6-9 対策もしておきつつ定番も
――――晴れやかな青空のもと、この日の領内にいた人々の顔は明るい笑顔に包まれていた。
それもそうだろう。本日はようやく、待ちに待った挙式が行われているのだから。
領内に作られた、まるで神殿のように荘厳な教会の鐘の音が鳴り響き式が行われていることが遠くからでも分かるだろう。
その鳴り響くたびに周囲の草花が生き生きと輝き合い、空には小雨も降っていないのに虹がかかり、大空には火の鳥や龍が舞い踊り、幻想的な光景が広がっていく。
‥‥‥出席者の数名ほどが、縮みにくいから自ら演出として自主参加した結果だという事実はさておき、この日の主役の新郎新婦の姿が現れて来た。
「…‥‥緊張より、やりすぎちゃった感じがあるおかげで、リラックスできているよね」
「キュルル、これはこれで、面白いからありかも♪」
互いに微笑み合い、軽く言い合うもそれでもやはり、まだ少し緊張して硬くなっている部分はあるだろう。でも、人生で幸せな日にしたい思いは同じであり、次第に硬さは失せていく。
新郎の身を、胸元に薔薇、白いタキシードで着飾り、新婦の身体は白さを越えて神々しさを持つウェディングドレスで着飾られつつも、それぞれ衣服に着られるようなことは無く、きちんと着こなしてバージンロードをそろって歩むたびに、そばには花々が咲き誇ってゆき、美しい歌声が響き渡り始める。
噴水が沸き上がり、宝石のようなキラキラとした光が舞い踊り、それに合わせるかのように盛り上がりを見せ、何処かの神経由でわざわざこの日のために呼ばれた銀髪の神父の前に立ち、誓いを行う。
「‥‥‥それでは二人とも、誓いの言葉を」
「私達は、ずっと共に歩み」
「いかなる時も、どの様な苦労があろうとも」
「互いを支え合い、共に進み」
「幸せを溢れる程つかみ取って」
「「愛を誓いあいます」」
互いの言葉と共に、誓いが真のものであると認証され、指輪の交換とキスが行われる。
短いようで、純粋な想いの交わし合いは人々の目にしっかりと記録され、語り継がれていくだろう。
いや、人ならざる者たちも出席しているのだが、新婦がそもそも人ではないので、誰もその事には気にせず、その方面でも幸せな話しとして広がりを見せていく。
‥‥‥この日、領民全員に祝われながら、アルスとハクロは名実ともに正式な夫婦となるのであった。
「…‥‥ああ、良い式だったが、色々とあったなぁ」
「というか、出席者の一部に、彼女の親戚筋だという方々が出たのは驚いたのだが‥‥‥そこはもう、誰も気にしていなかったな」
そして深夜、領内のとある一件家にてファンクラブの者たちは集まっていた。
今夜は初夜でもあるから覗き見たくもあるが、大事な時間だから見ずに、ここで話し合う。
今の話題としては、本日の挙式内で様々な大物が出たことが中心となっていた。
「確か、東方の国で守護神として崇められるようなものや、秘境にて目撃されつつも得る事のできないもの、多くの富とと宝をもたらすとされるものに、永遠の命を与えるのではないかといわれるようなもの‥‥‥神話というかまゆつばものの話に出るような、凄まじい者たちばかりだった気がするのだが」
「そもそも、ハクロちゃんの親戚筋という時点で、誰一人としてまともじゃないのかも」
「悪い意味ではないが、それでも何をどうしたらそうなるんだと言う様なのが多かったよなぁ‥‥‥」
下手すれば、親戚一同だけでも世界を征服できかねないような力を持つ者たち。
けれども皆、そんな事は考えていないようなので安心はできるのだけれども、それでもその人脈を知った者たちから警戒されたり、狙われる可能性が無いわけでもない。
だが、それで生活が脅かされるようなことになってはいけないと、ファンクラブの者たちは思う。
「非常に苦労をして、ようやく得た幸せな関係だ。脅かすような者たちが出ないように、これまで以上にしっかりしなければな」
「彼らに、いっその事国でも起こしてみてはと言う様なものもでるだろうが、大抵はその流れに乗って自身の欲を満たそうとする輩もいるから警戒しなければ」
「そうだ。純粋に輝く笑顔を、この闇の世界に光をもたらす太陽を、失わせてはいけないのだ」
うんうんと頷き合い、彼らはより一層ファンクラブとして動こうと決意する。
夫婦になってしまい、手の届かぬ存在に‥‥‥いや、前からそうであったとしても、もはや女神に等しい存在に対して、敬いの心を持ち守り抜くことを約束し合う。
一組の夫婦の登場と共に、同時に出来上がった強固な想いの壁は、世界を越えて繋がり合うのであった‥‥‥‥
「‥‥‥ところで、挙式内の演出とかも十分凄すぎたよな」
「あれどうなっているの?何か魔道具が使用されたって訳でもないし、あの神父のほうも見たことが無いのだけれども、かなりの実力者というか何かが違っているのにそれでもこなしていたのがすごいんだけど」
「聞いた話だと、神々の人脈で呼ばれたとかなんとか…‥‥妖精王や精霊王に神龍とか、物語として語り継がれるような類が、実は出席者たちの中に紛れていたらしい」
「それだけのとんでもない者たちに祝われた場合、本当にどうなるんだろうか‥‥‥」
‥‥‥世界がつながるどころではなさそうではあったが、気にしないほうが良いだろう。
するのであれば、それだけの祝福を受けた場合の今後の幸せがどうなるのかだが‥‥‥そこはもう、本当に神のみぞ知ることである‥‥‥
どこかで見たような面々もいるかもしれないが、名実ともに正式な夫婦となった。
というか、祝われ過ぎた気がしなくもないのだが、気にしても意味が無いだろう。
貰えるものは貰った方がいい。悪いものは何一つとしてないのだが…‥‥
次回に続く!!
‥‥‥割とあっさりとした感じだけど、一応領内の挙式であり、国を挙げてまではいってない。というか、国を挙げるレベルにしたら、それこそ筆者の書く力が足りな過ぎて死ぬ。
あと、読者の皆様方にとっては、誰が誰なのかちょっとわかるかもしれない。今回は少しだけ、ゲストで一部出てもらいました。知らないのもいる?ああ、それはまた、別の話として…‥‥




