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悪女の娘は囚われる ~そして復讐を誓う~

 目が覚めたら全てが終わっていた。


 私が生まれて来てからずっと暮らしていた塔は燃え、中にいた母は焼死。


 私は何故か父上に認められて正当なる後継者の一員となっていた。


 意味が分からなかった。


 何故愛するお母様が焼死して、それなのに。何故父上は悲しみもせずにむしろ喜ぶのか。

 何故その元凶となった。あの悪魔のような女が泣いてるのか。

 何故そんな女が聖女と讃えられているのか。


 何故だ?


 私が一体何をした。


 私は何であの時塔に火を放った。

 何故火魔法が使えた。


 どうして体の自由が利かないのだ。


 私のせいだ。


 私のせいだ。


 私のせいでお母様は死んだ。


 私のせいだ。


 私があの時火魔法を使わなければ。私があの時すぐに駆けつけていれば。


 私に私にもっと力があれば。


 ・・・・・・・・・


 私は今も動いている。


 私じゃない何かによって私は動かされている。


 思ってもない言葉を吐き、思ってもない行動をとる。


 父上、いや。私のお母様を見捨てたクソ野郎に媚びを売り。その全ての元凶となった。あの女を母と慕い。その息子相手に姉として優しく振舞っている。


 ああ。何だこれは。


 何て幸せそうなんだ。


 あの塔の生活とは違う。


 あのお母様と二人っきりでずっと罵られた生活とは違う。


 豪華な食事。フカフカのベットのある豪華な個室。私に敬意を払う使用人に兵士達。


 ああ。何で私は幸せそうな笑みを浮かべるの。


 その幸せはお母様の屍の上に築かれているもの。


 何でお母様が悪女と罵られて、あのお母様からクソ野郎いいえ。父上を奪い取った本当の悪女が聖女と呼ばれるの。


 そして何であの女は私に優しいの。


 感情がごちゃごちゃだ。


 意味が分からない。


 あの女にしてみれば私は自分を殺そうとした女の娘。

 なのに私を本当の娘の様に良くしてくれる。


 そしてそれを私は受け入れて喜んでいる。


 でも。それは私じゃない。


 何度でも言おう。


 私じゃない。


 私はまるで自分自身の映画を見ているような気分だ。


 映画?


 映画って何だ?


 何で私は私じゃない何か得体のしれない知識を持ってるんだ?


 何故だ?


 そもそもどうして私は体の自由が利かない、どうして自分の思うように体を動かせない。どうして私の体は私の意思に反して勝手に動き。そして幸せになるの?


 私は幸せになっちゃダメな人間だ。


 私は自分の意思とは関係なかったとはいえ。この手でお母様を殺した。


 火魔法を放ち火事を起こして殺した。


 だから私は幸せになっちゃダメな人間だ。


 私は私は私は・・・・・・・・


 私は・・・


 ああ。意識が遠のく。


 なんかフワフワとして気分だ。


 このまま消えてなくなっていいかな。

 そうしたら楽になれるかな。


 私の今背負った罪も全部忘れて。私の今までの辛かった人生を全て忘れて、もう一度真っ新な私として生まれ変われるかな。


 今度は悪女の娘ではなく聖女に。


 そして今度こそ幸せに・・・・・・・


 ・・・・・・・・・


「ああ。でも本当に素晴らしい世界だわ。最初悪女の娘に転生した時はどうしようかと思ったけど。案外上手くいったわね。あそこで塔を燃やしてあの悪女を殺したのは我ながらいい判断だったわ。フフフ。さてここからどうしようかな?私はこの世界の未来を知ってるし。何でも出来ちゃう。やっぱり逆ハーレムを作りましょう~~~~~。フフフ。ハハハ。最高だわ。私はこの世界の主人公ね」






 薄れゆく意識の中声が聞こえた。


 私の声だった。


 だけど私の声じゃない。


 私じゃない何か得体の知れない者の声だ。


 ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。


 ふざけるな~~~~~~~~~~~~~~。


 私の意識が覚醒する。


 さっきまで消えそうで飲まれそうだった意識が明確に蘇る。


 私は私だ。


 私の名前はサン。


 悪女の娘にして本当は優しい優しいお母様の娘。

 ちょっと嫉妬心が強くて独占欲のあるお母様の娘。


 生まれた時から狭い部屋と塔の中で過ごし。使用人からありとあらゆる侮蔑哀れみ軽蔑・様々な悪感情を浴びた者。

 兵士によって時には暴力を振るわれた者。


 それでもめげずに立ち上がった者。


 年齢は6歳。


 だけど字を覚えて本を読み漁り、大人顔負けとは行かなくても普通の6歳児よりも知識は持ってる者。


 さあ、私よ。私の中に潜む者が誰か分からないが覚悟しろ。隙を見計らって私を奪い返してやる。


 私は私だ。


 誰にも決して私は奪わせない。


 そして私は死んだお母様の分まで絶対に幸せになってやる。







 ―――――――――――――――――――――


 補足説明


 悪女の娘ことサンはお母さんのことを愛してます。


 6歳の時は大分狂ってしまいましたが。5歳の時までは自分の娘として心の底から愛情を注ぎ育てていました。


 ただ段々と狂っていったという感じです。

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