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第29話 カチコミ

「……勝手な行動をして、申し訳ありませんでした」


「後50回は言っとけ」


「……はーい」


 スコールに連行される形で、屋敷に戻ってくる。


 トールくんを家に送るだけでこんなことになるとは……まあ、無事に帰れたから良し!


 とりあえず今は、ラズリーのプリンを楽しむべき!


 そう思いながらドアを開けて屋敷に入り……


「お帰りなさい、レムリア様~! さあ、そのご尊顔を! 私にぃぃぃい!」


「巴投げ!」


「……あああぁぁあああ!」


 ついには屋敷内部にまで侵入するようになったロナードを、全力で放り投げる。


 今日は色々あったけど、ようやくゆっくりできる。


「戻ったわ、ラズリー! 私にラズリーの手作りプリンを……!?」


 そう思った私に、猛烈なプレッシャーが襲い掛かる。


「えっ……!?」


 反射的に後ろに飛ぶが、いつのまにか現れた巨大な『何か』に阻まれた。


「な、なんだこいつら……!」


 私と同じように後ろに飛んでぶつかっていたスコールが、その『何か』に驚いている。


 そこに居たのは、羽根の生えた小さな少女を肩に乗せている、岩の巨人。


 岩の巨人の横には、巨大な火球と、人の形をした水の塊がいて、全員が私を見ていた。


「……逃げろお嬢ちゃん!」


「え、どうして逃げるの?」


「こいつら、まともにやりあって勝てる相手じゃねえ!」


「大丈夫だって。この子たち、いい子なんだから」


「お、おい!」


「精霊の矢のとき姿は見たけど、一応初めましてかな? どうしてこんなところにいるの、畑耕し君」


 そう呼んだ瞬間に、小さな土の人形のような姿になって胸に飛び込んできたので、受け止める。


 そんな畑耕し君に続くように、マッチやランプ替わり、そしてシルフ(なぜかこの子だけ普通の名前らしい)が次々と私に飛び込んでくる。


「みんながここに居るってことは……ひっ!」


 ……さっき感じたプレッシャーが、さらに強くなっているのを感じる。


 屋敷の中にいたであろうそれは、ゆっくりと私に近づき……


「……」


 背後から、無言で私に抱き着いた。


「……もしかして、エミル?」


 顔は見えないが、なんとなく分かる。


「……やっと会えました」


「エミ……いたたたたたた!」


 とんでもない力で抱き締められてるんですけど!


 これ、前からだったら背骨粉砕されている可能性あるんですけど!


「……放っておいたらどっか行っちゃうぐらいなら、このまま持って帰っちゃいましょうか」


「エ、エミル? エミルさん? あの、私ってば状況つかめてないんですけど! ていうか、お腹潰れるんですけど! なんなら吐きそうなんですけどー!」


 ////////////////////////


「……というわけで、レムリア。うちの子になりませんか」


「うん、とりあえず落ち着こうか、エミル」


「大丈夫です。今うちの孤児院は、寄付金だけじゃなくて、私が、対魔王騎士団? みたいなところの所属になったので、お給金のおかげで小金持ちです」


「よーし、少し落ち着きましょうか、エミル」


 とりあえずエミルに解放してもらい、屋敷で話そうということになったが、相変わらずエミルの様子がちょっとおかしい。


「大丈夫です。うちは、やさぐれている子もいますが、根はいい子たちばっかりですよ」


「とりあえず、深呼吸して、落ち着いてみようか、エミル」


 そして、私の横で言うとおりに、一生懸命に深呼吸するエミル。


 本当にそういうところは可愛いなぁと思いながら頭を撫でる。


「どうしてもエミルさんがレムリア様に会いたいと仰ったので、連れて来ました!」


「お礼に、そこのお煎餅をどうぞ」


 そう言いながら、自分にもご褒美をとばかりに見てくるロナードが言ってきたので、とりあえず、適当にご褒美を渡しておく。


 それにしても、街のど真ん中に放り投げるぐらいの気持ちで投げたのに、すぐに屋敷に戻ってくるとは……私の知る、『ヤミヒカ』の攻略対象キャラ、ロナード・シュトロハイムの面影は皆無だが、『聖騎士』の名は伊達じゃない。


「落ち着いた、エミル?」


「はい。というわけで、うちに行きましょうか」


「うん、全然落ち着いてないね」


「それぐらいになさい。当家の主を連れて行くと言うなら、こちらにも考えがあるわ。貴女も早く拒否しなさい」


「あ、はい……」


 たぶん、あの簡易スマホでラズリーから連絡がいったのか、領地視察に行っているはずのアオイさんが、この場を治めようとしてくれる。


 だがエミルは、そんなアオイさんもジト目で見始める。


「……アオイさん。喋り方変わりましたか?」


「主を連れ去ろうとする方に、礼儀は必要ないでしょう?」


「いえ、私に対してではなく、レムリアに対してです。主に対して無礼なのでは?」


「私とレムリアの関係は、そのような一般常識を超えている、ということよ」


 少し睨みつけてくるエミル、そしてなぜか一緒に頷いていたラズリーに、勝ち誇りつつも相手をあざ笑うかのような、完璧な悪役令嬢スマイルをかますアオイさん。


 こういうところ、本当に素敵だ!


 どうとでも捉えられるから誤魔化しにもなる完璧な回答をしつつ、微妙に真実を混ぜているところも含めて素敵すぎる!


「えっと、元々私って敬語苦手だから、私からお願いしたの。」


 かといって、このままだとアオイさんが嫌な人認定されそうなので、フォローしておく。


「なるほど。でしたら、僕にも敬語は必要ないですよ。だって、僕とレムリア様の仲ですから!」


「いや、さすがに学校の先輩にそれは……」


 ていうか、ちょっとキモい。


「……敬語についてはいいです。でも、レムリアを連れて帰るのは諦めません」


「……しつこいわね、貴女も」


 ま、まずい、レムリアさんが懐に手を入れている!


 確実に、魔導銃か、他の何かのヤバい系の武器を取り出そうとしている。


「エ、エミルはどうして、私を連れ帰ろうとしているの?」


 平和が一番、武力解決なんてやめてという意味を込めて、改めて状況を確認しようと聞いてみる。


「……」


「え、あの……」


 無言で私を睨むようにしつつ、顔を近づけてくる。


 そして私の服に触れ……


「えい」


「……は?」


 ……思いっきり下に下ろした。


「……」


 ……肌色だ。


 この世界に来て、もう何回この感想を思っただろうか。


 とにかく私の視界に、肌色が一気に増えるのだ。


「あ……ああ……」


 アオイさんは驚いている。


 ラズリーは顔を紅くして目を背けている。


 ロナードは手を合わせてガン見している。


「……怪我がありませんね。もしかして、下半身ですか? スカートの下も見せてもらいますね」


 そう言いながら、エミルが残りのドレスを脱がせようとした瞬間、私は全力のアポカリプスを床に叩きつけていた。


次回はいよいよ、お約束展開!

一度は書いてみたかった……気合入れねば!w

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