうか? すごく綺麗な一撃が振り下ろされ、振り下ろした人はすぐに薙刀を引いて脇に抱えた。


 恐ろしく綺麗な薙刀美女である。


「……はぁ」


 気が抜けた。


 体が勝手に座り込む。すぐ隣には今も尻餅ついたままの女の子、高校生だろうか、脚が大きく開かれスカートは捲れ上がっているが下はジャージである。なんとなしに視線を向けたがジャージ履いてなかったら警察のお世話になっていたかもしれない。


「ナイスファイト!」


「お? おお……ないすふぁいと」


 あ、こいつ陽キャだ。天敵だわ、後ろでニコニコと笑みを浮かべている薙刀ポニテ美女は彼女に違いない。


「だいじょうぶ!?」


 学生さんたちはお互いに無事を確認し合っている。微笑ましい光景でおじさん目が癒されるよ。さて、立つとするか、ケツが痛い。


「うん、ありがとうございます」


「なんてことないさ」


「だいじょうぶ? 怪我してない?」


 座り込んだままの女の子のお礼に笑顔で返事を返す陽キャ、これが陽の力、陰の我には眩しすぎる。あと目の前を通った薙刀美人さんは良い香りがしました。おかしいな、なんでこんな殺伐とした空間でも甘い匂いがするんだろう? お局なんてどぎつい花の臭いしかしなかったのに。


「少し擦りむいただけです」


 むむ、怪我したのか、それは一大事だ。こんな訳の分からない地下道じゃどんな雑菌が居るか分からない。


「あらあら、消毒して今日は帰りなさい?」


「どうしよう?」


「うん、帰ろう。ありがとうございます」


 おお、美人さん手際が良いな、あらあらとか言ってるうちに腰のポシェットから消毒薬とハンカチ出したぞ、良いなこんな彼女持ってて……どうしたイケメン、そんな苦笑い浮かべて? イケメンが台無し……にはなってないな。


「いえいえ」


「そちらの方もありがとうございます」


「ん? おれ? 気にしないでくれ、あまり役たってないし」


 きょどってないよ? ないよな? 女の子からお礼なんて何年言われてないだろうか、ちょっと緊張するので上目遣い止めてもらえませんか? ほんと大したことしてないんで、ニコニコ笑み止めてください、浄化されて溶けてしまいます。


「何言ってんだよ、良いタンクだったぜ!」


 いたいよ!?


「はは、そりゃどうも」


 これだから陽の者は、簡単にボディタッチして来るんだから嫌どすわ、間合いの取り方が近すぎますえ。


「あのこれ」


「俺はいらないよ」


「私も大丈夫」


 ん? あれはドロップ品の骨キューブか、何か形が違うけどまぁ内容は変わらんだろ。イケメン二人はいらないらしい、女の子たちが助けてもらったお礼を受け取ってもらえずオロオロしてるじゃないか。


 ん? こっちを見上げないでください。上目遣いは俺に効く。


「え、俺? いらんいらん、二人で記念に持って帰ったらいい」


「あ、ありがとうございます」


 うんうん、女の子は笑顔の方が良いよ。ついでに言えば俺にその笑顔を向けないでくれると嬉しいな、おじちゃん胸がどきどきして勘違いしてしまいそうだからさ、童貞を舐めちゃいけない。


「あんた良い奴だな!」


「そうかな?」


 女の子たちは記念に持って帰るかどうか相談しているが、持って帰りそうだ。あとさっきから背中を叩くのやめてもらえませんか? 何がそんなに嬉しいんだろうか、イケメンと薙刀美女もニコニコである。わからん。


「それじゃ、大きな声出せば駆け付けるからな」


「無理しないでくださいねー」


 それからしばし情報交換と言う雑談を行った後、それぞれ三方に分かれた。


 女の子たちは薙刀美人に手当してもらって出口に、イケメンコンビは何が気に入ったのか俺に笑顔を浮かべながら地下道の奥へ歩いて行く。話したことと言えば異界経験回数にハンターランクとハント経験くらいだ、


「……うむ、仲間って良いものだな」


 イケメンコンビも学生コンビも妙に驚いていたが、一人じゃないってこんなに温かかったんだな。仲間が欲しい。


「とと、そんな事より骨を狩らないと」


 駄目だ駄目だ、温かいものに触れ過ぎると心が脆くなる。ストイックとまではいかないが、気を引き締めないとボッチはすぐ死ぬんだから、だから……。



 だから、俺は、あんな目に……あんな目?



 左手に握っていた大きな石が弱々しく白い骨の化物に飛んでいく、利き手じゃないからこんなものだが、化物は石を短刀で払い落す。この化物は一度短刀を振るえばすぐには態勢を戻せない、その隙に俺は右手に持った一回り大きな石を振り上げ駆け出し、中身の無い頭に向かって振り下ろす。


「はぁっはぁっ……ふぅ」「肩と腕が疲れて来たな、でもなんだ……結構いけるな」


 そう、スケルトンを倒す方法をやっとパターンか出来たんだ。近くに来たスライムも問題なく倒せた。次からはもっとうまくやれる。


 そう思ったんだ。


「ん? なにか騒がしいな」「にげろ!」「こっちくるなよ!!」「うるせえ! 雑魚はどけ」


 頭が痛い。


 そう、若い声だった。


 聞き覚えのある。


 走って来たのは学生たち、制服を着ていたからすぐわかった。男、男、女、女、そんな順番だった。女より先に逃げて、なんて言ったら最近は差別になるのかな? 知らんけど、頭が痛い。


「くそ、こんな時に」「たまに動きが早いのなんなんだ! おお!!」「よしや「邪魔だどけ!!」ぐぇ!?」「いてて、なんて奴らだ」


 俺も気にせず逃げるべきだった。逃げる? なんで……。逃げていれば突き飛ばされずに済んだから、焦げ臭い、背中から布が焦げたにおいがする。


「立て!! にげろ!!」「へ? ……ぁ」


 目の前が白くなって、黒くなって……。



「…………」


 視界がぼやける。じわじわと何かが映って、ここは? どこだ? 白い部屋? いや、カーテンだ。


「…………なにが」


 いったい何が起きたんだ? 俺は確か江戸川大地下道でスケルトンを何匹か狩って、スライムも……なんか寒い、体が怠い、目が、慣れて来たけどこれは、カーテンレールと……点滴がぶら下がってる。


「知らない天井……病院の臭いだ」


 ここでテンプレを口にできるなんて、流石俺、ヲタクの嗜みを守れたぞ……大怪我して入院コースか、体に違和感があるけど痛みは無い。怠いけど感覚はあるので五体満足の様だ。


 よかった。


「……」


 息を吐く。静かだな、人はいないのかな。


「失礼しま……」


 目が合う、見詰め合う、とても静かで耐えられない。


「どうも」


「ご自分のお名前わかりますか?」


 美人なナースさんが現れた。真剣な顔で名前を訪ねて来ている。近い、羅糸は緊張した。


「あ、意識確認のやつですね。始めまして望月羅糸もちづき らいとです。美人なお姉さんの名前はなんていうんですか?」


 上手く答えられたと思う。名前を聞かれて答えて相手の名前も訪ねる。クールだぜ。


「……意識に多少の混濁有り」


 げせぬ。



 いかがでしたでしょうか?


 慣れないことをして失敗すると心のダメージでかいですよね。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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