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Ex.2 シヴの手記II
最後の宿主候補が見つかった。
最初にあの歪な存在に実を与えてからもう五十年も経ってしまった。
これで、この私が自らの身に宿す権能は残りひとつとなった。
これだけは、私以外の何者とも親和性を持つことがない。故に、この権能だけは私自身が地に降りてじっくりと育むとしよう。
他の権能の宿主は、自分の居場所を見つけた。古代遺跡、海底洞窟、火山、古城、無人島、旧都市、廃墟、或いは氷河。
あの世界に権能の存在を受け入れられるほどの時空矯正値をもつスポットは数えられるほどしかない。
もしかしたら肩身の狭い場所で一日のほとんどを過ごすことになるのかもしれない。でも、拠点がどこになろうと関係ない。私は、そこに留まっているだけでは権能を育てることができないからだ。
私に残された権能は“超越”ーーその極地へと辿り着くことができれば、私の前に困難が立ち塞がろうとも、それは意味をなさなくなる。
しばらくは、私以外の何者の干渉も許さないこの空間ともお別れだ。
きっとまた、数十年後に……
次からは、第二章の開幕です。
お楽しみに!