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6-6 これはある意味、盛大な返しなのか

‥‥‥挙式前にある一番大きなイベントが、ついにやってきてしまった。


 本日はお日柄も良くという言葉が似合う様な青空の元、学園の校庭には生徒たちが集まり合い、その時を過ごし合う。


「それではこれより、ゼルナイト学園の卒業式を始める!!」


 学園の長である学園長がそう高らかに宣言し、始められる卒業式。


 正直言って、エルスタン帝国にあるからエルスタン学園という名のように思っていた部分もあったが、言われてみればこの学園はそういう名前だったと思い出す人もいるかもしれない。いや本当に、学園の名前って早々出ることは無いというか、基本的に誰も気にしないからな‥‥‥


「個人的には、あの人が学園長だったのに驚いたんだがな」

「あれ?ちょっと前まで、腰の低いおじいさんじゃなかった?」

「いや、この間は確か凄いババァだったはずなんだけど」

「え?そこそこ恰幅の良いダンディなオジサマだったはずでは?」

「いやいや、がりがりに痩せつつも儂のような眼光を持った人だったはずだが‥‥‥」


 ついでに言えば、今回出てきた学園長に関して、ひそひそ話し合う生徒たちもいるのだが無理はない。なんでも、ずっと長い間同じ人がとどまっていることは無いそうで、実はちょくちょく変わっていたらしい。


 そんな事実、誰も知らなかったけれどね。お仕置き顧問としてハクロが就いていたからこそ、初めて知った情報だったりする。


 そしてハクロの方は、生憎生徒ではない立場という事で、お仕置き顧問であったことも兼ねて教職員側の方にいる様子。


 あちらはあちらで、惜しまれているのだが‥‥‥んー、出来ればハクロも学生という立場での学生生活も送って見たかったかもなぁ。なんか流されるままに、いつの間にか顧問の立場に立っていたような気がするからね。



 とにもかくにも、卒業式の場だからこそ皆身なりを整えてしっかりと進行していく。


 一人一人が卒業式の雰囲気に飲み込まれ、学園を去ることに感慨の涙を浮かべる者や将来のことを考えて引き締める者。

 後輩たちに想いを馳せる者や、学園からまだ卒業したくなかったと言う様な人など、その様子は人それぞれ違っているようだ。


 一人一人丁寧に名前が呼ばれ、学園町の前に出て卒業証書を受け取り、席へ戻る。


 僕も同じく呼ばれ、しっかりと卒業証書を受け取ったが、これがこの学園での最後となる記念品かと思うと、ここでの生活が非常に感慨深く思えてくるだろう。


 思い出せば、ここでは色々あった…‥‥最初の頃は、ハクロを隠し、堂々と公認されて一緒に過ごし、様々な騒動に巻き込まれた。


 いや、大半ろくなものじゃなかった気しかしないような…‥‥うん、気のせいだと思いたい。非常に苦労した学園生活だったかもしれないけれども、それでも得られたものはあるはずだ。


 なお、こういう卒業式の場に限って何か馬鹿をやらかす人が出る可能性もちょっと考えていたのだが、幸いにしてそのような人は出てこない。


 他国であればここで婚約破棄を叫ぶ人とかもいるらしいが、この学園の人達は政略的な関係にあってもきちんと互いを理解し合ったりして、仲違いするようなことはそうそうないのである。滅んだ国の歴史の中には、そのような事態があったのでないように徹底的な教育がされた結果とも言われているらしいけれどね。


 



「とにもかくにも、気が付けば卒業記念パーティがそのまま開かれたけれども‥‥‥こうやって、同級生たちと過ごす日も、今日で終わりなのは寂しいかもね」

「キュルル、友達皆、ちょっと離れ離れになるの悲しいかも。でも、手紙のやり取りなどはするって、約束はしたよ!」


 そうこうしているうちに時間は進み、夕暮時には卒業式会場はそのまま姿を変え、立食形式の卒業パーティが開かれていた。


 正装がそのまま使えそうなものだが、流石に場の雰囲気が変わるときちんと合わせた服装に変えるようで、華やかな光景が広がっている。


 もちろん、ハクロも負けておらず、彼女もしっかりと自身の糸で作ったドレスを着こなし、この場で誰よりも美しいと言えるだろう。‥‥‥んー、ちょっと僕も、場の雰囲気で酔っているかも。お酒も出てきたけれど、ほんのちょっとしか飲んでないはずなんだけれどね‥‥‥


「キュルル、でも、こうやってアルスと過ごすの楽しい。アルスと一緒なのが、一番幸せで、良いの!キュルルル!!」

「‥‥‥そして気が付けば、止め遅れていたかぁ」


 いつのまにか酒を飲んじゃっていたようで、すっかりハクロが出来上がっていた。


 ほんのり赤みを増した肌で、ぎゅううっと大胆に、普段以上に積極的に抱きしめてくるのだが、理性に結構来るから抑えて欲しい。出来れば、挙式後までは清い関係でということにしているのだけれども、それをやめさせる気なのかな。


「ふふふ、卒業卒業、次は挙式で、お嫁さんから妻になれるの!アルス大好き大好きぃ!!」


 すりすりとほおずりし、更に抱きしめてくるハクロ。


 いつも以上に激しい愛情表現というか、甘えん坊になっているか、色々と箍が外れているが、それでもまだ可愛いので良しとしよう。


 酔った勢いで襲われたら?…‥‥100%、力負けをするのでその時はもう、祈るしかないかもしれない。


 何にしても、長いようで短くも思えた学園生活は幕を下ろし、この日学生という身分がついに失せ、僕らは社会へ羽ばたくことになるのであった…‥‥


「キュルルル♡アルス、アルス、アルス♡」

「酒を飲んでも、後で覚えているタイプだからなぁ‥‥‥酔いが醒めた後に備えて、メンタルケアの準備をしておこう」


 普段と変わらない気がしなくもないけれども、ハクロにとってはここまで曝け出すのは流石に恥ずかしいらしい。それなら酒を飲まなければいいとは思うのだが、これ多分、うっかりジュースと間違えて飲んじゃった感じかなぁ…‥‥確か、今回のパーティに出されたお酒は、何処かの何とか社製のジュースのようなお酒って売りのもあったんだっけ‥‥?



断言しよう。絶対に、学園の名前を忘れていた人がいる事を。

告白しよう。学園長と言う存在自体を、実は最後まで忘れていたという事を。

何にしても、ようやく学生という身分から解き放たれ、いよいよ大人としての生活へ…‥

次回に続く!!




‥‥‥絶対にエルスタン学園と表記してしまった話があるとも告白しよう。

正直言って、作者もうっかりしているところがあると思う。

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