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4-38 だからこそゆったり過ごし合い

‥‥‥この男爵家領地は、現在発展途上にある。


 過去に父であった者のやり方によって貧乏な領地になっていたが、現在ではその影もほとんど見ないだろう。


 あちこちで使えそうな農法やら整備やらを行いつつ、無計画にならないように話し合いをして決めていき、この夏季休暇の時点では余裕を持てていた。


 だからこそ、今の時点でやってみたいことも試すことが出来るもので…‥‥



【ピギャァァス!!】

【ゴゲッゴッゴォォォォ!!】

「ふんふん、アルス、この子たちは一緒で良いって!喧嘩はしないで卵を出すけど、のんびりさせてくれればいいようだよ!」

「そう?だったらそのボールコカトリスはあの小屋の方に転がってもらってほしい。あと、さっき頼んだメタルバッファロンたちの移動は?」

「そっちも完了!皆話せばよくわかってくれたよ!」


 ふふふっと笑いつつ、暑い日差しから守るための麦わら帽子をかぶり、白いワンピースをひらひらさせてそう答えるハクロ。


「よかった、だったらあともう少しいるけど‥‥‥皆、この牧場で生活してくれるってことで良いよね?」

「うん!全員話聞いたけど、地下暮らしも悪くはなかったけど、やっぱりこういうお日様のもとで動きたいって思いもあったようなの!」


 全員というか、全頭というべきか…‥‥いや、細かく数えるとややこしいのもいるし、そこはツッコミを入れないでおこう。


 とにもかくにも今は、この領内に作った牧場に、様々なモンスターたちが住み着いてくれるようである。




 そう、実は前々から、家畜化したモンスターの話などを聞いたときに、この牧場計画をちょっと考えていた時がある。


 既に家畜化されているものを利用するのもありだったが、せっかくモンスター研究所で世話になることもあったのだからと思い、研究の協力も兼ねてこの領内にこの夏季から実験として牧場を作ったのだ。


 モンスターたちの言葉も、翼を生やしてほぼ人の姿に変わったハクロでも分かるようだし、何かあればすぐに翻訳してもらいやすい。


 病気の防止なども薬を精製してどうにかできたりするし、衛生面は安全性を確保できるのだ。


「それに、うまいこと全員がここで生産してくれれば、結果的にこの領内の良い特産品になるんだよなぁ…‥‥」


 順調に発展してきた領地とはいえ、それでもまだまだ油断はできない。


 だからこそ、何か目玉になるような物もあったほうがいいかなと思い、作物などで特産品を作れないかと考えていた中で、モンスターでの牧場を思いついたのだ。


 まぁ、一応研究所の方である程度安全性や生産性も確認されているとはいえ、モンスターはモンスターであり、領民に不安を与える可能性もある。


 なので念のために領民たちの意見も募集して対策をと思ったが…‥‥どうやらそこは柔軟に受け止めてもらえたようで、むしろ進んで協力してもらえることになった。


 ミルクや卵を卸すこともできるし、人員として雇う事もできる。


 飼育しているものによってはふれあい牧場のようなものも作成可能であり、そこでより一層楽しませることもできる。


 何かとやれることが増えるので、快く歓迎されたようだ。


「でも、意見の中には出来れば領主夫妻が働くところを見たいとか、あるんだよなぁ‥‥‥挙式自体は先なのに、なんで既に夫妻扱いなんだろう」

「でも、間違ってないよね?私、アルスのお嫁さんで、妻だもん」

「そりゃそうだけどね」


 ちなみにだが、挙式云々関しては卒業後に行える見通しが立ってきていたりする。


 様々な壁があったが少しづつ砕いており、もう間もなく全壊させられるようだ。正妃様とかも積極的に動いてくれているようで、法律面から改善されているからね。


 ただ、問題としては挙式…‥‥結婚式なんだが、前世のイメージとしては教会で行うというのがあったのだけれども、この世界だとすべてがそうでもない。


 貴族家であればその本家の屋敷でやっていたり、国が違えば三日三晩祝いムードになるところもあるようだし、反対にたった二人だけのすごい消極的なものもある。


 どういう形式が良いのか、どの程度人を呼べばいいのか‥‥‥‥そのあたりで悩まされてしまうのだ。現状だと意見書の中で領民全員が出席したいってあるし、この領内でやるべきかと検討をしていたりする。



「まぁ、それは後で考えればいいか。ハクロ、もう終わったかな?」

「終わったよー!各自でくつろぎつつ、居場所を念入りに確認するって。ああ、あとメタルシープさんたちが早めの毛刈りを訴えているの」

「そう言えば、かなり毛が多くなっていたな。牧場をやってそうそう、まずは毛刈りからやってみよう」

「うん!」


 日差しはやや強くなってきているが、それでもまだまだ過ごしやすい時期でもあり、ハクロと一緒に羊毛刈りへ動き出す。


 モンスター牧場の実験経営初日は、問題無いようであった‥‥‥‥



「でも、問題として、結構出てきたのもあるかも」

「あるの?」

「物理的な物じゃなくて、ちょっと、所長おばあちゃんへの愚痴大会、始まっちゃったの。共感し合って頷くのはいいけど、これまで研究所で何をやらかされたのか、心配になった」

「…‥‥結構たまっていたのかもなぁ」


 ドマドン所長、本人にその気がなくとも研究所内で大勢を巻き込むことをやらかすからね。人に限らずモンスターたちもその点に関して文句はあったんだろうなぁ…‥‥







‥‥‥ヘルズ地方内で、のんびりした空気と少々の呆れが出ていた丁度その頃。


 帝都の王城内では、正妃が動いていた。


「‥‥‥うんうん、領内でモンスターでの牧場は面白そうね。その報告の方は、後で面倒をかけるような輩がいないか調べておいて、他の件はどうしたの?」

「はっ、こちらとしても探りを入れ始めましたが、どういう訳かこれまで浮上してこなかったものがあったはずなのに、かなり杜撰な状態でボロボロ出てきている様子です」

「そう‥‥‥多分、天罰なのかしらね」


 正妃の言葉に対して、仕えていた侍女やその他の商人たちが報告を行う。


 そしてその報告を聞き、ふぅっと正妃は息を吐きつつ考えこむ。


「‥‥ハクロちゃんがより一層綺麗になってくれたのはいいけれども、元凶ともいえる怪物に関しては、放置できない。だからこそ潰そうとは思ったけれども、すごい自滅してきているようね」

「ええ、内容によると突然実験失敗して自爆が起きたり、見事に繋がっていた他国の貴族家が潰れ始め、そこからどんどん情報が流出していたりと、次々に不幸に見舞われているようなのです」


 放置できないような悪しき者たちがいたことは分かっていたが、報告を聞く限り妙な速度で自滅をしている。


 普通はあり得ないようなミスを引き起こしたりするせいで、どんどん足元からか崩れているらしく、背けるための壁になっていた者たちも吹き飛ばされ始めているようだ。


 この調子で勝手に自滅してくれればソレはソレで楽でいいのだが、この速度を考えると‥‥‥何かの意思が働いているようにも思えてしまうのだ。


「‥‥‥でもまぁ、結局のところ因果応報なのかもね。誰かが手を下す以前の問題に、背負ってきた業が返っているのかもしれないわねぇ」


 そのつぶやきを聞いていた者たちは同意し頷き合う。


 一応、こちら側が手を出す必要はそんなに無さそうだが、それでも面倒事は勝手に生えてくる。


 だからこそ、事前にある程度の可能性も考慮して、徹底させたほうが良いだろう。


「何にしても、帝国の民はわたくしの子供たちであり、守るべき存在。あの子たちも強いのだけれども、やっぱりどうしても手を出してあげたくなるわね…‥‥だからこそ皆、全員手を出さなくてもいいように、今のうちに終わらせておきましょう」

「「「了解」」」


 正妃の命令は使用人たちなどにとって絶対でもあるが、命令を下さずとも動く気ではあった。


 何しろ彼らもまたファンクラブ会員であり、やれることはどんどんやっていきたいと考えているからだ。



 そんなわけで領地から離れた帝都からでも、アルスたちを見守る動きが活発化しているのであった‥‥‥‥


「ああ、そうそう。忘れていたわ。夫が今度、休暇明けに表彰式を行う予定らしいのだけれども、その手助けとしてヘルズ地方周辺の領地の状態や貴族家も調べてくれないかしら?数年前の領地乗っ取り未遂の事件もあってある程度は綺麗にしているけれども、統合予定があるの」

「はっ。しかし、統合予定とは…‥?」

「それはまだ未確定だから内緒ね。でも、夫の考えることはすでに分かっているのだし、その考えを邪魔されないようにこちらからきちんと手を回して上げる必要があるのよねぇ‥‥‥‥」




お試しモンスター牧場経営、開始。

試行錯誤な部分もあるが、どうにかこうにか領地に根付かせたいところ。

その一方で、動くところもあるのだが…‥‥

次回に続く!!



‥‥‥書いていて思ったけど、正妃が皇帝の考えを先読みして動いてない?この人、裏の女帝になってない?

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