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第13話 フェーズ1

『イケッ! 戦士たちよ! 薄汚い獣どもを駆逐するのだ!』


 バグベア族長、ムハンバの命に従い、バグベアの戦士たちが雄叫びを上げながら走り出す。

 その手には剣や槍などの凶悪な武器が握られている。そのほとんどが盗品なのだろう、素材や造りは統一されておらずバラバラである。


 そんな彼らに対し、魔宝石族ジェニマルたちは行軍せず守りを固めていた。

 怖気付いたか。バグベアたちはそう思っていると、突如先頭を走っていたバグベアの集団が爆発・・した。


「ナ、ナンダ!?」


 突然の爆発に困惑するバグベアたち。

 その間も爆発は何度も続き、次々とバグベアがその爆発の前に倒れていく。


 その様子をアルデウスは離れた位置から双眼鏡で眺めていた。


「よっし着弾! いいぞお前ら! もっと撃て!」


 アルデウスの指示に従い、次々と大砲が火を吹く。

 百を超えるその大砲は元々宝石都市にあった物ではなく、アルデウスが魔王国から持ち込んだ(チョロまかした)ものだ。

 使われず、王城で埃を被っていた大砲。武器を管理する『鉄血部隊』の副隊長ガストンと通じているアルデウスにとって、それらを持ち出すのはそれほど難しい話ではなかった。


 そして宝石都市に運び込まれた大砲はアルデウスの手によって魔宝石ジェムを埋め込まれ魔大砲に改造。魔宝石族ジェニマルたちの魔力を装填して放たれることで威力は元の大砲の数倍に膨れ上がっている。


「大砲を撃つだけなら戦士じゃなくても出来る。魔宝石族ジェニマルは魔力が高い奴が多くて助かったぜ」


 だが逆に普通に戦える者は少ない。

 正面衝突すれば負けるのは必然。この戦いは都市に到達するまでにどれだけバグベアを減らすことが出来るかにかかっている。


 それをよく理解していたアルデウスは、遠距離から攻撃出来る手段をいくつも考えていた。


「グ……怯むな! 全軍前進しろ!」


 砲撃されてもバグベアたちは逃げることなく進軍する。

 彼らも近づくことさえ出来れば勝てることは分かっていたからだ。


 しかしそれでも降り注ぐ砲撃の中を身一つで突っ込んで来るその様は、魔宝石族ジェニマルたちに恐怖を与えた。


「アルデウス様! 奴ら突っ込んで来ます……!」

「奴らは頑丈タフだ、直撃しなければ一撃は耐えられる。下手に逃げるくらいだったら正面突破の方が被害は少なくて済む……まあ攻撃が砲撃だけならの話だがな」


 アルデウスがそう言った次の瞬間、先頭を走っていたバグベアが爆発する。

 爆発を受け倒れるバグベアたちを乗り越え、後ろの者たちが今度は先頭に立つが、その者たちも同じように爆発してしまう。


 それを確認したアルデウスは「よし」と頷く。


「どうやら魔導地雷マジックマインはちゃんと発動したみたいだな。これで行軍を遅らせることが出来る」


 あらかじめ出現地点は予測出来ていた。

 なのでアルデウスはそこら一帯に透明な地雷を設置していた。


 しかしいきなり地雷で攻撃したら迂回される恐れがある。なのでそれより早く砲撃し、行軍を早めさせたのだ。

 退くも地獄、攻めるも地獄。混乱したバグベアたちに冷静な判断力は残っていない。アルデウスは戦況を完全に掌握コントロールしていた。


「先頭の移動速度が落ちたおかげでだいぶ団子状態になって来たな。次の手をやる、指揮は任せたぞ」

「え、あ、はい!」


 騎士団長ザックに指揮を任せ、アルデウスは少し下がる。

 そして後ろの方に待機していたそれ(・・)に手を当て、目を覚まさせる。


「出番だぞ。ひとつデカいのを頼む」


 アルデウスの呼びかけに応じ、それの瞳はオレンジ糸に光る。

 そしてだらんとしていた手足に力が入り、ゆっくりと起き上がる。


「おお……」


 周りにいた魔宝石族ジェニマルたちはそれの姿を見てどよめく。


 大きさ十メートル超。土を固めて作られたそのボディには魔宝石ジェムが何個も埋め込まれている。

 かつて『メガ・サイクロプス』という名でアルデウスの前に立ちはだかったその巨大ゴーレムは、アルデウスの手によって魔改造され彼の従順なるしもべとなっていた。


「さて、もう充電は済んでるな? 目標はあのうるせえ奴らが集まってる所だ」


 主人の命に従い、メガ・サイクロプス改め『ギガ・サイクロプス』は、その大きな一つ目の視線の先をバグベアに合わせる。

 そして頭部に溜め込んでいたエネルギーを集め……一気に照射する。


「名付けて魔宝光収束光線ジェムライトレーザー。たっぷりお見舞いしてやれ」


 大気を揺るがす振動と共に放たれる破壊の光線。

 それは一瞬にしてバグベアたちのもとに届き……百体近くのそれを蒸発させた。

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