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3-3 たまに人の話は聞くもので

‥‥‥中等部までになると、学園も上がった分後輩が出来上がっていく。


 だからこそ、先輩と呼ばれるようにもなりつつ、人によっては学園内で有名になってきており、その名によって「○○先輩」となっていき‥‥‥


【‥‥でも、ハクロ先輩って呼ばれないのは、ちょっと不満かも】

「まぁ、ハクロって先輩って言うようにも見えないからね」

「それは仕方がないだろう。そもそも、学園の顧問に所属したとはいえモンスターであり、生徒という訳でもないからな…‥‥」


 ぷくぅっと、学園内での不満をそう口にしたハクロに僕は苦笑し、ガルバンゾー先生はそう答える。


 授業も終わり、放課後のこの時間、負担などがかかっていないかを調べてもらうためにという事でガルバンゾー先生の元に来ていたのだが…‥‥軽く身体検査を行ってもらったのだが、今のところ、ハクロにへし折り顧問としての負担はそうないようである。


「むしろ、その身体能力自体に驚きだがな。研究所の方とは何かとつながりがあるのだが‥‥‥最初のころに調べられたデータと比べても、年々向上しているのが見て分かるだろう」


 そう言いながら、研究所の方から送られてきたらしい書類と、たった今軽く測った結果と見比べて、先生はそう口にする。


 彼女の身体能力についての定期検査も受けてはいるのだが…‥‥どうやら結果としては、今もまだ成長途上であり、まだまだ発展の余地があるらしい。


 普通の蜘蛛のモンスターであれば限界もある程度は推測できるらしいのだが、ハクロの場合はまだまだ予測不可能なところが多いようなのだ。


「しかしな、普通ホーリータラテクトは癒しの力を元にして守られるので、戦闘能力を有する必要はそんなにないはずなのだが…‥‥こうやってデータだけを見ると、有しているのが不思議なところだ」

「そうなのでしょうか?」

「そうなのだ。まぁ、有していようがいまいが、そもそも狩りのプロともいえるタラテクトなので、必要最低限の戦闘能力や身体機能があってもおかしくはないのだが…‥‥自衛のために、ある程度の防衛手段を身に付けたと考えるのであれば、おかしくもないのか‥?」


 やや疑問形な口調でガルバンゾー先生はそう口にする。


 普通、ホーリータラテクトは癒しの力を持つことで、周囲のモンスターが守るようになって戦闘する必要性も無くなるらしいのだが、ハクロは違う。


 しっかりと糸で身を固めつつも、木刀を糸で操って動かしたり、自分の体を引っ張り上げるだけの力を持つとはいえ細腕ながら怪力だし、動きは身を守るために必要かもしれないけど瞬間移動のような加速を見せるし…‥‥何かとぶっ飛んだ行動が可能なのだ。


 まぁ、元々人ならざる者であるモンスターだからこそ、人並外れた力を持っていてもおかしくはないんだけどね。


【キュル?おかしくないよ、アルスは私が守る。だからこそ、強さは必要なの。素早く動き、大事なアルス、守り抜く。いざとなれば駆け抜けて、地の果てまで向かうよ】


 ぐっとこぶしを握り締めて答えるハクロ。


 守るために強くなっているのかもしれないけど…‥‥やや度が過ぎているように思えるのは気のせいであろうか?


「んー、というか僕の方が守りたいんだけどなぁ…‥‥今のところ、剣術や棒術の授業も取ったのに、彼女との模擬戦で全敗しているのが悲しくなってきたかも…‥‥」

【加減する?アルス勝つ、それで嬉しいなら負けるよ?】

「いや、それはそれで悲しくなるから、普通に相手してほしい」

 

 八百長のような勝利って、むなしいだけだからね‥‥‥‥いつか絶対に、実力で勝ってみせたいとは思う。


 そもそも、剣を使うような事態とかがない方が良いんだけどね。平和に彼女と暮らし、のんびりとしたい。


「それに、貴族作法の授業で、ハクロって淑女のマナーとかも全部覚えているからなぁ…‥‥」

「ああ、教員として他の教員の仕事を見学することはあったが、その様子は見たぞ。…‥‥懐きまくった子猫のように見えるのに、あそこまで完璧だとむしろ詐欺に近いと言えるだろう」

【詐欺じゃないよ、しっかりとするもん。アルスの側にいるためにも、こういうのも必要と分かっている。だからこそ、真面目に、自分のものにするの】


 貴族としては社交界の場もあるらしいが、場に出ても恥じぬように努力しているらしい。


 作法が完璧だと容姿も相まって、絵になる美しさになるからね…‥‥こっちもなんとなく負けたくない気持ちが湧いてくる。


 とにもかくにも、その他軽めの身体検査も終え、一応問題なところはないらしいという結果になった。


「とはいえ、気を付けたほうが良いぞ二人とも」

「といいますと?」

「中等部にあがり、より授業に積極的になるのは良いのだが…‥‥その能力の高さに関して、目を付けているやつらが出ているそうだ。今のところはそうそう問題を起こすような動きはないとはいえ、警戒はしておけ」

「わかりました」

【キュル、了解】


 真剣な表情で忠告されたが、おそらく近いうちに何かあるかもしれないと予想しているからこその、言葉なのだろう。


 こちらのことを心配してくれる先生の忠告を聞きつつ、問題無くやり過ごせたらいいなと思うのであった‥‥‥‥











「‥‥‥さてと、こうやって成長している様子は教師としては嬉しいものがあるが‥‥‥それでも、まだ気配の察知に関しては未熟か。彼らが退出したし、姿を見せて良いぞ」

「はっ」


‥‥‥アルスたちが退出した後、ガルバンゾーがそう告げると、どこからともなく間諜の者たちが姿を現した。


「いつもであれば、わざわざ残ることは無いはずだが…‥‥こうやって気配を残していたという事は、皇帝陛下から何か告げられたか」

「その通りです」


 問いかけに対して間諜の者の一人が前にでて、ガルバンゾーの手元にとある報告書を手渡す。


 そしてその内容をさっと目を通してもらえば‥‥‥ぴくりと、ガルバンゾーの片眉が上がった。


「‥‥数年かけて、ようやく届いた国もあれば、馬鹿げた計画を練っていたところもか…‥‥学園に、この手の輩が侵入していないかどうかの確認をしろと」

「一応、ある程度の検閲は行ってましたが…‥‥それでも、中にはいろいろな手段でごまかして入ろうとしている輩がいるようです。現状としましては防げているようですが、外部へ出てしまえば接触の可能性も大きく、それとなく自然に注意を促しておくようにという命令がありました」

「いや、それはすでに遅い。ある程度の不審な動きはこちらでも見ているからこそだが…‥‥あの皇帝陛下の事だ、一歩遅れた命令を出すわけでもあるまい」


 そもそも教員である以上、生徒たちの安全のために事前に探り出し、どうにか守ろうと動くだろう。


 なので、その事情を皇帝が知っていないわけでもないだろうし、わざわざ間諜を使用して警告するにしても遅く思える。


「となると…‥‥まだ、より深いところにいるか」

「可能性はあるかと」


 いくら色々と警戒して見渡しているとはいえ、それでも死角は存在する。


 そして面倒な輩ほど、その死角へ潜り込み、ひっそりと迫って来るだろう。



「‥ならば、皇帝陛下からのその命令に関しては従うが、この件はまだ深そうだ。学園側の方でも対応をやっておくが、その前に陛下の方も忠告前に先に終わらせられるようにして欲しいと伝えてくれ」

「はっ」


 ガルバンゾーの言葉に対して間諜の者は返答し、直ぐにその場から消え失せた。


 色々と考えて伝えてくれるのは良いのだが…‥‥伝える前に、何もかも終わらせるだけのことをしてもらう方が、効率としては良いだろう。


「だが、効率ばかりでは見落とすこともあり…‥‥何かとままならぬことがあるのももどかしい所だ。‥‥‥心配をしてくるよりも前に、皇帝としてなすべきことをやってもらいたいが…‥‥とりあえずは、こちらでも探るとするか」


 そうぼそりとつぶやき、ガルバンゾーなりに動き始める。


 帝国の皇帝と一教員では可能な範囲が異なるが、いる立場が異なるからこそ対処法もより多く異なる物を用意して重ねることができるだろう。


 教員として生徒を守りつつ…‥‥放棄した立場とはいえ、それでもアルスたちは帝国の民であり、守るべき対象でもある。


「だからこそ、大人としてしっかりやらねばな」


 そうつぶやき、ひとまずはどこから探るべきか、思考の海へと潜り始めるのであった…‥‥






できるからこそ、やらなければいけないだろう。

全てをとまではいかなくとも、可能な範囲内であればやるべきだろう。

それが教員として、そして国に努める者として、将来有望なものの未来を守るためにも大切なのだから。

次回に続く!!



‥‥‥ああ、書いている時は心が落ち着くけれども、現実はちょっと大変なんだよなぁ。

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