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3-8 できることが増えたからこそ

本日のは予約投稿。

けれども今週は、活動報告にあるように色々と忙しくなるので、投稿が遅れるかもしれません。

毎日投稿という訳でもないですがしばらくの間、読者の皆様方を待たせることになり、申し訳ございません。

‥‥‥ハクロが魔法を使えるようになったのは、良い事なのだろう。


 火の魔法に限っては消費量の問題ゆえに扱いづらいが、それ以外のものであれば、色々と扱い、そして応用を聞かせていく。


 というかそもそも、元々蜘蛛の糸を使って罠や衣服を作るなど手先が器用なのもあってか、細かい調節などもできるようになったらしく‥‥‥‥



「‥‥‥でも、好奇心旺盛で色々とやってみるのは良いけど、これは流石に多すぎないか?」

【色、再現できたから、ちょっと作り過ぎちゃった】


 ずらーっと並ぶのは、様々な色違いの小さな編みぐるみ達。


 魔法の属性を糸に練り込む方法を発見したそうで、その手段を使えば染料とはまた違った色合いの意図を作ることが可能になったそうで、ならばわかりやすいようにということで、それぞれの色の糸を使ったあみぐるみを作製して見ようと思いついたらしい。


 へし折り顧問の仕事もこなしつつも、放課後寮の自室でリラックスして過ごす中で、着々と編んでいたのだが‥‥‥ふと、そろそろ夕食時だし食堂へ向かおうとしたところで、この状態を目にしたのであった。


 うん、何か静かだなーと思いつつ、彼女の背中に寝っ転がってうとうとと心地いい眠りに誘われていたせいで、全然何をやっているのか見ていなかったのも悪かったかもしれない。


 これがまた、普通の編みぐるみであれば良かったのだが‥‥‥‥


「熊やウサギとか、そう言うのならともかく…‥‥全部蜘蛛で統一されたら、一匹や二匹ならまだしも、この量は流石に驚くんだけど」


‥‥‥まさかの100体ほどの編成であった。


 しかも一色に統一するだけではなく、切り替えてやる練習もしていたようで、縞模様にぶち模様、波紋状、チェック、タータン‥‥‥ぎっしりと集まった子蜘蛛たちのような光景には、驚愕させられて思わず叫び声をあげてしまった。


 

 まぁ、そこまでリアルに寄せた造りではなく、ややデフォルトをかけて柔らかい印象にされてはいるが、流石に蜘蛛の大群はビビってしまうだろう。


 ハクロを普段見ているからこそ、慣れたつもりだったけど‥‥‥‥うん、不意打ちって怖いね。


「それにしても、これだけの編みぐるみどうする?」

【んー‥‥‥そう言えば、先生方の話で言ってた。奉仕活動科目で、孤児院に寄付を募るって。誰か寄付したい人がいれば、あげて良いって言ってたし、コレも良いよね?】

「それなら良いんじゃないかな?」


 奉仕活動科目‥‥‥主に2種類の人が入っている科目である。


 一つは、普通に学園内でやらかしつつも退学処分にはならず、けれども精神的な面からの叩き直しが必要な人たちが強制的に入れられ、やや厳しめの肉体活動もあるらしい。


 そしてもう一つは、単純に志が高い人が、人徳を積むために‥‥‥いや、積まなくとも慈愛あふれる人が、その心のやりどころとして入るそうだ。こちらの方は、厳しい活動はなく、緩く孤児院での慰問などを行うそうだが‥‥‥今回はその後者の方に寄付をするらしい。


 

「大量にあるとさすがに驚くけど、こうやって一体一体、個別に見るならば大丈夫だし、同じような蜘蛛の編みぐるみでも柄が違うならばそれはそれで‥‥‥って、あれ?全部統一されてもないね」


 柄を出すための編み方の関係なのか、よく見れば蜘蛛ごとに何か違う感じにされている。


 足が2本挙がっていたり、踊るような体制になっていたり、威嚇するかのような体制になっていたり‥‥‥柄だけではなく個別に個性が出されているようだ。


【キュル、だってこれモデルいるもん】

「モデルって誰を?」

【‥‥血の繋がっていた、群れの皆】


 問いかけたその時、一瞬彼女の顔がどこか寂しそうな顔をして、その意味を僕は悟った。





‥‥‥僕と出会う前に、彼女は何処かの蜘蛛のモンスターの群れにいたらしい。


 初めて知った時は、何かとトラウマになっていることがあるらしく、拒絶反応と言うべきか取り乱しはしたが…‥‥どうやらあれから年月も経て、なんとか取り乱すことは無くなったらしい。


 けれども、こうやって編みぐるみを作っていたところで、3体目あたりからふと群れにいた時の他の仲間を思い出し、作ってしまったらしい。


【今はもう、あまり取り乱さないし、アルスに少し、話せるよ。私のいた、群れの皆のこと】

「‥‥‥なら、せっかくだし聞かせて欲しいな。ハクロが生まれ育った、群れの蜘蛛たちについて」


 めったに聞けることでもないし、無理に思い出させることなく、彼女から話してもらえる機会があれば逃さないほうが良い。


 こういう機会があるのならば、積極的に聞いた方が良いだろう。


【うん、それじゃ、まずこの蜘蛛‥‥‥大体、私の173ほど上の兄の蜘蛛で‥‥‥】

「あ、ごめんちょっと待って。なんかいきなり計算が合わなくなったんだけど」


‥‥‥3体目あたりから作り出して100体ほどになっているけど、いきなり合わない数になっている気がする。


【ん?だって、これほんの一部だもの。それに、群れから独り立ちしたのもいるよ?】


 言われてみれば、蜘蛛の子を散らすようにとか言うような言葉がある。


 確か蜘蛛ってかなり多産であり、蜘蛛のモンスターもそれに当てはまるような‥‥‥‥もしかしてハクロ、兄弟姉妹すごい数になってないかな?


「ハクロって、何人目の姉妹とか、そのあたりは分かるの?」

【うん、私、896番目の子、キュル】


 896(ハクロ)ってか。偶然とはいえ、数字もあっているとは…‥‥‥いや、そう考えると一気に桁が吹っ飛ぶのだが。


 色々とツッコミどころがあるというか、彼女のかつていた群れの規模がどのぐらいなのか、物凄い疑問が産まれてしまうのであった…‥‥‥


【でも、群れってずっと同じじゃない。入れ代わり立ち代わり、遠くに独り立ち、狩りではぐれて迷子になったり、逆に狩られたり…‥‥増減はけっこうしていたかも】

「なるほど…‥‥」










「‥‥マジかよ…‥‥とんでもない発言が、今出てきたな」

「ああ、彼女の兄弟姉妹と言うべきか、蜘蛛のモンスターが多すぎるとは…‥‥色々と驚かされるな」


 そしてアルスがハクロに、一体一体誰がモデルなのかという説明を受けている中で、潜んでみていた間諜たちは驚きの言葉を漏らしていた。


 こうやって交代で監視したりして情報を集めているのだが、今回出てきた多くの兄弟姉妹発言は、かなりのビッグニュースである。


「しかし、蜘蛛のモンスターってそれほど多かったか?前に任務で、ロールタラテクトの群れに遭遇したが‥‥‥精々10体ほどだったぞ」

「そう言えば、そう言う大規模な群れはあまり聞かないが…‥‥考えてみたら、ばらけていると考えると、案外不自然でもないかもしれん」


 大規模な群れならば目立つのだが、それを分散して小分けの群れにしたらどうなのか?


 それならば、元をただせば一つの群れだとしても同じものとは考えにくくなるし、ばらける事で集団での食糧問題をかわせるのだろう。


 そう考えるのであれば、何も大規模な群れでいる必要が無いというのが納得できた。


「しかし、彼女のいた群れが気になって来るなぁ…‥‥」

「編みぐるみで丁寧に説明されるが、一体一体個別にやっているな…‥‥個性が違うのか」

「でも、種族としては大体同じようなもののようだよね。彼女だけがちょっと違ったというべきか‥‥‥」


 アルスに対してハクロが説明している内容を聞きつつ、せっかく彼女の口から語られる群れの情報なので、しっかりと記録していく間諜たち。


 そしてついでに、編みぐるみを寄付する話を聞き、自分達も少し手に入れたいと思ってしまうのであった。


「‥‥販売してくれないのだろうか。してくれれば、それこそ言い値で買っても良いのだが」

「ハクロちゃんとは姿が違うけど、彼女手作りってだけでも変わるからねぇ…‥‥しかし、これまた数が多いな」

「情報では、彼女以外が壊滅したような話が出ていたとは思うが‥‥‥そうなる前の群れの情報は貴重だ」

「‥‥‥でも、ちょっと疑問に思わないか?」

「「「何がだ?」」」


 ふと、記録している中で、手を動かしながら、間諜の一人が疑問の声を出した。


「入れ代わり立ち代わり、一人立ちなどもしていたというけど‥‥‥‥それだったら、その群れが壊滅する前に、生き残っていた蜘蛛のモンスターがいる可能性もあるよね?」

「言われてみればそうだな…‥‥全滅したような話だが、それでも生き残りがいてもおかしくは無いか」

「そもそも、蜘蛛のモンスターの群れが多数確認されていたとか、そう言うところを捜せば、彼女の出身地なども分かるんじゃ?今までは蜘蛛のモンスター情報などで集めていても集まりにくかったけど‥‥‥もしかすると、違う種族へと進化した蜘蛛のモンスター同士なのもいるかもしれないよね」


 疑問から出てきた、その可能性。


 彼女と生き別れた兄弟というべきか姉妹と言うべきか、そのような蜘蛛のモンスターがいる可能性はあるだろう。


 とはいえ、いない可能性もあるし、そもそも群れが壊滅したのであれば相手もまさか彼女が生き残っていたとは思う事もないかもしれない。


 それに、彼女が闇の中に輝く一つの純粋な光とはいえ‥‥‥‥血の分けた家族だとしても、彼女と同じようなものであるとは言えないだろう。


 それでも、彼女にとってうれしい事を考えるのであれば、そのかつての群れの生き残りの情報もあるだろうし、それとなくめぐり合わせてあげたくもなる。


 せっかく、大量の情報が出てきたのであれば、この際少しずつ捜してみるかと間諜たちは思うのであった‥‥‥‥



【それでこれが、34番ほど上の子で、こっちが450番ほど上の~】



「‥‥‥しかしこうやって聞くと、先ず彼女の母親がどういうやつだったのかが一番気になる気がする。これほどの多くの蜘蛛を産むにしても限度があるだろ」

「有名どころだと、マザータラテクトかな‥‥‥‥でも最近だとクイーンタラテクトにエンプレスタラテクトなどもいるらしいし‥‥‥似ていても違うんだったか」

「子どもの多さだと『マザー>クイーン=エンプレス』じゃなかったか?」

「いや『マザー》エンプレス》クイーン』だったような」

「いやいや、マザーが上なのは変わらないが‥‥‥‥うーん、この辺りの研究は不足していたような‥‥‥」


ぽろっとこぼれた、彼女のかつての群れの話。

数多くいたようだけど、放している時の彼女は楽しそうでもあり、そして今はいない寂しさも見せている。

今の生活に癒されはするが、それでも失ったことを考えると、まだ傷になっているのかな…‥‥

次回に続く!!



‥‥‥なお、数字は本当に偶然だったりする。にしても、ハクロの群れの話も気になるけど、そもそもそれだけを産み育てた母親が一番気になるな。

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