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帰って来た播州公書記  作者: 神前成潔
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起きないから、奇跡って言うんですよ

  どうしてこうなった。

「……以上が報告になりまするが……聞いて居られますか?」

「あ、ああ。予想外の報告であるが故、少々面食らっただけだ、問題ない」

「……然様でございますか。しかし、それでは尾張方面に於いて如何なる報を想定して居られましたか」

「……織田信長が今川義元を討ち取る、って一報を期待していたんだけど」

「……然様な事は天地がひっくり返っても起こり得るものでは御座いませぬ。何故に「尾張のうつけ」風情が「海道一の弓取り」を討ち取れるとお思いでございますか。第一、戦場で大名が討ち取られるなど、めったやたらにあることでは御座いませぬ。それに今川家は相続権もない庶家とはいえ一応は足利一門、そもそもが比較の対象にすら成らぬ存在で御座います。……聞いておいででござりまするか」

  ……なんてこった。


  ……前略、平成の皆々様。此方永禄で御座います。正直、先祖といえど想定している宗家の武将ではなく、本物の先祖である駿河守家の嫡子、豊実として生を受けてます。一応、平成の頃に心臓病で死んだのですが、幸いにして気がついたら前世の記憶を持ったまま直接家系に繋がる人物になっておりました。時間の流れ逆行してんじゃねえか、とか人間界なのに半ば修羅道じゃねえか、とかそもそも家系上遡れるだけで雑系じゃねえか、とかツッコミを入れそうになりましたが、まあそれはやむを得ません。とはいえ、何個か問題はあるみたいで……。

  まず一つ目。上で書いたとおり、なんか歴史の流れ変わってます。どうやら桶狭間の戦いは起きなかった、というか、順当に織田信長が負けたらしく、今川義元が尾張を掌握して東美濃には武田信玄が侵入して、ということになっています。……この時点で、歴史の知識は一切役に立たないので織田→豊臣→徳川の生き残り策は何ら意味を成さないことが確定しました。

  次に二つ目、どうやら、この世界、鉄砲が伝来しておらず、故に切支丹も認知されておりません。言ってしまえば、西洋から認知されていない状態であり、一見植民地分捕り合戦に巻き込まれていないので良いように見えますが、裏を返せば技術力とかの底上げが出来ないので脳裏にある秘密兵器も果たして実現できるかどうか……。

  そして三つ目。どうやらこの世界、魔法が使えるらしく、更に言えばその「魔法」、どうやら家柄によって威力が決まっているらしく、認知されている血筋が嫡流であればあるほど、そしてその歴史が長ければ長いほど、強い効力を発揮できるらしく、故に天皇家がきちんと調停機関として成り立つだけの重みが存在するのですな。当然ながら、幕府もまた、きちんと健在。ご主君である山名家なんかも、魔法の属性は扨措き、力価としては相当強い術を行使できるらしく。この世界でも概ね、中国では毛利が拡張しているのですが、それは大江氏の生き残りであることが原因であり、元の世界である元就の深謀遠慮がよりブーストの掛かっている、有り体に言えば非道い状態になっています。

  最後に四つ目。……これが一番頭の痛い問題なんですが……。

「ひとまずそろそろ儀式の準備も並行して行わせて頂きまする。そろそろ、「姫」にお戻り下さいませ」

「ああ、判った。とはいえ、しばらくはこのままでいいだろ?」

「そうは仰いますが……」

  ……なんで俺、女になってんだよ(涙)

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