第12話 学級委員会議
四月も終わり、今は5月。
このクラスで過ごして早1か月が経っていた。
相変わらず、暇なのは変わりないが学級委員の仕事も欠かさず行っている。
学級委員の仕事はお悩み相談以外にもいろいろある。
HR、授業時の号令、学級日誌の記入などなどだ。
今は授業間の10分休憩の時間で、俺は今学級日誌を書いている。
これだけでも十分めんどくさいのだが、中でも1番そうなのが学級委員会議だ。
この会議は月1で行われ、生徒会からの知らせや各委員会からの連絡を聞く。
そしてそれをクラスの皆に伝える。
ただそれだけだ。
こんな紙に書いて渡せばいいものをわざわざ会議で連絡するという生徒会の奴らは頭が悪いのか、それともよっぽど自分たちの威厳を示したいのか・・・・
そんなことさえも思ってしまうほどめんどくさい・・・・
そして、今日の放課後今年2回目の学級委員会議がある。
行きたくねぇ・・・・
できることならサボりたい。
ただ、もし休むなら代理のやつを出さないといけないんだよな・・・・
正真に頼んでみるか・・・・
俺は椅子から重い腰を上げ、正真の所へ向かった。
正真はクラスの人気者で周りにはいつも人がいた。
この輪の中に飛び込むのはきついな・・・・
けど、行くしかないか。
帰りのHRが終わった時でもいいが、その時は正真に予定ができている可能性がある・・・・まぁもうすでにできているかもだけど・・・・
俺は勇気を振り絞り、正真に声をかけることにした。
「せ、正真! ちょっと、いいか・・・・?」
俺が正真に声をかけるなり、正真を囲っていた5人がこちらを見た。
俺は目を合わさないように神経を尖らせた。
「お! 信人! 俺になんの用かね?」
正真は俺の努力など知らずに、まるで王様のような態度でそう言ってきた。
「なに、正真君のその態度~」
「あはは! 超ウケる!」
「ははっ! 正真は頭おかしいな~」
周りにいる奴らは正真をバカにして笑っていた。
特に俺に対して、何かを直接言ってきたりはしない。
「えっ・・・・と・・・・」
ちょっとここだと言いにくいな・・・・
正真を連れ出したいけど・・・・
俺は正真を囲っていた5人が今俺をどう思っているか気になって目を合わせてしまった。
俺はバカだと思う。
目を合わせないと決めたものをすぐ破ってしまう。
結局自分が傷つくと知っていながら。
(なんだよ、こいつ急に・・・・)
(ホント、こいつが正真君と知り合いなのが信じられないわ・・・・)
「ごめん! やっぱり何でもない!」
「おう! そうか! なんかあったら気にせず言えよ~」
やっぱりやめておこう・・・・
自分でやると決めたんだし、ズルはいけないな。
俺はそう自分を納得させ、自分の席に戻った。
まだ直接言われた方がいいな・・・・
傷つくけどまだましな気がする・・・・
そして放課後の時間。
昼休みの時に正真にちゃっかりお願いしてみたが、やはり予定が埋まっていた。
もう観念して、ちゃんと出席しよう。
閑谷と一緒に行くか。
俺はそう思い、閑谷を探したが教室にいない。
どこ行った? トイレか?
「あの~田神さん・・・・ですか・・・・?」
俺がそんなデリカシーもないことを考えていると、同じクラスであろう1人の女子生徒が話しかけてきた。
誰だっけこの人・・・・?
「あ、戸惑わせちゃってごめんなさい! 私、出席番号14番の岸間まりです・・・・」
あ、岸間さんか。
クラスの人の顔をまじまじと見ないから顔と名前が一致しないな。
というかなんの用だ?
岸間さんと関わる機会なんてなかったけど・・・・
「あの・・・・今日閑谷さんの代わりに学級委員会議に出るのですが・・・・」
「え? 今日閑谷出席しないの?」
あいつ・・・・サボったのか・・・・?
いや、サボる奴には見えないし・・・・
俺みたいに仕事を他人に押し付けようとする奴でもないだろうけど・・・・
「はい、ちょっと家の用事で帰らなくちゃいけないらしくて・・・・それで頼まれたので了承しました・・・・」
これは本当なのか?
中学の部活でサボる奴らの大半は、家の用事あるいは親戚の葬式とか言ってたな・・・・
どんだけ、親戚死ぬんだよとか思ってたけど・・・・
まぁいいか。あいつがいないところで特に支障もないし。
「わかりました。じゃあ、もうすぐ集合時間になりそうなんで行きましょうか」
「はい・・・・」
俺と岸間さんは学級委員会議が行われる3年D組に向かった。
教室にたどり着くと、まだ中では3年D組のHRが行われていたため、俺と岸間さんは特に喋ることもなく廊下で静かに待っていた。
「あれ? 岸間さんじゃん? こんなところで何してるの?」
すると、岸間さんの友達と思われる人が声をかけてきた。
その子はいかにも学園生活エンジョイしてますよ感満載だった。
短いスカート丈、化粧、ネイル・・・・
「学級委員会議に代理で出ることになって・・・・」
「あ、そうなんだ! それは災難だね~私も学級委員押し付けられてさ~ホント最悪だよ~めんどくさいよね~」
「う、うん・・・・そうだね・・・・」
これは仲がいい感じではないな・・・・
多分、1年の時に同じクラスとかだったぐらいの仲なのだろう
「放課後どこ行くー?」
廊下で待たされること30分弱。
ようやくD組のHRが終わった。
「あ、終わったみたいだね~じゃあ、お互い頑張ろう!」
そういうとその女子は先に教室に入っていった。
「今の人、岸間さんの知り合い?」
「はい、鏡麗奈さん。1年の時同じクラスでした・・・誰に対しても優しくて、いい人だとは思うんですけど・・・」
「けど?」
「あ、いや、なんでもないです・・・」
少し訳ありみたいな感じだな・・・・
まぁ今日は話聞くだけだし、特に何も起きないだろう。
そして、俺と岸間さんは鏡の後に続き教室に入った。
それから続々と会議に参加する人が集まり、しばらくして学級委員会議が始まった。
「それでは第2回、学級委員会議を始めます。それでは各委員会からの報告。各委員長お願いします。」
「はい、まず保健委員会からです。・・・・・・・・」
その後10個の委員会からの連絡、報告が続いた。
そして、ようやく各委員会の連絡が終わったと思ったら、次は生徒会の番だ。
最悪だ・・・・今日は早く帰って新しいゲームをやろうとしていたのに・・・・
「それでは我々生徒会からの連絡です。昨日のHRの際に担任の先生から連絡していただいたので、皆さんもご存じだとは思いますが、5月15日に生徒総会があります。」
生徒総会・・・・? そんなのあるのか・・・・多分説明されてるとき寝てたな。
「その生徒総会で、会の進行をしてもらう議長を学級委員の人達にやってもらおうと思います。」
議長か・・・・また面倒ごとが出てきたな・・・・
まぁ多分こういう目立つことをやりたい奴がやるだろう。
というか生徒総会ってなんだっけ?
「すいません! 生徒総会とは何を具体的にするのでしょうか?」
俺がそう思っていると偶然、1年生が同じような質問をしていた。
少年ナイス・・・・!
「生徒総会は生徒の皆さんに生徒会が扱ったお金の会計報告をしたり、事前に集めた生徒から生徒会への質問、要望に応える会です。その議長を学級委員の方にしてもらいたいのです」
「なるほど、ありがとうございます!」
少年は深々と頭を下げ、席についた。
「では、やってくれる方いますかー?」
「「・・・・・」」
誰も手を上げない。
さすがに目立ちたがりな奴もやらないか・・・・面倒くさいもんな。
このめんどくさそうな仕事をやろうとする奴はおらず、誰も立候補するものが現れずに15分経っていた。
「このままだと埒が明かないので、どなたかを推薦したい方いますか?」
生徒会の奴がそう言うと1人の手が上がった。
「では・・・え~っと・・・」
「2年E組の鏡です!」
先ほど岸間さんと話していた鏡が手をあげていた。
「鏡さん。では推薦したい方のお名前をお願いします。」
「はい、私が推薦したい方は・・・・」
俺はなんとなく鏡が誰を推薦するかわかった。
あいつが推薦するのは・・・・
「岸間さんです!」
岸間さんだ・・・・