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2話 居候の三人

次の日受付嬢から冒険者であることを証明する手帳を受け取り眺める、奇麗に輝く紋章が表面についてあり懐に手帳をしまった。

「これで正式な冒険者です!これからバリバリ依頼をこなしていきましょう!」

「あぁ、よろしく頼む所であの三人は?」

「彼女たちならまだ見ていませんね、お約束の時間はもうすぐですよね?」

「あぁ……」

あたりを見回してラートリーは近くの椅子に座った、そして待つこと数十分……。

「いくらなんでも遅すぎる……彼女たちの家は?」

「個人情報を話すわけにはいけないんですが……貴方なら大丈夫でしょうえっーと」

受付嬢がペラペラと紙束をめくり一枚取り出す。

「西区のパン屋の二階を借りていますね」

「ありがとう何かあったかもしれないから見てくるよ」

急ぎ足で集会所を後にした。


・ ・ ・


西区のパン屋の前に来てみるとできたてのパンのいい匂いが風に乗ってきた。

「ここだな……すみませーん」

カランカランとドアベルが鳴ると奥のほうから恰幅のいい年配の女性が小走りでやってくる。

「はいはいあら!騎士団長さんこんな所まで!お買い物ですか?」

「買い物ではないんだすまない、ここに三人組のエルフはいないか?今日会う約束をしていたんだが」

「あーあいつらの事ね?昨日前祝いだがなんだかでどんちゃん騒ぎしてたわよ?起こして来る?」

「あぁここで待っている」

パン屋の女性が階段を登っていく、近くにある椅子に座り店内を見回す店の奥の方で機械が動いているのが見える。

生地を混ぜて型を取り焼いて取り出す、その工程を全自動で行っていた。

「全自動というやつか?誰があんな物を……」

そうこうしているうちに先ほどの店主が戻ってきた。

「さて全員たたき起こしてきたから次は朝ごはんを持って行って、でその後に掃除をあぁ!忙しい!」

「いや私が持っていこう、手伝わせてほしい」

「あら~優しいのね~ならこのパンを部屋の中に置いて行ってちょうだい、文句言われたら私が怒ってるって言えば大丈夫だから!」

「廊下に置くのは駄目なのか?」

「置いとくと踏む時があるのよじゃ頼んだわよ!」

わかったといいつつ紙袋を三つ受け取ると階段を登っていく。


・ ・ ・


上がりきると廊下と扉が3つある、上がったところに一番近い『トゥリン・マナ』と表札が下がっているドアをノックする。

「トゥリン?いるか?カギは……かかっていないな、入るぞ!」

ドアを開け部屋の中に入る。

部屋には大鍋が置いてあり壁には薬のレシピ、本棚には魔術書が乱雑に積まれている。

そのうちの一つを手に取り開いてみる。

「これはかなり熱心に研究されているな、書き込みもなかなか……」

「ちょっと何勝手に読んでるのよ!」

後ろからトゥリンに突然話しかけられて飛び上がりそうになる、後ろを振り向くと不機嫌な表情でトゥリンが立っていた。

「おっとすまない、よく眠れたか?」

「え?あー……えぇ眠れたけど……あっ」

かなり気まずそうな表情をしてラートリーの顔を見る、彼女の顔はじっとトゥリンの顔を見ていた。

「……ごめんなさい」

「……はぁ何に浮かれているか知らないけど仕事前になにやらかしてるんだ」

「うぐ……」

「まあ何も無くてよかった、準備を終わらせて仕事に取り掛かるぞ」

紙袋を机に置いて壁を見回す、びっしりとレシピやらなんやら貼られている。

「これは全部自分で?」

「えぇそうだけど?後で整理しなきゃねー」

「ものすごい量だなこの魔術書もよく調べたものだ」

「当たり前でしょ!大魔術師の私にかかればそんなものお茶の子さいさいよ!」

ふふん!と得意げにポーズを取る。

「魔術師なのか?」

「そうよ、私に唱えられない魔法はないし作れない薬も無し!……レシピがあればだけど」

「なるほどなでそこにあるのが杖か」

部屋の隅にたけかけてある杖を見る。

「えぇ少しの魔力で強力な魔法を唱えられるのよ!」

手にもってよく見てみる、鉄のような素材だが持ってみると以外に軽く先端にはクリスタルがはまっている。

「どこで手に入れたんだ?」

「自分で作ったのよ、武器屋のやつだとすぐに使い物にならなくなるからね」

「なるほど……魔法を唱えている所を見てみたいが今は他のやつにも渡しにいかないと」

じゃあと軽く挨拶して部屋を出ていこうとするとトゥリンが呼び止める。

「ちょっと!……あー飲むって言い出したの私だから!二人に怒らないでよ!」

「わかったよそう心配するな」


・ ・ ・


部屋のドアを開けて廊下にでる、そのままトゥリンの部屋の隣にあるドアに近づいた。

表札には『ブレク・ギア』と書いてあるそのドアをノックすると中から返事が返ってきた。

「ほーい入ってきていいぞー」

ドアを開け中に入ると今まで見たことのない光景が広がっていた。

細い紐のようなものが垂れ下がり鉄のパイプから蒸気が漏れ出す、おおよそパン屋の二階とは思えない景色が広がっていた。

「これはまた……」

「おっすーこっちこっち」

声のしたほうを見るとブレクが床に座って何かを弄っていた。

「おはよう騎士団長クンパンそこらへんに置いといて」

「あぁおはよう……この部屋はなんだ?」

その言葉を聞くや否やグンッと立ち上がり高らかに宣言する。

「ブレク・ギアの研究室へようこそ!君を招き入れられるなんて光栄だね!」

ウキウキとボタンを押していくと周りの機械がゴウンゴウンと動き始める。

「お、おいなんだ!?」

「下にある『パンメイカー』を動かしたのさ、私が開発したんだぞ魔力エネルギーで動く最新式かまどだ!」

「はぁ……あれか」

紙袋を邪魔にならないところに置きあたりを見回す、初めて見るものが目の前で動いているのは不思議な感じがする。

「……」

「機械を見るのは初めてみたいだねー心配しなくていいそこまで危険なものじゃない、ただちょっと他の人間に仕事を任せるようなものだよ団長君」

「あ、あぁ……」

キョロキョロとあたりを見回すと見慣れないものが机に置いてある。

「これはなんだ?ボウガン?」

「あぁそれはね銃って武器、銃弾って呼ばれる物を高速で撃ちだす物さ古代の設計図から再現したんだよねでこっちがその銃弾を作る機械で特殊な配分の合金と火薬を入れてレバーを引けば魔法が発動して―」

「わかったわかった!……どうやら物づくりが得意なんだな」

これ以上話させると無限に続きそうなので急いで制止する。

「ふふーん発明家だもの私にかかればちょちょいさ、もうちょっと話していたんだけど作戦会議までにこいつの調整を済ませないと」

「ちゃんと終わらせてくれよ……」

そういうとブレクはまた機械を弄り始めた、その姿をみてラートリーも部屋を後にした。


・ ・ ・


廊下に出た後最後のドアに近づくそこには『ページャ・リドー』と書いてある表札がかかっていた。

ドアを軽くノックする。

「ページャ?……入るぞ!あぎゃぁ!?」

ドアを開け中に入ると床に落ちている本に躓いて盛大に転んだ。

「いたた……はぁこの部屋は?」

あたりを見回す限りの本壁にも本床にも本、本、本、本……部屋の中は本で溢れ返っていた。

「この部屋も凄いことになってるな……」

本の山を崩さないように慎重に部屋の中に入っていく、時どき本を手に取り表紙を見てみる。

「『正しいジャンプのやり方 私はこの方法で人生の壁を”飛び越えました”』……啓示本とかいうやつか?」

「『僕と金色熊の五日間』絵本か」

「『死体だらけの世界から転移したら今度は殺人鬼の森な件について』うーん娯楽本?」

そのまま部屋の奥に進んでいくとまじまじと本を読んでいるページャがそこにいた。

「……」

「あのページャ?」

「……」

「おいページャ?」

「……」

「ページャ・リドー!」

「……あっ騎士団長さんおはようございます」

本から顔を上げ立ち上がる眼鏡を直しシャーリーの顔を見る。

「……もしかして私本読んでました?」

「かなり集中してたぞパンここに置いておくからな」

本が置かれていない机に紙袋を置く、ページャが本を軽く片付けて椅子に座った。

「よっとパンありがとうございます、ここまで入るの大変ではありませんでしたか?結構前から本棚に入らなくなっちゃって……」

「まあ少しだけ、本が大好きみたいだなそれは?」

ページャが手に持っている本のカバーを指さす。

「これですか?これはですねなんとセットした本を翻訳してくれるんです!一枚の紙から分厚い辞書まで!誕生日に貰ったんですけどこれのおかげで私どの時代どの国の本も読めるんです!」

「そ、そうか……ま、まあほどほどにして時間には来るんだぞ?」

「はいとなるともう片付けはやめにしたほうがいいですね……」

本の山を崩さないように慎重に部屋を出た。


・ ・ ・


「ふぅ……これで全員には配り終わったな、魔法使い、発明家、読書家、それに元騎士団長か……」

どうしたものかと考えながら作戦会議のため下の階に戻っていった。

最後までご覧いただきありがとうございます。

感想評価その他諸々よろしくお願いします。

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