ショート劇場「お尻を触ってしまった」
しがない進学校の高校生、それが僕だ。
親から勉強しろ、成績を上げろとかプレッシャーをかけられて、心身ともに疲れ果てた僕は、通学中の電車内で魔が差した。
眼の前に立っていた後ろ姿が綺麗な他校の女子高生にムラムラしてしまい、ついスカートの上から彼女のお尻を右手で触ってしまったのだ。
手に伝わる柔らかいお尻の感触に小さな幸福感を得たのは、ほんの一瞬だった。ハッとした顔でコチラを振り向いた女子高生の顔を見て、心が罪悪感と後悔でいっぱいになった。
"ガシッ"
彼女の右手が、僕の右手の手首を力強く掴んだ。
「次の駅で降りましょう。」
ギロリと僕を睨む女子高生。こんな時になんだが、目鼻立ちは整っていて、切れ長の目、服の上からでも分かる豊満な膨らみ、本当に可愛い女の子だ。
そんな可愛い子に痴漢をしてしまい、彼女の人生に汚点を付けてしまったことが大変申し訳無い。
彼女の手に引かれ、彼女と共に次の駅で電車を降りた。
痴漢の現場は彼女以外見ていなかったので、騒ぎにはならなかったが、このまま駅員さんに突き出されたら僕の人生は終わるだろう。目眩と吐き気がいっぺんに来て気分が悪い。
どうして痴漢なんてしてしまったんだろう?・・・後悔しても遅いのだが、とりあえず彼女に謝ろう。
「す、すいませんでした!!魔が差しました!!」
深々と頭を下げたが許されるわけがないことは分かっている。一体どんな罵声を浴びせられるだろう?それが怖くてたまらない。
しかし、彼女が口にした言葉は、僕が思いもしない言葉だった。
「ど、どうでした?」
顔を赤らめて、モジモジしながら彼女はそんな台詞を口にした。
「ど、どうとは?」
「だからその・・・」
そうして放たれる彼女の衝撃発言、3.2.1.0。
「私のお尻どうでした?」
「えっ?えぇええええええ!?」
まさかお尻を触った感想を求めているのか?どういうことなのだ?全く意味がわからない。
「私のお尻駄目でしたか?」
そう言いながら涙目になる女子高生。コレって正直に答えないといけないんだよな??
もう、こうなったらヤケだ正直な感想を彼女に伝えよう。
「柔らかくて、少し弾力があり、手に幸せな感触がありました。素晴らしいお尻だったと思います。」
自分でも何を言っているんだろうと思うが、はたしてコレが彼女の求めた回答だろうか?
「やったーーーーー♪」
どうやらそうだったらしい。ピョンピョンその場を飛んで、喜びをあらわにしている。
僕は言葉を失って口をパクパクとさせることしか出来なかったが、嬉しそうに彼女が喋り始めた。
「あの、私、顔とか胸とか褒められるんです。『顔が可愛いね』とか『胸が大きくて良いね』とか。でも私が一番自信があるのはお尻なんです!!お尻が一番なんです!!」
自分の尻を鷲掴みしながら鼻息荒い女子高生。なるほどこの子ちょっと変な子だ。
「だけど皆は私のお尻を褒めてくれなくて、私悔しくて、夜も眠れなくて、だからトレーニングジムに行って、お尻を重点的に鍛えてお尻磨きしてたんですけど、それでも皆は顔と胸ばかり褒めてきて・・・もう私駄目なのかなって思い始めてたんですけど、そんな時にアナタにお尻触られて、驚いたのと同時に嬉しくなっちゃいました。だから感想聞きたくなって、お急ぎとは思いましたがこの駅に降りてもらった次第です。申し訳ないです。」
ペコリと謝る女子高生。いやいや謝るのはコッチだよ。
「申し訳次いでにライン交換しませんか?またお尻触って欲しいときに連絡しますんで。」
「えっ、いや、そんな。」
「スマホ貸して下さい。はい完了。」
早い、早いよ。えっ?お尻触られたいの?
「それじゃ次の電車に乗りましょうか。あっ、今度は触らないでくださいよ。次はもっと仕上げたお尻触って欲しいですから♪」
「さ、触りませんよ!!」
クスクスといたずらっぽく笑う彼女。痴漢で人生終わるはずが、とんだ知り合い・・・いや尻合いが出来てしまった。