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第9話 ゴーレムの秘密

「お待たせしました主人様マスター!」

「おお、終わったか」


 子どもたちの相手を終えてゆっくりしていると、クロエが俺のもとに駆け寄って来た。

 どうやら話は終わったみたいだな。


「すみません遅くなってしまって。村長さんの長話が中々終わらなくて……」

「別にいいよ。俺も時間潰しには事欠かなかったからな」

「そ、そうですか?」


 たまには戦い以外に魔法を使うのも悪くないと思えた時間だった。

 おいしい料理が作れる魔法なんかも開発したら面白そうだ、今度考えてみるか。


「ところで村長からなんか有力そうな話は聞けたのか?」

「……正直私たちが知っている以上の情報は聞けませんでした。ゴーレムが暴れた後もまばらに存在するみたいで、あれらがどこから来てどこに帰っているのかは、村のコボルトたちは把握してないそうです」


「そうか。俺は分かったけどな」


「そうですよね、もう分かって……って、ええっ!? どういうことですか!?」


 俺の思いもよらぬ言葉に、クロエは大きな声を出して驚く。

 そこまでいいリアクションをしてくれるとこっちとしても驚かせ甲斐があるってもんだ。


「俺はゴーレムに会ってからずっと考えていたんだ。なんでこんな所にいるんだろうか、ってな。まあ確かに人は滅多に来ないから隠れて何かをするには最適だけど、本当に理由はそれだけなのか気になっていた」

「まあ確かに人目のつかないだけでしたらいくらでも他の場所がありますからね」

「ああ。でもその疑問はこれを見て解決した」


 そう言って俺がクロエに見せたのは、手のひらに収まるサイズのコボルトの人形だった。

 土を焼いて作られたその人形は成功に出来ている。露天で売っていたらそこそこ人気が出るクオリティだ。


「これは……?」

「さっきまでいたコボルトの子どもがくれたんだ。遊んでくれたお礼にってな。この村は焼き物の技術が発達してて子どものコボルトでもこれくらいの物が作れるらしい。その一つを貰ったんだ」

「ほう、私がいない間にそんなことが。こんな短期間で仲良くなるとは流石主人様マスターですね! それでこの人形がなんの情報になるのですか?」

「大事なのは形やクオリティじゃない。よく見てみろ」


 そう言って人形を手渡すとクロエはじろじろとそれを観察し始める。

 しばらく観察したクロエは俺の言いたかったことに気づいたようで「あ!」と大きな声を出す。


「この土、ゴーレムの体に使われていた物とよく似てませんか!?」

「その通り♪」


 実際にゴーレムのボディを触った事がある俺は、この人形を触った瞬間ピンと来たのだ。

 俺の推測が当たっていれば、ゴーレムが何のためにここにいて、どこを拠点にしているのかも分かる。


「ここら一帯にある土は特殊な性質を持っているらしい。熱を加えたり魔力を流すことで簡単に固めることが出来るそうだ」


 魔王国近辺ではそんな特徴の土、聞いた事がない。

 おそらくこの村周辺でしか採れない希少な土、よく今まで知られなかったもんだ。


「この土は形を整えるのも簡単だし、熱や魔力を加えれば加えるほど頑丈になるらしい。この性質を使えばこんな人形を作ったり……戦闘用のゴーレムのボディを作るのも簡単なはずだ」

「なるほど……! この地域の土を利用してゴーレムを生産している者がいるってことですね!」

「その通り。この推理が正しければ、犯人はこの土がよく採れる場所に隠れているはずだ」


 もしあんなゴーレムが大量生産されたら大変だ。

 勇者が生き返るだけでも大変なのに、ゴーレムの軍勢まで敵に回ったら戦況の悪化は避けられない。


「手遅れになる前に。なんとかしなきゃな」

「はい! ぶっ飛ばしてやりましょう!」


 頼もしく返事をしたクロエと共に、俺はその土がたくさん採れるという場所に向かうのだった。

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