第19話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「これが官民協力の結果か……ほぼ独占なのでは?」
大きな塀にバリケード? フェンス? 良く分からないけど河川敷に出来た大きな異界の入り口の周りは完全に囲まれて大きなプレハブも建っている。物々しい警備も銃を持ってるし、あれって自衛隊なのかな? どこを見ても民間ぽさが見当たらない。
「あぁでも別に受付しなくても入れるのか」
入り口に色々説明書きがされている。
どうやら大きなプレハブは買取や特例販売所、あとは休憩所や何かあった時に救助する人員の詰め所になっている様だ。特に用事が無ければ異界の入り口ゲートでハンタータグを読み取らせるだけで中に入れるらしい。
俺にとってはほとんど意味を成さない施設がプレハブと言う事だ。色々優遇してもらえるのはB級からでC級は特例もほぼ無いし武装も認められて無いので特例販売所で買えるものは無い。あるのは買取所くらいだな。
「ここが買取り所か」
買取所はプレハブに無理矢理くっつけたような、半分が外に出ているみたいな作りになっているが、お洒落に言うならオープンテラス? たぶん室内を汚さない為なんだろうな、テラスに上がってみると結構床が泥だらけで汚い。
「うーん」
買取カウンターは三つ、そこに並んでいる人は目の細かいプラスチックの籠みたいなものに何かを山積みにして運んでいる。あれがたぶんドロップってやつだろう。カウンターから少し離れた場所には掲示板、買取り品についても書いてあるが……。
「やす」
買い取ってもらう意味があるのか分からないほどに安い。どのドロップも買取価格が一桁なのだ。
「こんなの売る奴いるのか? いるのか……」
こんな値段で誰が狩りなんて、とも思うが籠に満載して運んでる人がカウンターに並んでいるから売る人は居るし、テラスの自由席には買取りが終わるのを待っているっぽい人が集まっている。
「貢献度による優遇?」
何故か解った。買取金額は糞ほど安いけど、スライムのドロップなんか0円と全く意味がない価格の代わりに、優遇ポイントと言うのがもらえるらしい。俺にはあんまり関係ないからと話し半分だったけど、確か優遇ポイントを使うと専用サイトで色々買い物ができるはずだ。地域貢献とかの意味があって、B級だとこのポイントを貯めることでA級に昇格出来ると言っていた。
「…………よし! 俺には関係ないな」
うん、俺には全く関係ないことがわかったぞ! 何故ならこの優遇ポイント、C級はもらえないからだ! 糞食らえである。
はぁ、これが格差か……テラスの高さが最初より高く感じるような気すらしてきた。こう、お前の席はここには無いからと国から言われているような気分だ。いきなりテンション下げて来るな、流石は落ちこぼれと言われるC級だな、最初から全く期待してないのがわかる。電話口で高橋さんに励まされるわけだ。
「こっちはまぁ関係あるかな」
でかい、凄くデカいが横幅はそれほどでもないからか結構人が並んでいる。買取カウンターよりは少ないけど、回転率が良いからで利用者はこちらの方が多いみたいだ。これがリサイクルタワー、異界と一緒に現れた緑のタワーであり、物を入れるとEマネーに変換してくれる謎の超技術タワーである。
「あー……でも大して変わらないな」
でもこっちも割と渋い、ラミネート加工された表がアルミの掲示板に張り出されているけど、こっちも一個一桁ばかりだ。この異界で採れるものが書いてあるみたいだけど、生ごみ入れてもEマネーに変換してくれるらしく、飲み食いしたごみを入れている人も居る。
あれ? 国や企業よりリサイクルタワーの方が優しい気までしてきた。ありがとうリサイクルタワー、今後は君を利用させてもらうよ、おにぎりと言う日々の糧の為に……お金稼げないな。
「お金を稼ぐにはやっぱり恩恵が強くないと無理かなぁ?」
直接化物を殺せる恩恵じゃないとBも難しいらしいからな、そのへん緩和してくれと言いたい。まぁ言ったところで偉い人は聞いてくれないのが世の常ではあるんだけど。
「とりあえず入ろう」
話は入ってからだな、ゲートは特に並んでないみたいだ。
「ん? この腕章‥‥‥なるほど、観光や見学は許可証なくても出来るんだ」
観光に人が入れるって事はそれだけ危険が少ないって事だろう。飛び越えられない高さのフェンスの脇に大きな説明書きとQRコードが書かれた腕章が大量に並べられている。どうやらご自由にお取りくださいと言った感じの様で、戻ったら返すらしく、防犯対策も何かされている様だ。
「まぁいいか」
持って帰ったら罰金と書かれたら誰も持って帰らないだろう、いやまぁそれでも持って帰る人はいそうだけど……これも俺には関係ないな。
ハンタータグをゲートの読み取り機にかざせば一瞬で反応して足元を照らす照明の色が変わる。完全に地下鉄の改札のあれだな、あれより少し未来的にも感じるけど、足元は埃っぽくて清潔感は無い。
「涼しい」
動画で言っていた通り中は涼しい、少し入っただけで世界が変わった様に涼しくなる。いや実際に異次元とか言う話だし世界が違うのか。
そして見えてくる広く長い下りの階段、これで地下まで降りて行くわけだけど、降りれば降りるほどに空間はより高く広くなっていく。半分ほど降りたのだろうか? すでに両端は薄暗くなって見えなくなってきた。
「端が見えないな」
一番下まで降りたらもう真ん中からは端っこが見えない。それでも薄暗いだけ御の字なのであろう異界は、旅客機が余裕で行き来できるくらいには広い空間が広がっていて、本来照明が無ければ真っ暗闇になるところだが、なぜか照明も無いのに全体がそこそこ明るいのだ。
全体が均一に明るくて暗い、全体を無数の暗いLEDライトで照らしているような薄暗さは変な感じである。
「学生か」
夏の日差しになれてしまった目もその薄暗さに慣れて来たようで、少し離れた場所に居る人の服装も判別できるようになってきたが、どうやら学生服の様だ。最近の学生服は実にお洒落であるが、数年前まで俺も着ていたはずなのに、それでもお洒落に見えるのは学校が違うからか、それとも女の子が居るからか。
「結構腕章付けてる人多いけど、大丈夫なんだろうか」
学生たちは腕章を付けているから観光なのだろう。あれ? 今日は平日のはずでは? あれ? 祝日だっけ? ここの所忙しかったからカレンダーが頭に入ってないな。
「見学者はなるべく中央を歩いてください!」
「ふーん」
スーツを着た人がいるが、あれは企業側の人だろうか? 見学者は中央に寄って歩く様に言われているが、あれにはちゃんと理由があったりする。
「あれが脇道か」
中央から少し離れて歩くと薄暗い先に見えてくる壁の穴、通称脇道や湧き道と呼ばれる道で、両側の壁に同じような間隔で開いていて、中からは化け物が出てくる仕組みになっているらしい。動画ではその脇道の調査をしていたが、だんだんと狭まって最後は行き止まり、戻る途中で突然スケルトンに殴られて動画は終わっていた。
「あ、スケルトン」
動画を思い出していたらそこでも見たスケルトンが脇道から出てくるところに遭遇。
「スケルトンだ!」
「うわ、気持ちわる!?」
「確かに、暗い所で見たらびっくりするな」
完全に理科室の骨格標本である。手に刃物を持ってなくて止まっていたら、誰も動くとは思わないだろうな。正直あの状態で動いているのは気持ち悪いし、肝試しで見たら悲鳴を上げる自信がある。
「うわ!?」
「ちょっと! スライム来てる!」
「ん?」
お、今度はスライムだ。地面をぬるぬると滑る様に動く所為で音がせず、接近に気が付きにくいと説明されていたが、少し空気が抜けたビーチボールと言った見た目なので注意していたら問題なく気が付きそうだ。
それにして狩る人間が居ないけど、狩ってみてもいいのかな? あ、でも何かあの学生がやり始めそうだから諦めよう。
「このくらい俺の魔法で一発だぜ! おらあ!」
おお! 火の魔法だ! 最近事件を起こしている恩恵トップ5に入る魔法じゃないか、あの子は火の玉を作るまでの恩恵の様で、それを大きく振りかぶって投げるようだ。熱くないのだろうか、気になる。
「当たってないじゃん!」
スライムを飛び越していったか、ちょっと力み過ぎたかな? あ、でもすぐにまた火の玉を作ってる。今度は両手に一個ずつ作っているから、連射も可能な良い能力だと思う、羨ましい。
「うっせ! おらおらおら!」
「ふむ、やっぱり恩恵、恩恵が強ければ楽なんだな」
どこかの配管工を彷彿とさせる火の玉の乱舞は12球目で終了、地面にぶつかり燃え広がっていた炎もすぐに消えたが、地面は焦げ付いている。
あと、スライムは倒せたようだが……焦げ付いた地面と無数に落ちている石以外に何も見当たらない辺り、ドロップも燃え尽きたようだ。もったいない。
「君たち! 入り口に近い中央で恩恵を使ってはいかん!」
「スライムが来たんだ仕方ないだろ!」
急に大声がしてびっくりした。どうやらこの辺りでは恩恵を使っちゃだめらしい。狩らなくて良かった、いや? 恩恵使わなければいいのかな。
「この辺りの中央エリアは戦闘禁止区域だ。狩るならもっと奥に‥‥‥君たち腕章をつけているじゃないか、警備の人間がいるからちゃんと呼びなさい」
あ、戦闘も禁止ですか、ふぅ……危なかったぜ。観光エリアは警備に連絡、羅糸学んだ、もう忘れない。
「は!? 許可証もってるし! ほらBだぞ!」
あ、やっぱBなんだ。いいなー、学生でも恩恵が強ければB級貰えるのか、羨ましい。羨ましいがまぁ仕方ない、俺も何時か空間魔法使えるようになったら良いな……交換魔法って言うより空間魔法って言った方がかっこよく聞こえる気がする。新発見だな。
「はぁ‥‥‥こちらガード24番、違反者を確認応援求む」
「っ!?」
あ、逃げた。
「こら逃げるな!!」
なるほど、観光で入った人が偶発的に戦闘禁止区域で戦っても怒られるだけで済むけど、免許所持者がそれやったらアウトなわけね。羅糸はいっぱい学んだ、危険行為ダメゼッタイ……そう言えば講習でそんな事言ってた気もするな。
「……もう少し先か」
よし、スライムとスケルトンの動きも見れたし、もう少し先に行って狩ってみよう! ……それにしてもあのスケルトン、動かないな。結構騒がしかったけど、音には反応しないタイプなんだろうか? それも追々だな。
いかがでしたでしょうか?
学びを得た羅糸はさらに異界の奥へ足を踏み入れる。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー