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〔5〕

そんな彼女の反応を惟が見逃すはずもない。それまで以上に強い力で彼女を抱きしめると額にそっとキスを落としている。そのまま、今まで彼女が聞いたことのないような熱っぽい声が、耳に飛び込んでくる。




「そろそろ場所を変えようか。さすがに、これ以上のこと、ここでするのも人目があるし。亜紀も恥ずかしいでしょう?」




その声に潤んだ瞳を上げた亜紀が『惟……』と呟いている。そこに宿る表情がどこか不安気なものになっている。そのことに気がついた彼は、それこそ蕩けるような笑顔を彼女に向けていた。




「そんな顔しない。怖いことなんてしないから。全部、僕に任せておけばいいの。亜紀に最高の時間、プレゼントしてあげる。だから、心配することなんてないんだよ」




そう言うと、惟は亜紀の腕をグイッと掴んでいる。そのままエレベーターの中に押し込まれた彼女に降り注がれるキスの嵐。


最初のうちこそ、触れるだけの優しいものだったはず。だが、繰り返すうちにどんどんと激しくなっていくそれは、亜紀の全てを奪おうとするかのようなもの。


角度を変え、何度も落とされる口づけに彼女の息は上がり、いつのまにか甘い喘ぎ声も上がっている。その甘い声をすくい上げるように重ねられる唇。息をする暇も与えられないことで、彼女の目じりに涙が浮かびかけてくる。


やがて、チーンという涼やかな音が響いたかと思うと、目的の階で止まるエレベーター。しかし、先ほどのキスで完全に腰が砕けてしまった亜紀は動くことができない。そんな彼女の体がフワリと浮かんでいる。


何があったのかとボンヤリとした頭で考えている亜紀の耳に響く、扉が開く音。そして、体が何か柔らかいものに沈み込む感覚。あ、これってベッドの上だ。彼女がそう思った時、上着を脱ぎ、上半身裸になった惟が亜紀の上にのしかかってきた。


このままだとどうなってしまうのか。そのことはさすがの亜紀にも分かるのだろう。とはいえ、思ったよりもしっかりとした胸板の体をみると、いやでも顔が赤くなっていく。そんな彼女の耳元で囁かれる甘い声。




「今夜は僕たちの初めての夜だから。忘れられない夜にしてあげる」



「あ、あの……これから、どうなるの?」



「心配することないの。優しくするから。怖いことなんかないからね」




その言葉と同時に重ねられる唇。そのまま、首筋から鎖骨へとキスの雨は降り注がれる。それと同時にチクリと感じる甘い痛み。今まで感じたことのない痛みに、亜紀の口から声が漏れる。


だが、それがいつもの自分の声とは違うと思ったのだろう。思わず、それ以上の声が漏れるのを抑えようとする亜紀に、惟は『もっと聞かせて』と囁きながら何度も同じ痛みを与えてくる。


体中に繰り返されるキスの嵐。何度も与えられる甘い疼きを伴った痛み。それらに完全に亜紀は翻弄されてしまっている。どうすればいいのか分からない彼女は、惟が与える刺激に甘い声で応えるだけ。




「ゴメン、亜紀。約束、守れそうもない」




どこか熱っぽい掠れたような声が亜紀の耳に飛び込んでくる。それと同時に始まる、今までよりも深いキス。半ば強引に彼女の口を割り侵入してきたものが舌を絡める。最初のうちこそ、拒絶するような姿勢を見せていた亜紀だが、いつのまにかたどたどしい様子で応えていく。




「亜紀、そんな顔して誘ってるの? 本当は我慢するつもりだったよ。でも、君が火をつけたんだ。その責任、取ってちょうだい」




囁かれる熱い囁き。休むことなく与えられるキス。それらが完全に亜紀の頭を蕩かしていくのだろう。今の彼女は何も考えることができずに、惟の首に腕を絡ませるだけ。




「亜紀、愛している。誰よりも君のこと愛している」




何度も耳元で囁かれる言葉は彼女の熱を嫌でも上げていく。愛されていると全身で感じているのだろう。彼女の白い肌がほんのりとピンク色に色づいていく。




「惟にならいい。惟の好きにして」




潤んだ瞳で告げられる言葉。先ほどから与えられる続けている刺激は、確実に亜紀の体を変化させている。今の彼女はちょっとした刺激でも体がビクンと跳ねることを抑えることができない。そんな彼女の耳元で囁かれる『亜紀が欲しい』という甘い声。


それに応えるかのように亜紀の腕が惟の体をしっかりと抱きしめている。そして、消え入りそうな声で、『私も欲しい』と声が紡がれる。


この言葉が惟の理性を吹っ飛ばしたのは間違いない。タガが外れたように、互いの体が重ねられる。『愛している』という言葉と、それに絡みつくような甘い嬌声。それらがいつまでも部屋の中に響いていくだけだった。




◇◆◇◆◇




次の日の朝――



差し込んできた朝日で目を覚ました亜紀は、その場の光景に息を飲んでいた。なにしろ、目の前には整った顔の惟が穏やかな表情で眠っている。それだけではない。彼の腕が自分をしっかりと抱きしめ、離そうとしない。


何があったのだろうかと頭をひねる彼女を襲う体の違和感。それだけではない。朝日の中で晒される素肌のいたるところについている赤い痕。これらは何があったのかということを彼女にハッキリと告げている。




「わ、わたし……」




昨夜のことは後悔していない。それどころか、本当に幸せな気持ちになれたと思っている。そんな思いを教えてくれた相手が隣で眠っている。そのことに、亜紀は思わず顔がほころんでいた。




「惟、まだ眠ってるの?」




こんな無防備な顔をして眠ることがあるのだ。いつも大人の余裕というものしか見せない彼の別の一面を見たと思ったのだろう。亜紀の顔に嬉しそうな表情が浮かんでいる。そのまま、彼の髪に手を伸ばそうとした時、彼女の体はまたベッドの中に沈められていた。




「おはよう、亜紀。何をしようとしていたの?」




その声と同時に降ってくる優しいキス。触れるだけのそれがチュッという軽い音を立てて彼女の唇から離れていく。




「べ、別に何も……それより、離れて。苦しい」




顔を見ると照れくささも出てくるのだろう。顔を赤くしながら、亜紀はそう訴えている。そんな彼女の髪をそっと撫でながら、惟は優しく問いかけてくる。




「あんまり亜紀が可愛いから、途中から加減ができなかった。無理させたよね。痛いところない?」



「う、うん……大丈夫」




口にすることで、否応なく行為のことを思い出したのだろう。先ほどよりも赤くなった顔で、亜紀がそう応えている。そんな彼女の顔を挟んだ惟が極上ともいえる笑顔を向けてくる。




「よかった。亜紀に無理させて嫌われたくなかったしね。もうちょっとしたらお風呂にはいって。その後、約束していた買い物に行こう。いいだろう?」




甘い甘い囁きが、亜紀の中にゆっくりとしみわたっていく。この言葉に頷かないはずがないだろう。そう思う彼女はコクリと頷くと、惟の体を抱きしめている。これで、身も心も一つになった。そんな思いが二人の中にはあるのだろう。ただ、静かに抱き合うことしかできないようだった。


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