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3-31 ゆったりしつもも積み重なる物もある

‥‥‥衝撃的な前世の縁のつながりも感じつつも一応、前世の妹ことリリは今世では違う寮にいるようで、授業内で早々会う事もない。


 まぁ、今は互に他人同士のような者だし、そこまで関わる事もないけど…‥天涯孤独って訳でもないし、安心感はあるだろう。時々ベイドゥ経由で簡易的に手紙をやり取りしたり、話す機会があれば話す感じだ。



 でも、そんな事よりも、今はこの状況をどうしたものか。


「…‥‥中等部になれば、この時期に多くなるって話は聞いていたけど、こうして目にすると悩む人が多くなるのも、納得だな」

【すごい、手紙の山、キュル】


 目の前には、寮の自室に届けられた手紙の山が積みあがっていた。下手すると崩れるなこれ‥‥‥。




 学園の寮に届く手紙に関しては色々とあるのだが、この夏季休暇の頃合いになると、中等部の方では増加傾向にあるらしい。


 と言うのも、中等部の学年は5~7年生‥‥大体14~16歳ごろであり、この時期は何かと一人立ちを目指す人が多くなる。


 領地の次期当主であればその経営を学び、平民であれば将来についてより深く考え込んだりと、人や身分によっては様々だ。


 その中で、貴族の子共たちの方ではこのような手紙の山と言うべきか‥‥‥‥前世で言うところの婚活パーティのお誘いのような招待状が届くのである。


 まぁ、初等部だとまだ年齢的には幼いし、高等部では決まっている人も多くなるので、結果として中等部の時期に増加するようだが…‥‥何かとこれはこれで問題になったりする。


「他の同級生たちも、この山を見てるようだったし、悩んでいたなぁ…‥‥」


 貴族の世界では政略的な意味合いの婚姻話が出たりするとはいえ、学生であるとやはり自由恋愛などに目を向けたい人も多い。


 でも、中には親からの推薦など含まれるそうで断りづらいのもあるらしく、悩む者は良く悩む。



‥‥‥まぁ、僕の場合はその親自体が消されているけどね。いたらそれはそれで面倒だったかもしれない。


 とは言え、婚活パーティのようなものでもあるが、その分多くの貴族が参加するのもあり、相手が決まっていても情報収集や繋がりなどを求めて出る人もいるらしい。


 あるけどそれをどう生かすかは、人次第なところもあるのだが…‥‥個人的には、まだ早い気がするんだよなぁ。



【キュル、内容…‥‥婚活、お見合い推奨、悪の組織結成、縁談、独身の会‥‥‥】

「一部おかしくないか?」


 早いとか言う以前に、変なの混ざってない?


「確か、学園の手紙に関しては怪しいのは監査されたりするはずなんだけど…‥‥確かに変なの、混ざっているな」


 ハクロが声に出して内容を言っていたから気が付いたが、変なのがそれなりに混ざっていた。


 おかしいなぁ、こういう変な類は混ざらないとは思うのだが…‥‥何処でどうなっているんだ?


 奇妙に思ったので、学園の手紙に関して扱う場所へ出向いて見れば…‥‥そこはそこで、地獄の光景が広がっていた。



「どわわわぁぁぁぁ!!おいつかねぇぇぇ!!」

「どこの馬鹿だ、ここまで大量に送ってくるやつは!!」

「へるぷみー!!手紙に、手紙の、手紙が、津波になってくるぞぉぉぉ!!」



「…‥‥よし、帰ろう」

【キュル、そうしたほうがいいかも】


 時期が時期だけに、人手は不足するのだろう。


 そして量もかなり多くなり、何かと回り切らないのだろう。


 そう、たった今見た光景が、例え手紙で室内が全部埋まっていて、入れない状況になっていたとしても、僕らが関われるようなことではない。


 手紙での津波なんて初めて見た気がするけど、流石帝国と言うべきか、領地が多い分貴族もそれなりにいるせいで、色々な招待状なども多く出ているのかもしれない。


 そう思い、僕らは仲良く回れ右をして何も見なかったことにして部屋に戻るのであった。やってくれている職員方には、心の中で手を合わせて感謝しておこう。あれなら、変なのが紛れてもおかしくはないからね‥‥‥ご苦労様です。


【‥‥‥でも、アルス、お見合い、縁談、いらないよね?これ、写真内封付きだけど…‥】

「そもそも僕男爵家だし、そう良いのはないとは思うからな‥‥‥‥と言うか、凄まじい行き遅れってレベルのも混ざっているのもどうにかしてほしい」

【うん、そうしたほうがいいかも。アルスの側、私がいるし、他いらない、キュル】


 そうそう、ハクロがいるからいらないってのもあるし…‥‥そもそも男爵家に価値があるって見る人はいないだろうしね。


 将来的には侯爵家にもなるようだけど、何かと自由でいたいというか、のんびりと暮らせるだけで良いからね‥‥‥変な関係を持たれそうなところは何とか避けたい。


「…‥‥そう言えば、夏の方で皇女様から遊びに来ないかって打診も来ていたっけ。ハクロの故郷らしいダンジョンが近くにあるようだし、夏季休暇はそこへ向かって見ようか」

【それもいいかも。私のかつて、生まれ育った場所らしいところ、今どうなっているのか気になる!アルスの妹、その横の執事のベイドゥにも、一緒に来ないか聞いてみる!】


 とにもかくにも、中等部となった今年の夏季休暇の予定は、ハクロの故郷にもなるらしいダンジョン都市への旅行になりそうであった。


 心の傷は深かったけど、癒えてきているようだし‥‥‥‥この機会に、ちょっとだけでも聞けたらいいかもね。彼女の昔の、大切な群れでの話とかね。


 後はまぁ、こういう婚活系は本当にまだ後でいいかな。乗り気でもないし、ハクロがいるだけでもいいからね。‥‥‥うん、彼女の方が大事だもん。


 そう思いながらも、どういう準備をしたほうが良いのかなど、ハクロと一緒に話し合うのであった‥‥‥









‥‥‥アルスたちが夏季休暇の旅行の予定を立てている丁度その頃。


 とある場所では、実験が行われていた。


 それはどこの国でもやっているような、新しい魔道具の開発実験。


 モンスターが体内に持つ魔石を糧にして動き出し、その効果を見せようとしているのだ。


 とは言え、他の国々と異なるのであれば、堂々と表に出せないような類であり…‥‥そしてその実験は今、失敗に終わった。



「…‥‥駄目ですな。魔石が焼け付きました」

「こちらも、砕け散って…‥‥やはり、普通のモンスターが持つ類では耐えれないようです」

「うわぁ、超高額な魔石も溶けて…‥‥これを得るためにも、どれだけの工作と犠牲になった戦闘員がいたのだと‥‥‥」


 実験が失敗し、動力源にしていた魔石が駄目になっている光景を見て、この実験の関係者たちはがっくりと膝をついて落ち込む。


 無理もないだろう。心血を注いで作り上げた魔道具なのに、それを動かすための魔石がないからだ。


 従来の方法では稼働できないというのもあるだろうが、それでもここまで用意していた魔石の山が消え失せてしまうのは、かなり心に来るものがある。


「むぅ、ダンジョンでわざと異常発生をさせて、狩るついでに回収していたが…‥‥それでも駄目だったか」

「こちらも、勝手に増殖していた群れを狩りまくって得たやつでも、駄目になったな。見ろ、数年前に得たギガマザータラテクトの魔石も駄目になったぞ」

「話を聞きつけ、便乗してきた様々な組織からの資金も得つつ、魔石をバレないように集めてきたが‥‥‥これでも駄目であるならば、もはやこの魔道具を使うプロジェクトは凍結したほうが良いのかもな」


‥‥‥そもそも、この魔道具は何年もかけて稼働できるようにしてきたとはいえ、結局は無駄に終わっていた。


 ここにいる者たちでも、当初から不可能に近いと思っていたが、ここまでくると絶対にできないと思えてしまう。


 とは言え…‥‥これで不可能と区切りをつけるわけにもいかない。


 どうにかしなければ、ここにいる全員の首が物理的に切られるのが目に見えており、逃げようにも逃げる事は出来ないだろう。


「仕方がない、また時間をかけて集めるしかないか…‥‥」

「面倒だが、一応資金は出るからな‥‥‥やろうと思えばできてしまうか」

「だが、今回の結果でも分かったが…‥‥普通のモンスターの魔石では、そもそも話にならん。群れを率いるようなボスの強い魔石でも駄目だからな」


 用いる魔石は、ただの魔石ではダメだろう。


 質の良いもの、形が綺麗なもの、大きさが素晴らしいもの…‥‥様々な高価な魔石に該当する類でも全く意味を成し得なかった。


 この魔道具を無事に稼働させるには、それこそ普通ではないようなモンスターの魔石が必要になるだろう。


「となると、もはやなりふり構わぬような…‥‥ダンジョンでの最下層、ダンジョンマスターの類になるやつの魔石も得なければならないか。あれは入手が非常に困難であり、ダンジョンを潰す真似になるが‥‥‥」

「その他にも、確認されている、手出しができないような輩も狙うしかないか。太古の昔から存在するも龍や、大海原を彷徨う怪魚、闇夜に潜む大悪霊、破滅を呼ぶ魔狼に、虚構の国滅ぼし‥‥‥‥まだまだあるが、いずれも入手がほぼ困難に近いか」

「後はそうだな…‥‥最近、各国のモンスター研究所が活発化しているが、それぞれで大切に保存されるような研究対象のモンスターも、狙えるところから狙っていくか」


 色々と話し合い、希望を見出しては見るのだが、できっこないと思ってしまう。


 と言うか、思いつく限り口に出すだけでも、人の手の及ばないような類などもそれなりにいるのかと思うと、頭が痛くなりそうだ。


「何にしても、なりふり構えぬが…‥‥果たして、これらを集められるだろうか?」

「出来そうなところから、多分上の奴はやれと実行組に言うのだろうが‥‥‥ここまでの無茶ぶりに、果たしてどの程度ついていけるのやら」

「ああ、もしも神がいるならば、何でこんな悪魔の発明と言うべき魔道具を思いついたやつがいるのかと問いただしたいぞ‥‥‥」


 はぁぁっと深い溜息を吐きつつ、肩を落とす者たち。


 前途多難というか、絶望の断崖絶壁しか見えない現状に、誰も彼もが頭を抱える。


 どこの世界でも、苦労人は溢れ出しているようなのであった‥‥‥‥


「‥‥‥そういえば魔石でふと思ったが、帝国の方にも気になるモンスターがいたな?」

「ああ、そう言えばあのすっごい大国の方に公認としてなっているらしいが…‥‥皇帝陛下のお墨付きと言うの合って、下手に手をかけるとそれこそヤヴァイぞ?」

「そもそも聞いた話では、人になろうとしているような変化をしており‥‥‥魔石も期待はできん」

「いや、そういう類だからこそ、その秘めたる魔石も比較にはならないような…‥‥」




【‥‥‥ふぇくち!!】

「あれ、ハクロくしゃみした?」

【んー、なんかぞわっと、嫌な感じが…‥‥悪寒?寒くなりそう、アルス、くっ付かせてー!】

「うわっと!!別に良いけど、今は季節的にはだいぶ暑いはずだよね…‥‥噂でもされたかな?」


 



夏季休暇の予定に、ハクロの故郷らしい場所への里帰りを追加。

まだまだ用意することなどもあるけど、一度は確認したいのである。

その一方で、怪しい動きも見えているようだが…‥‥

次回に続く!!




‥‥‥何処の世界でも良からぬ企みをする輩はいるというか、何と言うか。

しかし、こうなってくるとその背後がただ者ではないような‥‥‥スローライフを将来的に目指したいのに、何でこんなのが出るのかなぁ。

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