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第13話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。





「これが今のところの調査結果です」


「これはひどい」


 パッと見たところでお金の専門家でもない俺が理解出来るわけもない調査結果、しかしそんな俺にも判りやすい様に注目すべき場所は色が変えてあり、さらに注釈が入れてある。高橋さんと税務署職員のおかげで、俺にもうちの会社が常に脱税していることがわかった。


「今は退職届を出された方の関与について調べているところです」


「俺たちの給料も全然内容が違うな」


 しかもそれはちょっと数字が違いましたなんて言う可愛いものではなく、俺がわかる範囲でも変更されてない場所が無く、俺の給料は実際に貰っている金額と全然違う額であり、こんだけ貰えていたら何の不満も抱かない額になっている。


 ここまで違ったら普通バレそうなものだが、いったいどうして今まで分からなかったのか、チラリと高橋さんに目を向けるとどこか気まずそうな表情を浮かべていた。なんかあるんだろうな、俺の知らない世界で、知らないでおこう。


「何と言いますか……」


「これって会社をたたむと言うより、取り潰しって感じですね」


「そうですね、調査後は関係各所を交えて清算し、補償などを行った後、資産は国に回収されます」


 どこか気まずそうにしている高橋さんの隣に座る男性は、俺の問いかけに一つ頷くと会社終了のお知らせを丁寧に説明してくれる。


 これあれだ、今までの付けの清算終わったらぺんぺん草一つ生えなくなるやつだ。俺らの今後の給与もあまり期待が持てないな……。


「なるほど」


 流石に空元気も尽きてしまったのか勝手に体は俯いてしまうし、洩れた声にも力が籠らない。なんだか世界も揺れている気がする。


「お力になれず申し訳ありません」


「いえいえいえ! 助かってますから」


 いやいや、高橋さんはめちゃくちゃ親切にしてくれたから、そこは気にしなくていいと思う。ものすごく苦み走った表情で見詰めてくる高橋さん、その隣に座る税務署の男性職員もなんかすごく気遣ってくれているのか、目に妙な覚悟の色が籠っている気がする。


「何か良い話がありましたら紹介させてもらいますので!」


「あ、はは……期待しないで待ってます」


「はい!」


 良い話か、確かにそんな話があれば教えてほしい所だ。会社が終わるのは決まっているから何か仕事成りお金を稼ぐ方法なり教えてもらえるといいのだが、正直今の段階で求人は絶望的と言うか、求人サイトが機能してない。


 俺だって何も行動してないわけでは無い。今後の事を考えればすぐにでも退職して再就職が無難と言える。しかし辞めるタイミングはすでに失ったわけで、そうなれば求められている人材の確認しかないのだが、求人サイトは止まっているし、たまに見かける求人も建設関係の力仕事、正直無理である。あとは道路工事の警備とか……そう言えば公安の人が居ないな。


「そう言えば公安の方は?」


「そちらに関してはまったく、元々守秘義務が多い人たちなので……今日はもう帰られたとは思いますが」


 帰ったみたいだが、まぁ色々段ボールに詰めて持って帰ってたし、データも抜き取ってたみたいだし良いのだろうか、別にパソコンをそのまま持って行ってもらっても構わなかったのだが、意外とそんなことは無かった。


 むしろ困ったのは俺が何かする度に山本のおっさんが興味深そうに見詰めて来てたくらいで、「ほう」とか「なるほどなるほど」とか「うんうん」とか後ろで呟かれるとやり辛くてしょうがない。警察の人も俺のことじっと見て来るし、確実に何か疑われているんだよな。


「そうか、ずいぶん難しい顔で見られてたんだけど、変な罪で訴えられなければいいな」


「そうですね……」


 そこは否定してほしい、思わず呟いたんですね高橋さん? 思わずともつい口から出て来るくらいに俺の状況は悪いと言う事なんですね? そのしまったと言う感じの顔は? 税務署の人も目を逸らさないで! 不安! 不安しかなくなっちゃうから! ビジネススマイル崩れちゃうから!? もう、誰か助けて!





「てことはだ……休み明けにまた来るかもしれないのか、あの公安のおっさん」


「会社より心配はそっちか」


 高橋さん達との話し合いも終わり、あとは大体向こうでやってくれると言う事で丸投げ、確かに公安のおじさんも怖いけど先ずは会社の事を心配しようよ大輔。確かに高橋さんも税務署の人も俺らに不利益が無い様に処理するとは言ってくれているけど、脱税の金額はお前にも見せただろ、給料出るかわからんのだぞ。


「会社はもうしょうがないじゃんか? 潰れる事は決定事項なんだろ?」


「まぁそうだけ……次の仕事どうしようか」


 そう言われるとまぁ、俺も諦めるしかないとは思っている。ちょっと心のどこかでどうにでもなれと思っているところはあるし、実際何もできないから少しでも未来の事を考える方が建設的だと思っている。


「就職かぁ……無理じゃね? 今と似たような仕事とか全滅だろ?」


「まぁそう……」


 求人に関しては俺より大輔の方がよく調べているだろう。何せ仕事もしないでネットサーフィンしている事の方が多いのだ、それでちょくちょく新情報を教えてくれるので助かると言えば助かるので、その辺に関しては何も言わない。と言うより言ったところで何も変わらないのであきらめた。


「かと言って未経験の仕事と言っても、この状況じゃなぁ」


 それもまた事実、何年もこの仕事をやって来たので似たような仕事であれば出来る気もするけれど、今更全く新しい仕事と言うのも楽しそうではあるが、中途採用で会社が求めているのは即戦力であって、何も出来ない素人ではない。


 当然俺達が全く畑違いの分野に就職できる確率は低く、出来るとしたらやばい仕事が大半であろう。


「また化物被害か」


 やばい仕事を想像しているとニュースに速報が流れる。どうやらまた化物の話題の様だが、速報で流れるからにはいつもよりずっと良くない話の様だ。


「その名前も定着したよな」


「元はネット発祥なのに国も正式名称にしてる辺りどうなんだろうな?」


「分かりやすけりゃ何でもいいさ」


「確かに」


 わかりやすい事は大事である。特に部長と課課長に見習ってほしい、わざとじゃないかと思えるほどにネーミングセンスが無く、ファイルの背表紙も妙に長い説明付きの文章にするので一目で何のファイルか分からないのである。


「問題はこいつらの所為で一次産業は丸っと大ダメージ、輸送関係も事故多発、幸いなのは無差別破壊はしてないところか?」


 そんな愚痴を心で吐き出している間にもニュースでは化物けものについて最新情報が流れてくる。どうも北海道で大型の化物が発生した様で、農家の一部で被害が発生し、畑や倉庫がめちゃくちゃになっている。


 こわいな、こんなに大きな牛舎がぐちゃぐちゃになるとかどんだけでかい化物なんだ。



「でも人間見ると襲ってくるらしいぞ? 自衛隊もそれで駆除に出てるんだろ?」


「襲ってこないのもいるらしい、ネット情報だが飼いならしたとか言うやつもいる」


「マジで?」


 温厚な化物も居るのだろうか、テレビでは自衛隊に出動要請が出ているとか言ってるが、あんな被害を出す化物をどう飼いならすと言うのだろうか。


「ほらこの動画」


「え? なにこのパッ〇ンフラ〇ー」


 俺にスマホの画面を向けて突き出して来る大輔。


 地面から近い場所に大きな二枚の葉っぱを揺らし、人間の胴体ほどありそうな太い茎の上に人を丸呑みできそうな頭? 花? ハエトリグサの口みたいなものを揺らす巨大な植物らしき化物の動画、その化物は2メートルくらいであろうか? 隣に麦わら帽子の男性が立っており、ドヤ顔でその化物を撫でている。


 どっからどう見ても……。


「それ以上はいけない。これは食人花だぞ羅糸?」


「あー……それって人を食べるんじゃ?」


「食べるらしい」


「だめじゃん」


 食べたらだめだろ、名前からしても物騒すぎるぞ食人花。


「投稿者曰く、人間が好物と言うわけでは無いらしくてな、美味しいものを食べさせると懐くらしい」


「ええ……」


 いや、それじゃなんで食人花なんて名前つけてるんだよ、たぶん名前つけてるのはネットの世界の住民なんだろうけど、そして次第に世間に浸透して行く、と言うか最近のメディアは率先して広めている様にも感じる。


 しかし、何もしなくても美味しいものを食べさせてもらえるとか羨ましい化物だ。いっそ誰か俺を飼ってくれないだろうか? 紐とか言うらしいけど、養ってもらえるとか最高だよ、どっかの誰かが紐にも才能とか努力が必要なのだと力説してたが俺には解らん。


「今では畑の案山子として活躍してると書いてるが……音信不通になっている」


「え?」


「住んでる場所が山奥で、街との間にあらわれた化物の所為で連絡が付かないし、ネットにも動画をアップしなくなった」


 いやいや、それってどう考えてもあれだろ? 俺が何を言いたのか解ったのであろう大輔は目を泳がせるが、どう考えても答えは一つだ。


「食われた?」


「さぁ?」


 うん、その表情が雄弁に語ってるぞ? ほら、動画についてるコメントにも食べられたんだろうとかいっぱい書かれてるじゃないか、俺は騙されないぞ? 化物危ない危険、何もしてこないなら近付かないのが吉なんだよ。


「どの道、化物を何とかしないと色々やばいって事か」


 かといって化物の所為で実害が出ているのも事実、どうにかしない事には流通が完全に止まってしまって俺らは餓死一直線だ。どうせ国は弱者を助ける気などないだろうし、困った時は自分最優先にするのが人である。まぁ助け合いできても家族や友人の間くらいだろう。


「だな、何かそれ用の法律が決まるらしいぞ? 一部で恩恵使って化物を狩ってる奴らもいるらしいし?」


「ファンタジーだな」


 リアルモンスターハントか、そうしないと生きていけないなら、せざるを得ないんだろうけど、俺にとってはまだまだファンタジーな話である。


「もう世界がファンタジーだからリアルだよ、あと一部の化物は食えるし美味いらしい」


「マジ?」


 確かにファンタジーも実際に体験した瞬間リアルなんだろうけど、あれを……食べる? 動く冷蔵庫とか人間食べた植物を? その話は流石にフェイクを疑うのだが、え? 食べられる様な化物も居るし動画に料理動画も上がっているだと。


 ちょっと気になったから暇があったら調べてみようか、でもグロだと嫌なので体調の良い時に試すとしよう。



 いかがでしたでしょうか?


 人々の生活に侵食してきている化物、果たしてそれは美味なるものか……。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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