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第18話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「資格はとれたよ」


 電話の相手は大輔だ。どうやらあいつもハンター資格の試験が気になっていた様で、講習中や筆記試験中にもよく連絡を取ってきた。


 今日は合格後の意思確認とか、各種許可証の受け取りぐらいのもので午前中の内にすべて終わった。


「うん、講習が面倒だっただけでテスト自体は大したことなかったし、今日は説明と意思確認だった」


 お汁粉カキ氷が意外と美味いことを知ったあの日から数週間、山本のおっさんからも解放されてすでに有休消化に入っている。


「そっちは?」


 40日分の有休はまだ消化しきれていない。それは大輔も一緒で、あいつは今キャンプをしているらしく、電話の向こうから怠そうな大輔の声のほかに女性の声も複数聞こえてくるが、なんでも親戚の子の引率を任されたそうで助けてほしいそうだ。


「良いご身分だな」


 どう考えてもハーレムで良いご身分だと思ったのだが、手を出せば漏れなく事案待ったなしの状態らしく、どうせなら高橋さんの様な美女が良いとぼやいている。なんでも高橋さんも誘ったらしいのだが、やんわりと忙しいと言われ断られたそうだ。


 そりゃ忙しいよな、俺らの会社の処理の実績を買われて他の面倒な会社の処理にも立ち会っているらしいから。


「んー、それじゃまたな」


 大輔はおっちゃんと美少女に呼ばれたようで、疲れた様に返事を返してそのまま電話を切った。羨ましい奴め、十代の少女に囲まれてキャッキャウフフとか……駄目だな、陰の者には辛い。陽の者である大輔なら問題は無いのだろうが、なんだか心が痛くなってきた。


「ふぅ……ちょっと公園でゆっくりするか」


 精神ダメージと暑さによる肉体的ダメージ、その両方を癒すには深呼吸ぐらいじゃちょっと無理だ。と言うか何だこの暑さは、今年は特に暑い年なのだろうか、それともこれも異変なのか、分からないけどあのベンチは涼しそうである。


「あっついなぁ‥‥‥」


 大きな樹が良い感じの影になったベンチ、左手側には大きな噴水、子供達が地面から吹き出る噴水を追いかけていて微笑ましい。でも近頃は微笑ましいからと見てるとすぐ通報されるらしい、嫌な世の中である。


 仕方ないので涼し気な噴水から目を右側に、そこにはたくさんのブルーシートが敷かれ、日傘やパラソルがいくつも開かれている。


「フリーマーケットか、最近増えた気がするな」


 ここ何日か、テレビでも特集されているフリーマーケットは盛況の様で、店も客も多く何やら声が聞こえてくる。


 値下げ交渉の声に呼び込みの声、服に家具に良く分からない小物、さらに食料品なんかも置かれている様で、特に食品系のお店は固まって別エリアに分けられている様だ。


「なんだか実用品が多いような、あと野菜とかも」


 野菜はもうあれ個人じゃなくて農家が開いてるんじゃないかな? 新鮮な野菜がいっぱい並んでるから買って帰りたいが何分都心からじゃ家が遠くて面倒である。きっと彼らも収穫場所から近くてなるべく人が多い場所と言う事でここに来てるんだろ、俺が住んでるのは東京でも端っこだし、ああ言うのは開かれないだろうな……。


「物流は一向に改善しないし、店も減ったし品揃えも偏っている」


 たぶんだけど、あの店も売り先が無くなったからああやって売ってる可能性がある。昔似たような店を見たことあるけど、あの時はもっとスーパーに売ってない様な曲がったキュウリとか二股大根とかだったけど、今日のフリマは普通に立派な野菜ばかりだ。


「野菜、あれもハンターが意外に役に立ってる辺り、高橋さんは先見の明があるのかな」


 農家が化物被害で真面に野菜を育てられないと言う話も、ハンターの活躍で改善がみられている。まぁそれでもハンターの数が少なすぎて焼け石に水だとは高橋さんから聞いた話だ。なにせ外で化物退治できるハンターの敷居が高い。


「C級か……」


 公共の場で武器を持ち、高火力な恩恵振り回して化物退治が出来るのはA級ハンターだけ、そして俺はC級ハンター、最も人口が多いランクであり役立たずだと言う話だ。ただB級も同じくらい居るので問題ないと言うのが国の考えの様だが、B級も異界でしか活動できない。


「とりあえず、有休消化扱いとは言え自由な時間なわけで、情報収集、情報収集‥‥‥」


 偉そうにふんぞり返っている人たちの考えはわからんが、とりあえずC級も異界に入って良いらしいので少し頑張ってみようと思う。


 ちなみに、簡単に言うとAは強い恩恵を持った若い人や格闘経験がある人、有段者とか優遇されるらしい。B級は恩恵がある程度戦闘向きである事や、間接的に戦闘へ寄与できる者であることらしく、傷を治す恩恵や他人や自分の能力を引き上げる恩恵なんかもこれに当たる。


「ここから、いや家から一番近いのは、やっぱここか」


 ここしかないか、ここならCでも入れるらしいからな。


 そう、C級は入れる異界に制限がかかっている。危ない所に入らないようにと言った措置だと言うが、そう言った場所の化物を倒しても大した物は手に入らないらしい。


そんなC級は戦闘に不向きな恩恵や、未覚醒の人間がまとめてC級にされるらしく、格闘技能があると偶にBになれると言うのが先ほど許可証受け取りの時に聞いた話だ。


「動画も少し増えたかな」


 検索した動画のタイトルはどれも最初に大江戸大地下道が付くもの、すっかり異界と言う言葉が定着し、いつの間にか名前も付けられた異界は最近常にトレンドとなっており、新発見がある度に各地の異界ネームがネットの検索トップを上書きして行く。


「ファンタジーだと思ってたけど、何かもっと違う何かだよな」


 様々な異界の動画が関連動画として流れて行くTの画面、そこには俺が思っていたのとはだいぶ違うファンタジーな光景が映っており、サムネイルだけ見てもよくある異世界転移ものとは違う空気が満ちている。と言うか、なんかSFチックでもあると思ったけど、よくよく考えれば自衛隊がロボットとバトってるんだからSFか、まぁひっくるめてファンタジーでいいや。


「一応C級も可能になってるけど……」


 やっぱりC級も可能ということになっているけど、化物が倒せるかが問題だよな、浅い所に入っても新発見なんてないわけで、そうなると化物を倒してドロップで稼がないといけない。


「スライムとスケルトン」


 ドロップ、異界の化物だけの特徴で、何とか頑張って殺せば塵となって消えてしまう化物は、消えた後に必ず何か痕跡を残して行く。


 ゲームみたいだと言う事でネットでは即座にドロップと呼ばれるようになるが、死骸全てを利用できる外と違って、異界のドロップはすごく少ない。まぁ死骸が残らない分色々と安全と言う事でC級も入って戦う許可が出ているわけだけど、正直美味しくないと不評である。


「奥に行かなければ良いか、B推奨の化物か……」


 江戸川大地下道にはスライムとスケルトンが出るが、奥に奥に進めばB級推奨の化物が出て来るらしい、その辺に関してC級が手を出してはいけないなどの制限はない。なので将来的にはそれらを狩って稼ぐ方が良いのだろうが、先ずはスライムとスケルトンだ。


「よし! ちょっとフリマ覗いて帰るか」


 初心者用動画と言うのも見つけた。どうやらスケルトンの指先は鋭いらしいので、厚手の服が必要で、地下道は寒いとのことで余計に服は重要らしい。





「ハンタータグよし!」


 ハンタータグはステンレス製のドッグタグで表面にC級の文字と俺の名前が書いてある。裏にはQRコードが刻印されているので色々な手続きの簡略化が出来ると言っていた。何に使えるかは良く分からん。


「財布よし! 狩猟許可証よし! 調査許可証よし!」


 使い古された財布だが俺の社畜時代を支えてくれた相棒だ。狩猟許可証も財布の中に入れておく、C級の許可証なので化物を異界の中で狩っていいよと言う許可で、調査許可証は異界に入っていいよと言う免許、でもC級なので大して入れる場所は多くない。


 なんでも今後この辺の決まりは変わっていくらしく、年に一回は更新しないといけないと言われたので、いつでも使えるように、ついでに無くさないように財布に入れてバッグの奥にしまっておく。


 家に置いていたらどこに仕舞ったか分からなくなるからな。


「水よし! タオルよし! 塩飴よし!」


 季節は夏真っ盛り、水は携帯しておかないと死ぬし塩飴も大事、あるのと無いとじゃ体の疲れが全然違う。あとタオルはエチケット、と言うよりほんと最近暑くて汗が止まらないことが多い。あと怪我した時の止血に使えると動画でやってたので、薄手の物を2枚入れている。


「フリマで買った厚手の上着よし! リュック良し!」


 フリマで買った厚手の服、メーカーは分からないけど結構古そうな割にはしっかりした感じの布製の上着だ。革ジャンとか色々売ってはいたが、正直どれも動くのには向いてなかったので、少し工場の作業服っぽい感じもするがこれにした。実際に着て動いてみたが良い買い物だったと思う。


「服装よし! スニーカーもよし!」


 あとは汚れてもいい服に歩きやすい草臥れたスニーカー、全部リュックに詰めていきながら眺めるスニーカーはずいぶん昔に履いていた靴だ。学生の頃にバイトして買ったけどメーカー物のパチモンだったやつで、その割には履き心地が良いので捨てられずにいた靴である。


「とりあえずは、どんな場所か見学、無理はしない。出来れば戦えるか小手調べする」


 何があっても、万が一怪我して血で汚れても問題ない物で揃えた荷物を背負うとスニーカーを持って玄関に向かう。


 背中が少し重いけど、今の荷物の中で一番値段が高くて一番丈夫なんじゃないかと思う防弾バックパック、海外メーカーの戦場でも使えると言う謳い文句の製品であるが、まさか無理やり給料天引きで買わされたこれが役に立つ日が来るとは思わなかった。とある海外のメーカーから契約を取るために部長が購入すると約束してしまった物を何故か俺が買わされたのだ。


「戦いにならないと諦めるほかないからな……」


 海外製の容量を犠牲にした防御性能とやらを見せてもらおうじゃないか、まぁ問題は俺の攻撃がスケルトンやスライムに効くかどうかの方が問題な気もするが、計画はすでに立ててある。



 いかがでしたでしょうか?


 バックパックはいったいいくらしたのか、そして彼の計画とは……。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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