第3話 相談室
俺は何が起きているか分からなかった。
え? なんで俺なの?
絶対クラスの人達から変な風に思われているじゃん・・・・
「田神君、やってくれますか?」
俺が何も返事をしないで固まっていると、本間がそう俺に問いかけてきた。
どうする?
ここでやりたくないというのも、変な空気になるし、そもそも閑谷はなんで俺と一緒に学級委員やりたいんだ?
あぁ!! クソ! なんで力が使えないんだ!
ホントいいところないな!この力!
「田神君! 一緒にやらない!? 」
ただ、ここで閑谷と学級委員をやれば力が使えない理由がわかるかもしれない。
やるしかないか・・・・
「俺でよければ、全然かまいませんよ」
「ホントに!? やった!!」
「じゃあ、田神君でいいと思う人は拍手を!」
本間がそういうと今までよりも明らかに小さい音の拍手がおきた。
「では、前に出て意気込みをお願いします。そのあと2人に進行してもらって残りの委員会を決めましょう」
俺は再び重い足取りで前に歩いていき、皆の方を振り向いた。
そして、振り向くと同時に1番前の如何にもスクールカースト上位であろう女子と目が合った。
(こいつが文化祭とか仕切るのかよ。ありえないわ)
・・・・こう言われるのは仕方のないことなのだろう。
俺は人から嫌われやすいんだろうな。
だから、今も昔も俺の周りには敵が多い。
こんな声も小さい、地味な男が文化祭を仕切ってもつまらないものしかできないよな。
とりあえず役員決めを進行して、終わったら学級委員を変えてもらおう。
正真なら多分変わってくれる。
「わからないことばかりですが、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。じゃあ、役員決めの進行をお願いします。」
「はい! 任せてください!」
閑谷はそういうと手際よく役員決めを進行していった。
基本閑谷が進行を進めてくれたので、俺は黒板に名前を書いていくだけだった。
とりあえず、これは乗り越えられそうだな。
閑谷のおかげで、特に揉め事もなく全員の役員を決めることが出来た。
「はい、無事役員を決めることができました。2人ともありがとう。明日から授業が始まっていくので準備を忘れないようにしてください。それと学級委員の2人は連絡があるので放課後、教室に残ってください。じゃあ、HRは以上なので、今日はこれで下校して大丈夫です。」
本間がそう言うと閑谷が号令をかけ、今日の学校は終わった。
連絡ってなんだ?
まぁ、本間に学級委員を辞退することを言うつもりだったから都合はいいか。
皆が帰った後、俺は閑谷と一緒に静まり返った教室で本間を待っていた。
正真には学級委員を代わってほしいことを伝えといた。
あいつはそれを快く承諾してくれた。
俺がまだ人と喋れているのはあいつのおかげだ。
あいつと出会っていなければ、学校に来ていないかもしれない。
それだけ大事な友人だ。
今度あいつの好きなアイドルのグッズでも買ってやろう。
「ごめんねー田神君。勝手に学級委員指名しちゃって。」
俺がボォーッと正真にあげるものを考えていると閑谷が俺に話かけてきた。
「あっいや、全然。なんで俺を指名したの? 特に関りもなかったのに」
俺は思わず聞いてしまった。
いつもなら力を使えばそんなこと聞かなくてもわかるのだが・・・・
「だって、君が仲良くしたいって言ってくれたらじゃん! そんなこと言われたら指名するしかないでしょう! えへへ、ちょっと恥ずかしいな・・・・」
閑谷が顔を赤らめながら、満面の笑顔でそう言うと窓からサァーッと心地よい風が吹いてきた。
そんなどうでもいいこと覚えていたのか。
まあ、どうせ本音は違うのだろう。
「ごめんなさい、お待たせしました・・・・田神君、閑谷さん」
そんな話を閑谷としていると、本間が額に汗を滲ませながら慌てて入ってきた。
「本間先生、話って何ですか?」
「ごめん、その前にちょっと先生に言いたいことあるからいいかな?」
「どうしましたか、田神君?」
せっかく指名してくれた閑谷には悪いけど、俺に無理だ。
「俺、学級委員やっぱりやめます。野原に代わりにやってくれって頼んだら、承諾してくれたので野原と変えてくれませんか? 今日の連絡は俺から伝えておくので」
「え!? 何でよ~~~!!私、あんなに恥ずかしいこと言ったのに学級委員辞めちゃうの~?」
「理由は何ですか?」
「俺みたいな暗い奴だと文化祭は仕切れません。多分みんなも違う奴がいいと思っているし・・・・」
俺が理由を言うと、本間は少し考えていた。
チッ、チッと時計の音だけが聞こえている。
そしてしばらく考えた後に真剣な顔をして俺の方を向き、落ち着いた口調で俺に語り掛けてきた。
「じゃあ、なおさら田神君が学級委員にやってもらいたいです」
「え・・・・?」
俺はてっきり承諾してくれると思っていた。
本間は俺以外に学級委員の適任者がいると考えているはずだと思っていたからだ。
「田神君、君が何を根拠に自分は学級委員が向いてない、文化祭で仕切れないと思っているかは知りませんが、あのまま誰も立候補が出ず、閑谷さんが指名したい人がいなければ、僕は君を選ぶつもりでしたよ」
俺は嘘だと思って本間と目を合わせた。
しかし、全く同じ考えだった・・・・
「なんで・・・・ですか?」
「ふふっ、なんとなくです」
俺がそう言うと本間はなにか知っているような感じで、小悪魔のように微笑んだ。
力を使おうとしたが、目が合わない・・・・
まさか、俺の力のことを知っているのか?
いや、知っているのは俺だけのはずだ。
父親すら俺の力のことを知らない。
「田神君、観念して私と学級委員やろ!」
「でも・・・・」
「田神君、君が学級委員になったらやってもらいたいことがあるのです」
「なんですか?」
俺がそう聞くと、本間はクスッと微笑み、黒板に何かを書き始めた。
「なんだろうね・・・・! ちょっとわくわくするなぁ・・・・!」
閑谷はニコニコしながら俺に言ってきた
俺にこの力が芽生えなかったら、多分好きになっていただろう。
もうお昼時を過ぎ、グゥーッとお腹が鳴りそうな時間になっていた。
「はい、書き終わりました」
本間は黒板に文字を書き終えると、パァン! と勢いよくチョークを置いた。
俺と閑谷は2人で声を合わせて、それを読み上げた。
「「2年C組、お悩み相談室・・・・?」」