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第15話 水色の執行人

「んん……うぅ……」


 ガンガンと痛む頭を左右に揺らしながら、勇者コウキは意識を覚醒させる。

 体のあちこちに鈍い痛みを感じる。まるでずっと寝心地の悪い場所で寝ていたみたいだ。


「ここは……?」


 目を開けると、彼は薄暗い部屋の中にい た。

 全面石造りのそこは、部屋というよりも牢に近い印象を受ける。空気は冷たくてジトッとしており不快感が強い。


 一刻も早くここから出たほうがいい。そう直感した彼は歩き出そうとするが、


「なんだよこれ……!」


 彼は直立した状態で両手両足を枷で壁に繋がれていた。

 そのせいで歩くことはおろか座る事さえ出来なかった。


「ふざけんな! どうなってやがるッ!!」


 必死に手足を動かし脱走を試みるが、枷は強力で抜けることも壊す事も出来なかった。

 ただいたずらに暴れ回り体力を消費すること十数分。焦る彼のもとへ一人の人物が現れる。


 ぬと、ぬと……という粘り気のある足音・・を鳴らしながら。


「あら、目が覚めましたか?」


 最初コウキは女性が来たのかと思った。

 しかしやって来たそれの顔を見て顔を青ざめる。


「ば、化け物ッ! こっちに来んな!」

「化け物とは失礼なお方ですね、私はれっきとした魔族ですよ?」


 そう言って悲しげな仕草を取ったその人物の頭部は、まるで頭からクラゲを被ったような見た目をしていた。

 鼻から下は普通の女性にしか見えない。しかし普通の人間や魔族には髪が生えている部分を、クラゲのような青い半透明のぶよぶよした物が覆っていた。

 顔とそのクラゲの部分の隙間からは触手のような物が何本も垂れ下がっており、それもまるで髪の毛のようになっていた。


 一口に魔族といっても様々な種族がいる。

 彼女も希少種族ではあるが魔族の仲間であった。


「自己紹介させて貰いますね。私はスタアナ族のシェリー・ムンスタジア。よろしくお願いしますね……♪」


 そう言って彼女は触手のように動く髪をうねうねと動かしながら、近くの台の上に置いてある器具をごそごそとイジり始める。


「お、おい! 何してんだてめえ!」

「下準備です。若様が来るまでに準備をするのが私の役目。料理と同じでしっかりとした準備をしないと上手くいきませんからね」

「準備……? 何の話だ!?」


 コウキの問いに、ムンスタジアは不気味な笑みを浮かべながら答える。


「決まっています、拷問ですよ」


 その手と触手に握られているのは大小様々な器具(・・)。刃の付いている物、棒状の物、トゲトゲの付いている物、何に使うのか想像もつかない物、想像したくもない物。


「ひっ……!」


 コウキは今までの人生で感じたことのない恐怖を覚える。

 急いで口の中に仕込んでいる自害の魔法を発動しようとするが……不発に終わる。


「な、何でだよ!? 魔力を流してるのに! なんで発動しないんだよォ!?」

「ふふ、小細工なら若様が既に外しています。あなたはもうここから逃げられません」

「そ、そんな……」


 絶望するコウキ。女神様の作った魔法が解除されるわけがない。

 そう思うが現に彼は死ぬ事ができないでいた。


(ま、解除出来たのは自害する魔法だけで、日数が経つと自動で死んじゃう魔法は解除出来なかったのですけどね。教えてあげる義理はありません)


 今大事なのは心を折ること。

 アルデウスの尋問に繋げるため、彼の友人であるムンスタジアは気合をいれて拷問に臨む。


「それじゃあまずは何して遊びましょうか? ■■? それとも■■■■? ■■■■■■■なんていうのもよろしいでしょうか。好きなものを選んでくださいね」


 ムンスタジアは拷問が好きだ。

 腫れ上がった人間の肉体は、まるで自分の頭部と同じような感触になり、仲間が増えたように感じるから。


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