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閑話 白き蜘蛛のお姫様

本日2話目というか、設定②公開中

‥‥‥エルスタン帝国の帝都には、白い蜘蛛でありながら、お姫様のような美しさを持つモンスターがいる。


 そのような噂は流れつつも、実際にその目で見ないと信じるような人はいないだろう。


 なぜならば、モンスターと言えば獣のような姿や、異形の怪物のようなものが多く、人の姿を持つものというのは想像しにくい。


 いや、人型に近いという点で言えば、アンデッドのゾンビやデュラハンという面々もいるが‥‥‥彼らの場合は元が人であるからこそ、人型であるとも言えるだろう。


 だからこそ、人の姿を持つ様な、それこそ絶世の美女のような姿であると言われても、大抵の場合信じてくれない人もいる。


 


 ゆえに、信じていなかった人が己の目で確かめるために向かうこともあり…‥‥真実を目の当たりにして、ようやくその噂が本当であると理解するのである。


 全体的に白く、清楚で妖艶で、可憐でもある蜘蛛の姫。


 慕う者と仲睦まじい容姿は微笑ましくもあり、早くくっ付いて欲しいようなもどかしい想いさえも抱かせてしまう。


 ああ、何でこの光景を見るまで、信じることができなかったんだ。早く見るために訪れればそれだけより長く見ることができたのに、と後悔する者もいるのだ。



 とはいえ、内容が内容だけに人に伝えるためにはどうしたらいいのかと思いつつ、その光景を結局は胸の中に収めてしまう人も多い。


 美しい光景があるのであれば、その光景を己の中にだけにとどめておきたい。


 誰かに穢されぬように、守ってあげたい。


 そう言う想いが湧き出るからこそ、噂は噂としてあれども広まるような真似はせず、むしろ同じ想いを共有する者同士が自然と惹かれ合い、集まっていくのだ。





‥‥‥でも、時としてその想いは人を狂わせることもあるだろう。


 美しさ、というかその姿を見ているとどちらかと言えば可愛らしさが見えてくるのだが、それに対する想いを抱くときに、曲がった想いを抱く者も少なくはない。


 何が何でも自分の手元に置きたい、あの者のもとよりも自分のもとの方がふさわしい、人ならざる者であるからこそ人のような扱いをせずに良い、色々と探り我がものにしたい‥‥‥‥独占欲か、それともただの色欲めいた願望か。


 その想いは間違っているのだが、間違っていることを指摘するようなものがいない場合、どの様な方向へ動くのか。


 人の想いというのは、変幻自在でつかみどころがなく、一度暴走すればもう止めようがない。


 そして、時間がかかっても手に入れようと画策し、守ろうとする者たちの手を潜り抜けて動く。



「‥‥美しき蜘蛛の姫は、この手で抱こう」

「手に入れるためにであれば、どの様な手段も使おう」

「時間がかれども、最後に入るのであればそれで良い」


 彼女の想いそのものを無視して、それはもう、止めようがないことなのであった‥‥‥‥


 








「‥‥‥と、まぁ、このように狙う輩が出ていることがいるのも、事実だろう」


 そう言いきり、何が起きようとしているのかという話し合いが今、帝都内のとある一室で行われていた。


「見事に欲望を抱き、長期的な計画を‥‥‥‥そのように動く者もいるのか」

「間違いないだろう。己の手に抱くためには、どの様な手段も問わぬような輩もいるからな」


 彼らは、ハクロファンクラブの者たちであり、本日はこの室内で会議をしていたのだが…‥‥ハクロが世に周知されて以降、出てきた動きに対して警戒をしていた。


「美しい娘が欲しいだけの者、己の欲望のはけ口として求める者、珍しいモンスターだからこそ収拾したいもの‥‥‥その他、様々な者たちが水面下で動き合っていることが確認された」

「嘆かわしいというか、愚かというか…‥‥何故、そのような思考にたどり着けるかが疑問だ」

「ああ、そっと見守ってあげたり、その笑顔を守ってあげたいと思うのであればまだしも、邪な想いを抱く者が出てもおかしくはなかったがな」


 あちこちの間諜や密偵として活動している者がいる分、どこの誰なのか、どの様に動いてくるのかという事を探るのはそう難しくもない。


 だがしかし、止めるために動いたとしても、完全にはいかず、かいくぐってしまうような輩が出てしまう事にももどかしさを感じてしまうだろう。


「幸いなのは、短期的なものではないということだ。長期的な視点から、じっくりと攻めていくつもりのようだが…‥‥」

「すぐに行動に移されれば不味いが、時間をかけるという事はこちらも時間をかけて対処はできるだろう。それに、そのような輩を取り締まるようにすればより多くの方面に活かすこともできる」


 一つの対策だけで、未然に防げるようなことも多くある。


 ゆえに、やらないよりもやったほうが無駄にはならないだろう。


「何にしてもだ、長期的な視点で‥‥‥数年かけてでも動く輩が出て、新規にまた現れてもおかしくはない」

「警戒するに越したことは無く、むしろ我々ファンクラブも力を高めたほうが良いだろう」

「ああ、個々の雇い主の意向なども酌まねばならぬし、場合によっては身内に手をかける危険性があるが‥‥‥」

「「「闇の中にある希望の光を失わない選択を、選ばねばならない」」」



‥‥‥間諜などの仕事をしている以上、ドロドロした内容も多く、精神的に疲れ果てていく。


 どれだけ鍛えていても慣れるものではなく、だからこそ癒しの光を失いたくはない。


 その想いは全員が抱いており、改めて心を一つにして協力していく。


「‥‥‥とは言え、全てを我々が‥‥‥というのも無理だろう。所詮は陰に潜む者であり、表立って動く訳にはいかぬ」

「そう考えると、早いのは彼女の主を対応できるように‥‥‥か」


 まだ幼いような少年の姿を思い出し、どうしたものかと考える。


 自分達が出来ないのであれば、一番身近にいる者を鍛え上げたほうが良いようにも思えるが‥‥‥どうすれば、都合よく行けるのかがわからない。


「とにもかくにも、向こうが長期的に来るのであれば、こちらも長期的に支援していく動きを取らねばなるまい」

「ああ、怪しい者共も確認し、できる限り不安要素を消し去っていかねばなるまい」

「それもこれも、あの美しき光を消さぬためにも」

「心を癒す、優しい笑顔を守るためにも」

「彼女の秘めたる想いを成就させつつ、その幸せを願うためにも」


「「「「「やらねばならぬ、なにごとも!!」」」」」


 一致団結し、思わずそう叫ぶファンクラブの者達。


 この1年を通して彼らの数も増え、徐々に規模を大きくしてきたが、それでもまだまだ足りないと思う。


 ひとまずはここでの話し合いはこれで終えつつ、守るための長き戦いが開戦されるのであった…‥‥


守るべきものがあるからこそ、強く成る者たちもいる

そして求める者があるからこそ、手段を択ばぬものもいる

ゆえに、皆どうしたものかと悩み…‥‥時間は過ぎるのだ。

次回に続く!!


あ、次回新章です

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