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たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~  作者: Aldith
狂気のサロメが牙をむく
39/52

〔3〕

「ねえ、亜紀。ちゃんと訳を教えて。僕に会えないって言ったのは、これがあったからだよね? 僕が見て、誤解すると思ってたんだよね。だったら、気にする必要、なかったんだよ」



「本当、なの? 本当にこんなのつけられたの、気にしないの?」



「気にしない。それだけ、亜紀が魅力的だってことだから。それよりも、会えないって言ってた理由はこれだよね。じゃあ、会いたくないっていうのは? 僕にすれば、会えないって言われるより会いたくないって言われた方がショックだったんだけどね」




惟の声は柔らかく亜紀の耳に響いていく。だが、彼の言葉に彼女は先日のことを思い出しているのだろう。体がまた固くなっていく。そんな彼女の様子を不思議に思う惟が肩におく手の力を強めるが、それすら振りほどこうとするように彼女は身をよじる。




「亜紀、どうしたの? どうして、逃げようとするの?」



「だって、私、まだ子供だもん。惟には私よりの相応しい人がいるじゃない。あの時、一緒に歩いていた人、綺麗だったもの。私、あんなに綺麗じゃないし、スタイルもよくない。それなのに、一緒にいるのっておかしいし、似合わない。私みたいな子供より……」




亜紀のそんな声が最後まで続けられることはない。なにしろ、惟の唇が重ねられてきたからだ。

突然のことに逃げようとする亜紀だが、しっかりと後頭部を押さえつけられているため逃げることができない。やがてその手がゆっくりと背中から腰へと降りていき、彼女の細い体をしっかりと抱きしめている。


その頃には亜紀も抵抗することを止めているのだろう。その口からはいつの間にか甘い声が漏れ始めている。それと同時に彼女自身も惟の背中に腕を回す。


いつまで続くかわからない長いキスが終わった時、亜紀の足はカクカクと震え、満足に立っていることもできない。完全に息が上がってしまった亜紀は、惟の胸にもたれたままぼんやりとしてしまっている。そんな彼女の姿を満足気にみつめている惟。


先ほどまでは間違いなく亜紀が惟を拒絶していた。しかし、今の二人からは甘い雰囲気しか感じられない。どう見ても濡れ場としか表現できないシーン。それを目にしたことで顔を真っ赤にした拓実が大声を上げてくる。




「た、惟さん……僕の前でそこまでのするの? そりゃ、亜紀ちゃん、完全に蕩けてたけど……でも、見たくなかったってば!」




よもや目の前で見せつけられるとは思ってもいなかったのだろう。拓実の声は遠慮のないものになっていく。だが、惟がそれに応える気配はない。彼は腕の中にいる亜紀に囁きかけるだけ。




「ねえ、亜紀。分かってるの? 僕は亜紀しかみてないよ。今すぐにでも君が欲しい」



「嘘! だって、あの時、女の人と仲良く歩いてたじゃない。あの人、お店にいた人だった。私より、あの人の方がいいんでしょう? だったら、無理しないでよ!」



「亜紀こそ分かってない。あれはあっちが勝手にくっついてきたんだ。僕にすれば迷惑でしかなかったんだ。嘘だと思うなら、ラ・メールのマスターにきいて。あの人はちゃんと知ってるから」




その言葉にも亜紀は頭を振り、信じないというような顔をする。そんな彼女の姿に苛立ちを感じたのだろう。惟はまた彼女の唇をふさいでいる。


彼女の細い体をしっかりと抱きしめ、何度も角度を変えて交わされる口づけ。しかし、それはどちらかというと奪うという表現の方が相応しいだろう。


息をすることも許さないほど激しいそれに、亜紀はついていくことができなくなっている。生理的な苦しさも混じっているのか、うっすらと涙を浮かべ、拒絶するように頭を振っている。そんな彼女をしっかりと抑えつけた惟が、キスを止める気配はない。




「亜紀、愛してるよ。僕の気持ち、ちゃんと受け止めて」




キスの合間に囁かれる甘い言葉に、亜紀は完全に頭が真っ白になってしまっているのだろう。抵抗することも忘れたように、されるがままになっている。そんな二人の姿に拓実の顔がますます赤くなっていくのは当然のことかもしれなかった。




「惟さん! ここ、学校ですよ! それに、一応、僕もいるんですけれども? 絶対に、そのこと忘れているでしょう! 亜紀ちゃん、そこまで蕩けさせてどうしようっていうんです!」




この場はなんとかして現実を認識してもらいたい。そう思う拓実が大声を上げるが、惟に効果があるはずもない。今まで不足していた亜紀を補うかのように交わされるキスの嵐。


もっとも、そのおかげで落ちつきを取り戻したのだろう。先ほどまでの焦ったような様子を感じることができない。しかし、これはヤバい。そう思う拓実の表情が強張っていくが、惟が亜紀を離す気配はさらさらない。


不本意ながらも、妹の濃厚なラブシーンを見せつけられている。そのことに、拓実は苛立ちを抑えることができないようだった。それでも、無駄だと分かってはいても、彼は叫ぶことを止めることができない。




「惟さん、聞いてるんですか! ここの場所を考えてくださいって。惟さんと亜紀ちゃんのこと知ってる人ばかりじゃないんですよ。これって、いたいけな女子高生を襲っている変態って思われても反論できないんですからね!」



「拓実君。それは言いすぎじゃないの? そりゃ、僕もちょっとばかり興奮してしまったことは認めるよ。でも、変態じゃないって」




長いキスをようやくやめた惟は嫌そうな声を出している。その彼の腕の中で亜紀は完全に腰が砕けた状態。激しい行為を終えた後のように息を切らし、彼の胸の中に赤くなった顔をうずめている。そんな彼女に、惟は蕩けるように甘い声をかけてくる。




「ねえ、亜紀。分かってくれた? 好きじゃない相手に、あそこまでのキスしないよ。そのこと、ちゃんと分かってるよね?」



「……惟、私、信用してもいいの?」




震えながらも微かな声で亜紀は応えている。はっきりと彼の口から聞きたくない。だが、聞かないといけない。そんな思いが出させた言葉なのだろう。


甘いキスの余韻で体が震えているが、それだけではないこともわかる。そんな不安も含んだ声に、惟は優しい声で応えるだけ。




「信用して。亜紀のことしか愛してないから。分かるでしょう? 今すぐにでも亜紀のこと欲しいって言ってるの。でも、ここでそれすると拓実君に殺されかねないから、我慢してるの」




惟の言葉は拓実の耳にも届いているのだろう。先ほどとは違った意味で顔を赤くした彼が叫びだそうとしている。そして、亜紀は惟の言葉に顔を赤くしながらも「うん」と応えるだけ。


そんな彼女の姿も目に入ったのだろう。頭をガシガシとかきながら、拓実は仕方がないというような声をだしていた。




「惟さん、分かりましたよ。どうやら、亜紀ちゃんの誤解も解けたようだし? 一応、おめでとうとは言っておきます。もっとも、聞き捨てならないようなこと言ってたような気もしますけどね。とにかく、雅弥は引き留めます。あいつがここに来る前に、帰った方がいいですよ」



「わかったよ、拓実君。忠告ありがとう。ところで、亜紀を連れて行ってもいいかな? 彼女に見せたいものもあるし」




そう言いながらも惟が亜紀を離す気配はない。その姿に拓実は大きくため息をつくことしかできないようだった。




「嫌だっていっても、惟さんは亜紀ちゃんを連れて行くんでしょう? だから、あえて反対はしません。でも、どこに連れて行くかだけは教えてもらえませんか?」



「それ、教えないといけない? 明日は学校、休みでしょう? だから、一緒にいたいって思ってるんだけどね」




どうして、こんな当然ともいえることを教えないといけないのだ。そんな雰囲気が惟の口調からは感じられる。今の彼には、先ほどまでの焦った様子がない。拓実がよく知る自信にあふれた姿。


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