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2-44 こういう使い方もありと言えばありだろう

‥‥‥薬の精製能力は、最近はもっぱら皇帝陛下やその他の臣下の方々への頭痛や胃痛の薬の生成で使っていることが多い。


 けれども、基本的にはやや制限は有れども、チートじみた能力をしているのは間違いなく‥‥‥僕らの安全を確保するために利用するのは別に良いだろう。


 とはいえ、思ったよりも便利であったというべきか…‥‥




「‥‥‥‥この大木、明日には消さないと騒ぎになるかな?」

【でも、すごい大きい!この上なら、安全そう!】



 領地へ向かう二日目の夜、本日は野宿の予定であり、その準備を進めていた。


 帝国内は治安が良いとはいえ、先日の盗賊たちの例もあるし、この道中に悪人と出くわさないなんて可能性はない。


 ゆえに、野宿する際の安全対策として考えたのは…‥‥ツリーハウス。


 植物を成長させる薬をちょっと改良して、木にログハウスを生やすようなものを作ろうと思って、事前に苗木と薬を用意し、野宿を予定していた地にて植林して薬の投与をしたのは良いのだが…‥‥事前にもうちょっと、実験しておくべきだったかもしれない。


 できたと言えばできたのだけれども、ちょっと木の幹が太すぎる。


 イメージ的にはこう、某妖怪の家みたいなのを考えていたけど…‥‥まぁ、間違っても無いか。


 とにもかくにも、念のために幹にしがみついて上って来るとかが無いように、あらかじめメチャクチャ滑る薬を表面に塗っておき、ネズミ返しの葉っぱや枝を生やさせておく。


 そしてハクロに抱えられてひょいっと上ってもらえれば、木の上には立派なログハウスが出来上がっていた。


「まぁ、表皮が盛り上がったこぶの造形を変えただけなんだけど…‥‥悪くもないかな?」

【キュル、この家いいかも。眺めはそこそこ、雨風はしのげるよ】


 一応、今晩限りの物件であり、明日の朝にはしっかりと片付ける予定はある。


 というのも、放置しておけば他の野宿をする人とかが利用できそうだけど、盗賊とかの巣窟になるのも避けたいからね…‥‥もったいないが、下手に他の人の迷惑にもなってほしくないからね。


「っと、そうだ。夕食のために焚火を焚かないとね。木だけど、しっかり防火能力があるから、ちょっと焦げるだけだから大丈夫かな」


 火事になるのも避けたいので考えてやったが、どうやらうまく入ったらしい。


 適当な枝などを組み合わせ、火を付ければ焚火ができるも、周辺に飛び火して炎上はしないようだ。



【キュル、焼き木の実、焼き肉、何かと便利】

「火を通すだけでも、旨いからね。まぁ、せっかくだし手間を加えてみようかな」


 いろいろな木の実をその場で生やさせつつ、収穫して食べていく。


 道中でも狩りをちょっと行なって肉も得ており、不便さは感じられない。


 薬の方でイメージして味を付けて、ちょっとした調味料にもできるからね…‥‥まぁ、付け過ぎると味が濃く成り過ぎたりして今一つになったりするのは仕方がない。料理人って訳でもないし、そこはまだまだ経験不足と言うべきか。


 包丁などに関しては無くても、ハクロが糸で綺麗に切り裂けるので、それはそれで問題ないか。‥‥‥切り裂ける糸って時点で、色々とツッコミどころがあるけど、気にしないほうが良いだろう。


 何にしても一緒に美味しく夕食を食べ終えつつ、焚火はまだ利用するために消火しない。


「ハクロ、タライは?」

【あるよー!】


 小さなタライに薬湯のように薬を注ぎ、焚火の上にしっかりと零れ落ちないように固定しておく。


 ぐつぐつと煮えてきたところで一旦火を止めて温度を下げ、ある程度いい湯加減に調整出来たら再度点火して、バランスを取り‥‥あとは、小さくなる薬を飲んで入れば、即席の風呂ができあがる。


「それじゃ、汚れを落とすために入ろうか」

【キュル♪】


 なお、きちんと水着の着用で一緒に入っている。夏場も過ぎると使わなくなるのでこういう時に着るぐらいなのと、流石に裸で入り合うのはちょっと気恥しいからね…‥‥ハクロの方は全然気にしてないようだけど、10歳児な体とはいえちょっと考えて欲しい。


【キュル~♪キュ、ちょっとぬるいかも?】

「それじゃ、追加で」

【わかったよー】


 入って見て少しぬるければ、ハクロが糸を出しておいてある薪用の枝にくっ付け、焚火の中に投入する。


 こうやって好きなように調節できるのは、中々良いのかもしれない。



「ああああぁぁ…‥‥風呂って良いよねぇ。ゆったりできるというか、リラックスできるね」

【キュ♪アルスと一緒に入る、これ一番良い♪】


 ゆったりと湯船に浸かっていると、ハクロが寄ってきて僕にくっ付いてくる。


 むにゅうっと柔らかい感触にちょっとドギマギさせられるが…‥‥まぁ、湯船の良さは分かっているようなので、良いとするか。


【ところでアルス、思ったんだけど、タライで作る前に、このログハウスに、風呂場作れなかったの?】

「‥…あ、そう言えばそうじゃん」


 家の形にできるのであれば、風呂場を作ることもできたはずである。


 燃えにくい材質にしているから適当に薪用の植物を生やしても良かったし、木の吸水力とかで水を入れることもできただろう。


 わざわざ小さくなる薬、使う意味なかったなぁ‥‥‥‥まぁ、ゆったりと入れたなら良いか。






 風呂からあがり、しっかりと水分をふき取って乾かし、就寝の準備に取り掛かる。


 また次回があれば今度は風呂場を作っておこうと考えてはおくけれど、寝室の方は抜かりなく作ってある。


「布団もあるし、しっかりと出して‥‥‥後は、念のために扉も鍵をかけておくかな」


 木の上のログハウスだけど、念には念を入れておく。


 まぁ、ここまでやって無理やり入ってくるのはどんな超人だよと言いたいが‥‥‥‥やっておいて損はないだろう。


【乾いた、モフモフ、手抜かり無し!アルス、何時でも良いよ、キュル♪】

「それじゃ、寝かせてもらうよ」


 ぽんぽんっと小さくなる薬で枕サイズになったハクロが自身の蜘蛛部分を指し、そこに頭を載せさせてもらう。


 相変わらず沈み込むような、それでいて反発してしっかりとしているような、低反発枕も顔負けの枕となっている。


‥‥枕に顔はないのに顔負けとはこれいかに。いやまぁ、ハクロは顔あるし、例えで言うだけなんだけど、なんでこうもツッコみたくなるような言い方をしてしまうのやら。


「それじゃ、お休みハクロ」

【キュル、アルスも、お休み】

 

 明かりを消し、暗くしただけでもだんだんと眠気がやって来て、深い眠りへといざなわれる。


 安眠できるし、こうやってハクロと一緒に寝るのはもう、本当に欠かせないというか生活の一部になっているというべきか…‥‥ああ、幸せってこういうところにあるんだなと思う。


 そう思いながらも、夢の中へ僕らは向かうのであった‥‥‥‥











‥‥‥アルスとハクロが熟睡し始め、寝息を立ててきた丁度その頃。


 闇夜に紛れて、この地域で監視をしていた間諜もといファンクラブの者たちは今、ある仕事をしていた。



「‥‥案の定というか、帝都から離れた情報を得るや否や、動き始める馬鹿はいたか」

「盗賊に偽装していたようだが、我々の目はごまかせないぞ」


 そう言いながら首を絞め、息の根を止めずに意識だけを手際よく彼らは奪っていく。


 散らしたほうが良いのかもしれないが、情報を得るためには活かしたほうが良いのだ。


「そりゃ、聖国が自業自得で潰れたとはいえ…‥‥情報が多少はよそに流れていてもおかしくはなかったからな」

「むしろあんな国だったからこそ奪い放題だったから奪った情報かもしれないが…‥‥それでも、こう密かに出てくるのは、やめてほしいなぁ」

「本当だよな。我々の雇い主はそれぞれ違うし、ファンクラブとしての活動をしているだけだが‥‥‥それでも放置をして置けば、雇い主側への影響があるからな」


 ごきごきと音を鳴らし、手慣れた様子で捕縛し、呼んできた荷馬車へ動かなくなった体を乗せていく。


 ハクロファンクラブである彼らだからこそ、この度の領地帰郷への道中の旅路の監視役としての白羽の矢が当たったのは幸運だと言えるだろう。


 けれども、その道中で出てくる面倒な輩たちの排除は、流石に面倒な作業でもある。


 とはいえ、守るためになら仕方がないし、道中交代制で後を追う分、その疲労などによる鬱憤を晴らす意味でちょうどいいサンドバックになってくれるので一概に面倒だとは言えなかったりするのだが‥‥‥それでも、見えてくる面倒事には溜息が出てしまう。


「あらゆる薬、癒す美女‥‥‥単純な情報だけでも手に入れたくなるような馬鹿がいるのは、どこの国も一緒か」

「国どころか阿呆な人が多いせいと言うべきか‥‥‥そのあたりはもっと、国が躾を付けて欲しいな」

「無理を言うな。帝国だけでも末端部分は見切れない部分が多いのに、他国だとさらにひどい可能性があるからな」


 帝国のようにまともな国々はあれども、どの国もすべてを見ているわけではない。


 また、人というのは増える者で、その中に愚鈍で大馬鹿な者どもが出てもおかしくはない。


 ゆえにこうやって、時折隙を見て出てくる愚者共がいるようだが‥‥‥‥こうやって排除するのも、ファンクラブとしての務めだろう。


「とりあえず、後でしっかりと情報を搾るか」

「雇い主ごとに、得られる利益も変わるだろうし、しっかりまとめて分配しないとな」


 愚者に対して得られる情報の活かし方は、雇い主ごとに変わって来るだろう。


 そしてそのための最適な分配を行うためにも、こうやって協力できるのは利点である。


 とにもかくにも、人知れずに闇夜の中、ファンクラブの者たちはハクロの安眠のためにも、丁寧に愚者共を葬り去ってゆくのであった‥‥‥‥


「しかし、できれば寝顔とかも見たかったが…‥‥閉じ切っているなぁ」

「寮の部屋とは違うゆえに、見えぬ弊害はちょっと辛い」

「でも、見えないほうが何かと想像に掻き立てられないか?」

「「‥‥‥確かに」」


 とはいえ、アルスはまだ未成年だし、まだまだ関係は発展途上である。


 なので、そんなに変な事にはなっていないだろうけれども…‥‥安心し合って熟睡している光景はほのぼのできるだろうし、どの様な様子なのか想像してしまう。


 そう考えると、見えないと想像しまくって面白いかもしれないが、見えたほうが良いような気持も湧き出ており、何かと残念にも思うのであった‥‥‥


野宿(?)もしつつ、目的地へ進んでいく。

久し振りの帰郷になるのだが、果たして領地は今、どうなっているのだろうか?

気になりつつも、次回に続く!!




‥‥‥本音を言えば、家を出てのんびりハクロと過ごしたかったけど、次期当主にされてしまったのはちょっと残念。

でも、見ないといけない責任はあるし、しっかりとやらないといけないなと思う心もある。

まぁ、男爵、将来的には侯爵にもなるだろうけれど、穏やかに過ごせるような状態になってほしいかな。

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