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第18話 遅れてきたヒーロー

「ア、ア゛ル゛さん〜!!」


 涙と鼻水まみれになりながら、ラビィはアルデウスに飛びつく。

 当然彼の服はぐしょぐしょになってしまう。そのことにアルデウスは「う゛」と顔を曇らせるが、流石にだからと追っ払ったりはしない。


「はいはい、分かったから落ち着け。そして鼻をかめ」

「う゛え〜! 怖゛かったですわ〜!」

「ああ、分かった……存分にそこで泣け」


 諦めの極地に至った彼は思う存分泣かせた後、落ち着いた彼女を引き離す。

 そして王宮の中を見渡し現状を確認する。


「おーおー好き放題暴れてくれちゃって。綺麗な王宮が台無しだ」

「フン、どうせ死ぬんだ。建物なぞどうでもいいだろう」


 アルデウスの言葉にそう返したのは族長のムハンバ。アルデウスの視線も自然とそちらを向く。


「随分と流暢に喋る豚だな。俺の故郷には『豚に真珠』って言葉があってだな――――まあつまりお前らに宝石都市ここは過ぎた代物ってことだ」

「――――コロす!」


 ムハンバは棍棒を振り上げ、それを振り下ろそうとするがそれより早くアルデウスが動く。


「術式纏刃、魔力の刀身(ルーンソード)


 グラムナイフの刀身に巨大な青い魔力の刃が現れ、アルデウスはそれを素早く振るう。その一撃は棍棒を持ったムハンバの右腕をたやすく両断・・してしまう。


「ナッ――――!」


 飛び散る鮮血と床に落ちる棍棒。

 少し遅れて自分の腕が斬られたのだと認識したムハンバは、痛みと怒りに顔を見にくく歪ませる。


「キサ、マッ。よくも……おおおおおお!」


 咆哮と共にムハンバの斬られた右腕の切断箇所がボコボコと膨れ上がり、再生してしまう。斬られる前より歪な形にはなってしまっているが、きちんと指は五本ある。


「おいおい、まるでトカゲの尻尾だな……」

「ヨクも我が腕を、貴様だけは許さん!」


 ムハンバはそう言うと懐から何やら小さい機械のような物を取り出す。そしてそれに付けられたスイッチを押し、叫ぶ。


転移門ゲートキドウ! 現れよ我が兵士たちよ!」


 するとムハンバの背後の次元が歪み、穴が生じる。そしてその中から十人ほどのバグベアがぞろぞろと現れる。

 険しくなるアルデウスの表情。彼の視線は新しく出てきたバグベアにでなく、それが出て来た転移門ゲートに向いていた。


「おい、その機械。どこで手に入れた?」

「オドろいたか! これは我らが主人より賜った神の道具! これさえあれば貴様らなど……」


「だから誰から貰ったのかって、聞いてるんだよ」


 アルデウスは恐ろしく冷たい声で、そう問い詰めた。

 その迫力は凄まじく、百戦錬磨のムハンバですら思わずたじろぐ程だった。


「ソ、ソンなに知りたいならいいだろう、教えてやる。我らを救い、導いて下さっているのお方は、なんとあの『女神様』だ! ガハハ! 驚いたろう!」

「……やっぱり、か」


 その答えをアルデウスは予測していた。

 バグベアたちの使う転移技術、そしていやらしい戦法の数々。それらはかつて勇者と戦った時に感じたものによく似ていた。


「ったく、こんな世界に来ても、結局てめえなのか。本当に俺たちは因縁深いみたいだな」


 そう吐き捨てたアルデウスはポケットの中から青く輝く小さな魔宝石ジェムを何個か取り出す。そしてそれらに魔力を流し地面に放る。


「術式発動、宝石騎士団ジェムナイツ青耀剣魔騎士スペードのジャック


 すると魔宝石ジェムが光を放ち、青い甲冑騎士へと姿を変える。


 それは魔宝石ジェム版のゴーレムだ。

 兵舎に生えている魔宝石ジェムの中にはかつて宝石騎士ジェムナイトだった者の意志が残っている。そのことを教えてもらった俺は、魔力によって彼らの意志を一時的に蘇らせることに成功した。


「頼んだぞお前ら。故郷を守るため、今一度その力を貸してくれ」


 宝石騎士団ジェムナイツたちは俺の言葉に剣を構えることで応える。これで人数の不利は無しだ。女神ババアの目論見は絶対に潰す!

読んで頂きありがとうございます!

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