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5-12 手は伸ばしつつ

‥‥‥突如として襲い掛かって来た、不気味な化け物の大群。


 その数はすさまじく、普通であればどんな国でも落とされたのかもしれない。


 だがしかし、このエルスタン帝国はやすやすと落とされないというか…‥‥


「‥‥‥ハクロ抜きでも、持ちこたえられるだけの備えもしているんだよね。しかし、本当にどこからこれらは来ているんだろう?」

「分からぬのぅ、突然やって来て攻めて来たからのぅ。とは言え、一応ここはここで守りも硬く、案外楽に持っていたのじゃ」


 僕の言葉に対して、はぁっと溜息を吐きつつも苦笑いを浮かべるドマドン所長。


 無事であったのは良いのだが、それでもここにも化け物たちが攻めてきていたのは驚きだった。



‥‥‥帝都から離れた都市アルバニア。


 その周囲にも大勢の化け物たちが押し寄せてきていたのだが、そうやすやすと陥落されることは無く、今はただ、化け物たちの亡骸が積まれる作業が行われていた。


 大量の亡骸ではあるが、下手に残しておくと感染症などの疫病の原因にもなりかねないので、しっかり処分する必要がある。


 帝都の方でも葬り去った分をしっかり火葬しており、こちらでもその準備が進められていた。


「キュルル、でもちょっと疲れたよアルス。私、一生懸命やったけれども、やっぱり数多すぎたかも」

「そりゃ、あれだけの人形を動かせばなぁ‥‥‥ハクロ、ひとまず今はちょっと休もう」

「うん、アルスにくっ付かせてもらって休む」


 僕をぎゅっと背後から抱きしめ、寄り掛かるハクロ。


 この都市も帝都と同様に人形を大量に操って防衛に成功したのだが、流石にとんでもない数を使ったせいか、精神的に疲労したようだ。


「とはいえ、魔力の消費量は微々たるものか…‥‥なんかこうやって会うたびに、とんでもない成長をしておらぬか?」


 うん、まったくもってその通りだとは思う。普通はあれだけの数の人形を操れないというか、そもそも人が出来るものでもないだろう。


 糸を自在に操れるのはまだ良いけれども、複雑な動きをする人形を何十、何千も動かすのはどういう方法で出来るのかとツッコミを入れたい。両手でやってもどう考えても無理なはずなのに、何をどうしたらああまでやれるのやら…‥‥




 何にしてもハクロの身に着けていた新しい芸、いや、冬季限定かくし芸のようなものを精進してより高度なものにしていたおかげで、今回の大群の押し寄せは抑えることはできた。


 だがしかし、ある程度全滅させたのはいいけれども、根本的なところが解決していない問題がある。


「そもそもどこからこんな化け物が出て来たのだろう?」

「それが謎なんじゃよなぁ。儂の方は地下にいて見ておらぬのじゃが、目撃証言を聞く限り、何かの爆発音と共に出て来たと言うしのぅ」


 謎の爆発音と共に、出現した大量の化け物たち。


 あまりのも急すぎる大群の登場に、誰も彼もが疑問を覚える。


「うーん、この間、領で作ったインスタントみたいに、ぼわっと出て来たよね」

「でもあれは食材限定でしかできないし、化け物を作るようなことはできないようになっているよ。そもそも国家プロジェクトだから精製方法も探られないようになっているしね」


 インスタント食品のようにお手軽に出て来たようだが、流石にそんな簡単にまねをしたモドキというか、それをはるかに超えるようなやつを出されたとは考えにくい。


 それに、あそこまでの爆発はないので、流石に別の技術が使われたと考えるべきか。


「大量の化け物を、陸と空に一気に出す…‥‥そんなことができるものか?」

「むぅ、無いという訳ではないのじゃがな」

「そうなの?」

「うむ。似たような手段ならば、実は既にあったりするのじゃろ。というかお主らも知っているじゃろ、あの化け物大量召喚滅亡国家の話を」

「‥‥‥そういえばそうか」


 結構前のことだが、ハクロを狙ったとある宗教国家が存在していた。


 その国が取った手段の一つに、全信者を生贄にして化けモノを呼びだして、各国で後始末に追われた事件があったのだが…‥‥考えてみると、今回のケースはそれに似ているだろう。


「とはいえ、ちょっと違うかものぅ。簡易的な検査をしたのじゃが、人為的に生み出された化け物共のようじゃし、どこからか勝手に呼び出したわけでもないのかもしれぬ。いや、人為的なことはそれはそれで大問題しかないのじゃがな」

「となると、また別物というか、似たような類とも言えなくもないか‥‥‥」


 瞬間移動、大量転送等というようなものが、今回の事件に使われた可能性が非常に高い。


 しかし、そんな事を普通のものたちが出来るわけもないし、魔道具や魔法があると言ってもそんな技術自体はまだまだ開発し切れておらず、未だに大量輸送に対して馬車の方が優勢だろう。


 でも、国家レベルの相手が黒幕だとしたらできないとは断定しにくく…‥‥厄介な問題しか出てこない。


「‥‥‥何と言うか、どこの誰かは知らないけど何を思ってこんなことをしたのやら」

「帝国を責めるにしても兵士たちも結構強いし、そもそもハクロがおるからのぅ。アルス、お主限定での守りもあるのじゃろうが、彼女が守りに転じたらそれこそ尋常ではない要塞ぶりになるのを考えると、挑んできたのは愚者かはたまたは無謀な勇者か…‥‥はぁ、またある可能性も考えると本当に嫌な話じゃ」

「キュルル、何度も来ないで、欲しい」


 はぁぁっとそろって溜息を吐きつつ、今後も出てくる可能性に頭を悩まされるのであった…‥‥









「…‥‥ふむ、まずは第1段階、失敗か」

「あそこまで守りを固められるというか、思いのほか相手の戦闘力が高かったようだ」


‥‥‥そして丁度その頃、元凶であるものたちは集まり、話し合っていた。


「怪鳥も捕縛できず、蜘蛛の、いや天使と言われる娘も得られず…‥‥まぁ、今回は捨て駒を利用したから大体予想は付いていたが、流石にここまで圧勝されるとはな」

「なんというか、結果を聞くと彼女だけでも帝国を滅ぼせそうな気がするぞ。まずはそっちから狙う方がいいのではないか?」

「いやいや、無理すぎる。密かに減退、魅了、呪縛などをかけようとしているのだが全部はじかれているからな。お抱えの呪術師全員盛大に呪い返しに合って死亡したからなぁ‥‥‥まったく気が付いていないところを見ると、本当にガッチガチに強すぎるのもあるのだろう」

「マジか、せっかく数が少なくなってきた奴らを保護したというのに、全滅かよ」


 そもそも帝国を今回強襲したのはとある実験を行うためだったのだが、結果としてハクロの強すぎる実力を見せつけられただけで終わっているのだ。


 それでも、彼らは動きを止めることは無い。


「‥‥‥しばらく警戒して、勝手に精神的に疲弊してくれるのが一番いいがな。生憎こちらの方は、もう残ってないからなぁ」

「失敗作、ありったけ放出したからな‥‥‥百から先は数えていなかったが、改めて出してみるとどれだけの試行錯誤をしていたのか理解させられたぞ」

「とにもかくにも、直ぐに次に移るぞ。本当はあの巨大な鳥を利用したかったが‥‥‥まず、あの翼の生えた天使を堕とさなければ何もかもうまくいかないのが目に見えるからな」

「ああ、そうだ。とは言え、どうする気だ?失敗作共でも無理だし、相手の方が圧倒的過ぎるのだが」

「簡単な方法がある。彼女を唯一制御できるあの少年を利用すればいい」

「操りの呪いなどでか?いや、前に試して失敗しただろ。彼女の側にいるからこそ、影響を受けている影響があるからな。それに、彼女自身が常に守っているから何もできないだろ」

「ははは、やりようはあると言えばある。まぁ、その方法をやるとまずこちらの方が色々な意味でやられかねない部分があるが‥‥‥精神を鍛え上げれば問題ないはずだ。何かあれば、我らが神を思い浮かべればいいだけだ」

「…‥‥崇拝している自分達が言うのもなんだが、それこちらが自滅しないか?」



…‥‥悪意というのは、どこからでも生まれるもの。


 そしてその悪意は、動くときは周囲を巻き添えにして動き、被害をもたらすのだ。


「まぁ、殺傷能力はないのが欠点だが‥‥‥少なくとも邪魔なファンクラブとやらの動きも同時に鈍らせるだろうし、悪くはないはずだ」

「そうだな、いざとなれば我らが神を思い浮かべて精神を保てばいいだけの話だしな」

「いや、保てるのか?下手をするともっとヤヴァイような…‥‥」


 約一名ばかり、まともな感性を持っていたようだが、誰も聞く耳を持たない。


 いや、この場にいる時点でまともではないのだろうが、それでも正しい感性とだけは言えるかもしれない。


 とにもかくにも、面倒事はそう簡単に終わることが無いのであった‥‥‥‥

 


何故愚かなものは出てくるのか。

その事は、どこの世界でも解決するものではないだろう。

なぜならば、愚か者は愚か者であると自覚できないのもあるだろうが…‥‥

次回に続く!!




‥‥‥どうしようかな。と悩んでいたりする。この後の展開は決まっているけれども、ちょっとまともっぽいコイツの扱いがなぁ…‥‥

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