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5-10 ゆえに、手は回されていくのだが

「…‥‥ふむ、やはりのぅ」


 帝都から離れたところにある都市アルバニア。


 その地下に存在するモンスター研究所内にて、ドマドン所長は顕微鏡をのぞきながらつぶやいていた。


「やはり、とは?」

「簡単な事じゃ。このサンプルが想像通りじゃったという事じゃよ」


 職員の言葉に対して所長はそう答えつつ、渋い表情で顔を上げる。


「この肉片の細胞が、通常のモンスターとずいぶん似た構造をしていたのじゃけれども、それでも人為的な改造が見えるのじゃ」

「となると、作られたものだと?」

「うむ。とは言え0からではなく、何かの肉片を培養して増やし、むりやり形を作っていたというような者だとは思うのじゃけれども…‥‥こりゃ、中々粗悪じゃのう」


 ここでは今、フックが不味い不味いと味の変わった獲物とやらが運ばれて調査が行われていたのだが、どうやら今、その結果が出たようである。


 ただし、ある程度研究者だからこそ予想できた部分があったが、出来れば当たってほしくない部分が見事に的中したようだ。


「おそらくじゃが、その肉片自体の作成方法は元のモンスターの魔石から、その魔力を利用して変質、再形成して作ったのじゃろうけれども、この様子を見る限り生きたまま使われているのぅ」

「生きながらにして、自分自身を生み出すような真似をされて出来たと?」

「そうじゃな。とは言え、流石に無限とはいかないじゃろう。体力や栄養、その他構成するための物質なども尽きるじゃろうし、そもそも魔石はモンスターの動力源でもあり、心臓のようなものとも言えるのじゃ。お主ら、生きたまま心臓丸出しにされて無理やり動かされて生きれる自信はあるかのぅ?」

「「「絶対ないです」」」


 麻酔も何もなしで、腹を捌かれた状態で無理やり命の源といえるような部分を、強制的に動かされる。


 それがどれだけの苦痛を産むのかは想像したくないが、少なくともそういう方法で生み出しているからこそ、粗悪品しか生まれていない現状が見えてくるだろう。


 問題なのはそんな粗悪品を作り出すことよりも、何故そんなものを作り上げようと、そして思いついたのかが分からない。


「ここ最近、異常な増殖なども報告されておったのじゃが、おそらくはこういう事をする輩が関わっている可能性もあるのぅ。野に適度に放ち、手元のものどもを厳選しているのか、あるいは増やすことに何か意味を持っているのか‥‥‥こんなことをやるのは狂人とも言えるじゃろうし、想像しにくいのぅ」


 狂った人の頭の中身は、下手に賢い人の頭の中身を考えるよりも難しいものである。


 予想もつかないことをされるので、対応がやや後手になりやすく、非常に不味い事態になっているとも言えるだろう。


「でも所長、そういう事が出来るってことは、フックというフクロウやハクロちゃんを狙う目的の一つが見えましたね」

「ああ、おそらくじゃがこの増殖手段に用いる可能性があるのじゃろうな。ハクロの方は確かに魔石も桁違いな代物じゃろうし、フックというのは‥‥‥うむ、あれはあれで粗悪品な者どもを狩る程度の実力を持っているようじゃが、粗悪とは言え本物と寸部変わらぬ強さを持つ獣を狩れる以上、こちらはこちらで強いのは間違いない。もしかすると、強いモンスターを利用することで粗悪品を増しにするか、あるいはもっといい方法があるからこそ、利用するのか…‥‥何にしても、魔石の方を狙っているのは間違いないじゃろう」


 推測できたとは言え、それでもまだ予想し切れない部分もあり、もっと凶悪なものを相手は抱え込んでいるのかもしれない。


「まったく、凡人である儂らには想像つかないようなこともあるじゃろうし、その考えを理解したくもないのじゃがな‥‥‥」

「凡人?」

「所長が?」

「いや、それはナイナイ」


 少なくとも凡人であれば、まともな事をしてくれるはずであると職員たちは口をそろえた。


 そのことに所長は少々むっと来たが、一応最近ようやく自覚してきた部分もあるので、何も言えない。


「とにもかくにもじゃ、帝国の方でも各国でもこの動きに気が付いてあぶりだし始めたようじゃが‥‥‥こうなってくると、相手はどういう手を使ってくるのかぐらいはまだわかるのぅ」

「といいますと?」

「こういう増殖手段を使ってくる以上、自分達への目をそらすことや目的の者をねらうので有れば‥」


 っと、所長が考えを述べようとしていた、その瞬間であった。




ズゥゥゥゥゥゥン!!

「「「「!?」」」」


 突然、周囲に想い爆発音が響き渡り、地下にあった研究所全体が揺れ動いた。


 そしてすぐに揺れは収まったが、全員嫌な予感を覚える。


「今の揺れは‥?」

「むぅ、できれば想像したくなかったのじゃが‥‥‥多分、やらかし始めたのじゃろう。職員全員、非常事態態勢をとるのじゃ!!」


 何が起きたのか報告を聞くよりも先に、直ぐに所長は研究所中に声を響かせる。


 理解するよりも想像できていたほうが動いたという予感は当たっており、この瞬間から動き始めるのであった…‥‥






「‥‥‥キュル、アルス、何か爆発音、聞えなかった?」

「ああ、聞えたよ。何かこう、大きな音がね」


 学園の寮内にて、周囲への警戒を緩めないようにしつつ、自室で復習をしていた時に大きな音が帝都中に響き渡った。


 何事かと思いつつハクロから離れないように傍に付き、護身用の薬を構え、ハクロの方は翼を広げて周囲に糸を展開し始める。


【うぉぉぉい!!大変大変変態大変変態でごぜいぇやすよハクロさんにその旦那さぁぁん!!】


 っと、警戒している中で窓の外から声が響き、見てみればフックが大慌てな様子で羽ばたいていた。


「どうした!!」

【どうしたもこうしたもないのでごぜぇやすよ!!帝都の外で爆発が起きて煙が上がったなぁと思って飛んで上から見れば、滅茶苦茶大量の気色悪いモンスターが発生していたのでごぜぇやすよぉ!!】

「モンスターだと!?」

【しかもかなり多くで、あのほんのわずかな時間でこれだけ出るのはどう考えてもおかしいでごぜぇやすよ!!しかも空からも向こうの方からあっしのように飛べる奴らが!!】


 見て見てと足で指をさす方向の空を見れば、そこを埋め尽くすかのような大群が迫って来た。


 飛行系のモンスターの大群でも攻めて来たようだが、その様子はフックの説明通り気色悪いというか、色々とおかしい奴らが多い。


 普通のモンスターに色々混ざっているというか、溶けていたり腐食していたり、どちらかと言えばグールとかアンデッドとの類に似ているだろう。


 いや、それらよりも更に醜さと気持ち悪さを増したようであり、そんな大群が陸翔空から襲って来るらしい。


「どこの誰だあんなことをやらかす奴は!!」

【どう考えても先日のやつらのお仲間だと思うでごぜいぇやす!!】


 まともなツッコミだとは思うが、そう考えている暇はない。


 帝都中に万が一に備えて作られていた緊急警報装置が鳴り響き始め、城壁が稼働して防壁を作り上げ始める。


 先日の肉塊球体襲撃事件もあったおかげで、帝都の防御力は過去最高に高められているらしいが、それでも迫りくる暗雲と荒波のような大群には、油断できないのであった‥‥‥‥

突如として現れ、襲い始めて来たモンスターの大群。

しかも普通のものたちではなく、その数も物凄い。

一体何をどうやってあそこまで集まってきたのか‥‥‥

次回に続く!!



‥‥‥なお、これはまだマイルドな描写での表現だったりする。規約を考えるともうちょっとやらかすのは不味そうだからね。

個人的には某自称神の天空魔王のようなやつをやって見たかった…‥‥

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