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第41話 何度でも言うが、痴女というのは大変遺憾である!

「送るのは、お前の組の教室でいいのか? 移動教室だったら、そこまで送るぞ」

「は、はいぃ! 次の授業はいつもの教室なので、問題ございませんことですわ!」


 構えを取りつつ、常にトールくんを向きながら動く。

 まあ、いつもの構えだとマオとの共通点に気づかれそうなので、なんかとりあえず両手を前に出してるだけになっているが、しないよりましだろう。

 トールくんが、ロナードみたいに闇堕ちしているとは思えないけど、一応同じ勇者パーティーだし、警戒しておかないと。


「……おい。挙動不審を通り越して、普通にキモイぞお前」

「キモ……いえっ! お構いなくですことよ!」


 自分の行動がどちらかというとそっち寄りなのは自覚あったけど……あったけど!

 くっ……ゲームで推の人に言われるとダメージが大きい!


「さっきから、何に緊張してるかしらねえけどよ。まずはその、意味不明な喋り方やめろ。それと、お前と会ったときにやってた、無理に貴族っぽく喋り方もなしだ。女勇者と喋ってるときみたいに、楽に喋れ」

「あ、そういう事ならお言葉に甘え……え? 私って、そんなひどい喋り方でした?」

「ひどくはねえが、うちのあ……オレの知り合いに、立場上、自由に喋る事ができねえヤツがいるから、無理して喋ってるヤツは分かるんだよ。別にオマエはその喋り方しないといけねえってわけじゃねえんだろう? だったら好きに喋れ」


 あ、ユーリさんのことか。

 完璧なレムリアムーブができていると思ってたけど、そういう人がそばにいるならバレちゃうか。


 自分の意思で別の喋り方をする……もしかしたらユーリさんも、そんな私に親近感を感じたから、魔王モードだった私を撃退せずに、気軽に接してくれたのかも。

 ……まあ、距離感は異常に近かったが。


(それにしても……トールくんって、こんな子だっけ?)


 別に、髪型が変わったわけでも、急な成長期で体が大きくなったとかでもない。

 なんとなく、雰囲気というか、とにかく、いつもと違う。


(それに、トールくんが決闘を挑んでこないのも不思議だなぁ)


 トールくんは、一度でも負かすと勝つまで永遠に決闘を挑んでくる。

 精霊の矢発動事件の時、とどめがエミルだったとはいえ、足払いで思いっきり倒してしまったので、執拗に狙われるかと思っていたが……


「なんなんだよ、さっきからジロジロと……心配しなくても、別に決闘挑んだりしねえよ」


 なんと、明確に本人に否定された。

 本当に、誰なんだこの子はと言いたくなるぐらいだ。


「あの……トール先輩。何かあったんですか?」

「何かってなんだよ」

「決闘の事もですが、いつもと雰囲気が違うといいましょうか」

「雰囲気については知らねえが……決闘については、お前にも関係あるから話しとくか」


 足を止めて、私の方に振り返るトールくん。

 そして……


「……この前は、突っかかって悪かったな」


 とんでもない事を言い出した。


「それと、オレが一方的に喧嘩売っただけなのに、決闘って事にしてオレを庇ってくれた事にも礼を……って、うわぁ!」


「トール先輩! 保健室行きましょう、保健室! 人格があれされちゃう系のものとかされちゃってるか、何かとんでもないもの食べちゃってます! あ、ちょっと失礼しますね!」


 そう言いながら、トールくんの腕を取り、体に異変が無いか確認する。


「な、なんなんだよ急に! お、おい! 制服脱がそうとするな!」

「体の異変を調べるためですから! これは医療行為です!」

「そんな医療行為聞いた事ねえよ! 百歩譲って医療行為だとしても、いきなり脱がすんじゃねえ、この痴女!」

「ち、痴女ぉ!? こ、この姿でも……言っときますけどね! 私、医療行為で公衆の面前で脱がされましたけど! あと脱がしてきた人、全部トール先輩の関係者ですけど! 痴女に囲まれて大変ですねぇ、先輩は!」

「オレの知り合いに、痴女は二人しかいね……おい待て。すげえ心配になってきたんだが!

 その関係者の名前、全部教えろ!」

「絶対に教えません! 新たな痴女の襲来に、震えて眠るといいですよ!」


 人の事を痴女、痴女と……!

 魔王モードの恰好ならまただしも、普通の恰好のときに痴女と言われるのは、推しキャラとて納得いかない!

 ていうか、がっかりしました! もう推しやめます! 嘘ですごめんなさい! やっぱりこういう面も含めて、トールくん好きなんで、推しはやめられません!


「……ったく。オマエがこんなヤツとは思わなかったぜ」

「トール先輩が変な事言うからです。ていうか、なんで急に決闘とかやめたんですか?」

「……自分でも分からねえよ」


 頭を掻きながら、バツの悪そうな顔をするトールくん。

 だが、その後はしっかりと強い目でこう言った。


「ただ、何も考えずにケンカしてる暇があったら、もっと自分に向きあって、オレなりの強さってものを突き詰めた方がいいんじゃねえかと思ったんだよ」

「トールくん……」

「おい、好きに喋れとは言ったが、さすがに年下ににくん付けは……なっ!」

「……成長したね、トールくん。なんだか嬉しいよ」


 気が付けば、トールくんの頭を撫でていた。

 弟の成長する姿を見たときの姉の気持ちって、こんな感じなんだろうな。

 まあ、トールくんは弟じゃないし、なんなら年上だけど。


「オ、オマエに育てられた覚えはねえよ!」


 そう言いながら、思いっきり距離を取ってくるトールくん。


「そ、そんな余裕あるなら送る必要はねえな! とにかく、変な奴に襲われないようにちゅいしろ! じゃあな!」


 そして、走り去っていってしまう。

 うう、もうちょい撫でていたかったなぁ。


(ただ、これでトールくんは、現状ではほぼシロ確定って感じかな)


 今思えば、お触り……医療行為は、かなり致命的な隙をさらしたと思う。

 トールくんにとって必殺の間合いに、無防備の私が飛び込んでいたわけだし。

 でも、手を出してこなかった……まあ、今は敵対する気はないだけかもしれないけど、少なくとも、学校で襲われるような事はなさそうだ。


「さて、とりあえず学校生活を楽しみますか!」


 まだ危険は去った訳じゃないけども、今は学校生活を楽しむべく、あと、これ以上護衛無し時間を増やすと、アオイさんに(最近癖になってきた)ゴミを見る目で見られそうなので、足早に教室に向かうのであった。


 ///////////////////////////////


「……くそっ! なんなんだあの女!」


 校内で襲われたのだから、護衛が必要だろうと思って教室までは送るつもりだったが……


「師匠……マオみたいに人の頭を撫でやがって」


 頭を撫でられて動揺し、引き返してきてしまった。

 しかも……


『……成長したね、トールくん。なんだか嬉しいよ』


「……師匠に一番言われたい言葉を、オマエが言うんじゃねえよ」


 師匠に胸を張れるように、ちゃんと強くなる、

 そして、今度会った時は成長した自分を見せられるようにする、そう思ってきた。


「……片方は、半裸で師匠してやるって迫ってくる痴女だし、片方は令嬢かと思ったら、いきなり脱がしてくる痴女だし、なんだってんだ、本当に」


 そういえばあの女、新たな痴女の襲来に、震えて眠るといいとか言ってやがったな。


「……ったく。これ以上、痴女はいらねえが……」


 なんとなく、あいつの手が触れた頭に触れる。

 どこかマオと似ていた、あの温かい手……


「はっ! 何考えてるんだオレは! こういう事をオレにしていいのは師匠と、一応姉貴だけ! 次やったら、あの女は決闘でぶっ飛ばす!」


 そんな事を思いながら、なんとなくアイツとまた会うのを楽しみにしている自分がいた。

久しぶりの更新です(*´▽`*)

実は、かなり大きな、それこそ国民的RPG作ってる会社で、スクリプター的な仕事をしていたんですが、3月で雇い止めになりまして、ずっと就職活動してました。

なんとか次の職場も決まりまして、3月中は有給消化でゆっくりできそうです。

それにしても、実力不足が原因なのは分かってはいますが、3年間働かせてそこで捨てられるのは来るものがありますね( ノД`)

またこうやって更新止まる事があるかもしれませんが、完結だけは絶対にさせたいと思っているので、宜しければ見てやってください<m(__)m>

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