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ウソでありふれた世界でお悩み相談室!  作者: ココロセ サトシ
19/98

第18話 認識

 1週間前から始まった正真、日菜、俺の3人での勉強会。

 それのおかげで2年1学期中間テストは30位ほど順位を伸ばし、幕を閉じた。

 あの日以来、正真とは・・・・特に何もない。

 いや、何もないというのは嘘だ。

 少しの不安と疑念がある。

 それは正真が俺に何かを隠しているということだ。

 父さんと面識はないと思っていたが、2人は俺の知らないところで会っていた。

 それに勉強会の初日の会話――――


「・・・・見つかりましたか?」


 ――――2人は何か探しているのか?

 確かにとても気になる。

 でもなぜだろうか、多分2人は俺に何か嘘をついているけど、別に怒っていない。

 前の俺なら、2人を避けるようになっていたと思う。

 でも、今回はそんな気持ちにはなっていない。

 俺の中でも何か少しずつ変わってきているのだろうか・・・・


「じゃあ、来週までに校外学習の班を決めておいてください。田神君、号令を。田神君?」


「え、あ、はい。きりーつ」


 俺が頬杖をつきながら、ぼんやりしているといつの間に帰りのHRが終わっていた。

 何にも聞いてなかった・・・・


「ねぇ! 一緒の班になろうよ!」


「いいよ~どこ行こっか~」


「やっぱり、誘いに来たか~」


 HRが終わるといつもならすぐにみんな教室から出ていくのだが、今日は教室に残る生徒がやけに多い気がする。

 みんな何やっているんだ??


「信人、もしかして余っているのかぁ~寂しい奴め! にしし!」


 俺は何が起こっているかわからないでいると悩みの元凶、正真がやってきた。


「なんだ、急に人を小ばかにしたような笑みを浮かべて・・・・みんな何してるんだ?」


「お前、話聞いてなかったの!? 再来週は校外学習だよ? そりゃ、こんなに楽しみにしてない人誘われないか~~はぁ~」


 正真は何もわかっていない俺を見て呆れていた。

 なんだ校外学習の班を今決めているのか。


「正真、安心しろ。1年の時も余ったから、別に苦じゃない。それに当日休むし」


 どうせ、俺は邪魔者扱いされるだけだから、行っても仕方ないしな・・・・


「な、なんだと~~!? この俺が一緒の班になってやると言っているのにぃ~!?」


 俺が卑屈めいたことを言うと正真から思わぬ言葉が飛んできた。


「え、お前、いつもハエみたいにお前にまとわりついている奴らと一緒に行くんじゃないのか?」


「お前、それだと俺が汚物みたいになるじゃないか・・・・あいつらは俺と誰が一緒に行くかで揉めてたから、他に一緒に回る奴いるって言って抜けたきたんだよ」


 なるほどなぁ~人気者は辛いな・・・・

 別になりたいとは思わないけど。


「どうよ、この俺の英断!!」


 正真は自信満々にまるでなんでもこなす秘書のように自分の手で顎をクイッと上げた。


「わーすごーい、きゃーすてきー」


「すごい棒読みだね・・・・じゃああと2人か、3人だね、誰にする?」


 誰にすると言われても俺がいる時点で誰も来ねぇよ・・・・

 正真が誘えば、もしかしたら誰か来るかもしれないけど・・・・


「任せるよ。俺、このクラスで話す奴ほぼいなし」


「うーん、どうしようか・・・・あ、じゃあ!」


 正真は手の平にポンッと手を当てて、2人で向かい合って座っている女子の方に向かった。

 あいつ、まさか・・・・!


「閑谷さん! 岸間さん! 班員もう決まっちゃった?」


「いや、まだだよ! 私達もなかなか決まんなくて・・・・えへへ・・・・」


 正真はあろうことか、閑谷を誘ったのだ。

 別に嫌じゃないけど・・・・他は男子だけとか、女子だけなのに、俺達だけ混合にしたら白い目で見られるじゃないのか?


「ホントに!? もしよかったら俺達と同じ班にならない??」


「え、全然いいよ! むしろこっちからお願いしたいよ! ありがとうー! 野原君!!」


 閑谷と正真お互いに両手で握手をして、ブンブン上下に振っていた。


「ちなみに日菜ちゃんもいるよ!」


「まじか! やったね!」


 終わった・・・・

 周りからどんな風に思われるか想像するだけで恐ろしいな・・・・


「な、なぁ! 男女混合でいいのか? 他の人達は同性同士で組んでるぞ・・・・」


 俺は正真達が盛り上がっているところに釘を刺した。

 それを聞くと皆は沈黙した。

 そして、しばらくすると閑谷が口を開いた。


「え、いいでしょ別に」


 閑谷は「何を言っとるんだ、こいつは」という顔をして俺を見る。


「いや、なんか変な目で見られているぞ。みんなに・・・・」


 俺は気づいた。

 周りを見回すと、周囲にいた女子が冷めた目で俺達を見ていることに。


「はぁ~なるほどね~」


 閑谷は俺が何を思っているか察すると俺の肩に手を添えて、周囲に聞こえるように話し始めた。


「あはは! 信人君! なに気にしてんのぉ~! 旅はどこに行くかより、誰と行くかが重要でしょ! 私のこと嫌いって思っている人達と行っても楽しくないよ! 私は信人君とか仲いい人達と行きたい! うんうん」


 俺は閑谷の言葉を聞いて驚いていた。

 え? 閑谷の事が嫌いな奴なんているのか?

 まず、男ならいないと思うが・・・・

 俺は気になって俺達を見ている周囲の女子と目を合わせた。


(あの女・・・・ちょっと可愛いからって調子乗ってるわ)


(正真君に色香振りまいて・・・・やらしい・・・・)


 俺はこの時初めて気づく。

 閑谷の事を悪く言う奴がいるんだと・・・・

 赤柳みたいに純粋に綺麗だって思う奴だけじゃないんだ・・・・

 こいつは多分それに気付いていて、それでもこんなに楽しそうに毎日笑顔でいるのか・・・・

 俺は純粋に閑谷をかっこいいと思ってしまった。


「そうだな、みんなで行くか・・・・!」


 俺はちょっと恥ずかしくて、俯いた。


「じゃあ、行くところ決めますか!」


 正真がそう言うと皆で周囲の机をくっつけて話し始めた。


「信人君も座りなよ!」


「お、おう」 


 俺は昔閉じ込めた部分が少しだけ顔を出したのを認識した。


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