四話 『これからのこと』
菜月が今日やっと退院する。
事故が起きた時一時はどうなるかとも思ったが今こうして無事に退院できることがなによりであると思う。
菜月が帰ってきたら盛大に祝おうと思ったが何をすればいいのか具体的に決まっていない。
「さてどうしよか」
などと独り言を呟きながら祝うための準備を考える。
まずは、無難にプレゼントとか渡すのがいいだろうか。
でも、こいうのはケーキとか買ったおいた方がいいのだろうかなどと考えていると日が暮れそうなのでとりあえずケーキを買っておく事にした。
駅から15分ほど歩けば近くにケーキ屋がある。
店に着いてたくさんのケーキが並べてあった。
ホールケーキや季節限定のケーキなど様々あるが確か菜月はショートケーキが好きだと聞いた気がするので、とりあえずどちらでも食べれる夜雨ににショートケーキとモンブランを一つずつ買っておいた。
家まで歩いて帰っているとクリスマスツリーが展示してあった。
そういえば、来週の日曜日がイヴでその次の日がクリスマスだったなと思い出した。
菜月とどこかに行きたいなとふと考えてしまった。
ここ最近菜月のことばかり考えてしまう。
自分でも薄々そうなのではないのかなとも思ったが多分違うのではないのだろうかと思いはじめてきた。
でも退院の日になって菜月が帰ってくることになって、しかもケーキまで買っているものだから俺はもしかすると菜月の事を昔から嫌いではなくて、この気持ちにただ蓋をしていたのかもしれない。
そんなことを考えていると、マンションの前に着いた。
エレベーターに乗り、扉の鍵を開け玄関に入った。
リビングに行き、冷蔵庫を開けて買ってきたケーキを入れた。
それから、椅子に座って菜月の帰りを待とうと思った。
15分後にチャイムが鳴った。
玄関の扉を開けると、立っていたのは菜月だった。
「ただいま浩人」
「おかえり菜月」
そう言って菜月と俺は一緒にリビングに向かい、テーブルがあるところに腰をかけた。
俺は、体の方は大丈夫かと聞くと菜月は「大丈夫」とだけ言った。
「晩飯どうする?」
「んー。カレーが食べたいかな」
菜月がそう言ったので二人でカレーを作ることにした。
一緒に生活し始めてから、こうやって二人で何かをやるということがあまりなく、少し前より関係が進展したような気がする。
カレーを作り終えて、二人で一緒に食べた。
とても美味しかった。
自分たちで作った物を食べるとなんか達成感というか、どことなく嬉しい感じもする。
カレーを食べ終えて俺は、冷蔵庫からケーキを取り出して菜月にどれがいいか聞いてみることにした。
「なにこれ?ケーキ?」
「そう。ケーキ。菜月はどれがいいとかある?」
「んー。ショートケーキにしようかな」
「了解」
「てか、なんでケーキなんか買ってきたの?」
「菜月の退院祝いで買ってきた」
「わざわざありがとう。」
そうして、俺たちはケーキを食べて、食器を洗った。
先に菜月が風呂に入ったので、少しテレビでも見ようとテレビをつけた。
数分後に菜月が上がって、次に俺が入った。
浴槽に浸かりながら、菜月が帰ってきて少し賑やかになったなと思った。
一緒になんかしたりするのが意外にも楽しかった。
風呂に上がってリビングの方を見ると明かりがついていたので、まだ菜月がいるんだなと思い声をかけてみることにした。
「菜月。まだ寝ないのか」
「あ、浩人。私はもうちょっとしたら寝るよ」
「分かった。じゃあ、俺はもう寝るから」
「うん。おやすみ浩人」
「おやすみ菜月」
そう言って俺は自室に行ってベッドに入った。
今日のことを少し考えていたら睡魔に襲われてそのまま寝てしまった。
これからの生活がとても楽しみになってきたなどと、そう考えていた。