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2-7 流石にこれは聞いてないけど

本日2話目。

けれども明日はちょっと都合で、出せない可能性もあり。予約投稿できるほどかけたらしたいところ。

…‥‥手続きを行えばハクロを堂々と人前に出せるらしい。


 ガルバンゾー講師に相談してその話を聞けたのは、かなりの大収穫である。


 そして、手続きに関してちょくちょく相談し合い、講師というのも堅苦しくなってきたのか、気軽に先生と呼んで良いと言われつつ、なんとか数日ほどかけてまとまってきたころ‥‥‥




「‥‥‥え?最終的な決定は‥‥‥皇帝陛下の元で、謁見しないとだめなのですか?」

「ああ、そうだ。というのも、そのモンスターが本当に安全なのかどうかという点を、皇帝陛下が直々に確認することで手続きを終えるらしい」


‥‥‥まさかの最終手続きは、この帝国を治める皇帝の元へ、ハクロと一緒に謁見すること。


 皇帝自身が直々に見定めるらしく、本当に安全なのかどうかを自身の目で確認して、ようやく許可を貰えるそうなのだ。


「本来であれば、皇帝陛下ではなくモンスターについての研究を進めているとある研究所の所長の元へ向かい、そこで検査を受けてからなのだが…‥‥どうも、皇帝陛下が興味を持ってしまったようだ」


 話によれば、先生は先生なりの伝手を使って、万全の状態で難なく手続きを進め、無事に終わらせるつもりだったらしい。


 だがしかし、その伝手のどこかで皇帝に目を付けられたようで…‥‥介入されてしまったそうなのだ。


「新入生であり、まだ若いお前に皇帝陛下の元へ謁見させるというのは、精神的な負担がかかるかもしれないということは話したのだが‥‥‥駄目だった。最後の方で、重い責任を負わせそうな手続きができてしまい、申し訳ない」

「い、いえ、先生が謝る必要はありませんって!!」


 謝って来た先生に対して、僕は慌ててそう答える。


 講師は全然悪くもないのだが…‥‥皇帝陛下への謁見かぁ。


 まだ自分は10歳の若い身なのに、しかも身分としては男爵家の3男という低さなのに、何で皇帝に目を付けられてしまうのだろうか。


 いや、原因は思いっきりハクロに関しての興味を持たれた可能性が大きいのだが…‥‥一応、学生という事を考慮してもらい、休日の午前中に謁見する日が決まったようだ。


 なお、その日は先生の方も外せない予定があり、付き添うことはできないそうだ。


 なので、どうやってハクロを連れて謁見しに向ったらいいのかという話ではあったが、皇帝自身が迎えの馬車を遣わしてくれるらしい。


 何にしても、帝都の中にある王城へ、向かう羽目にか…‥‥





「‥‥‥ハクロ、皇帝との謁見で手続きが終わるらしいけど、どうしよう」

【キュルルゥ?】


 寮の自室へ戻り、部屋で待っていたハクロにそう告げると、どういうことなのかと言いたげな表情を浮かべられた。


「要は、この国で一番偉い人の前に直接出て来いってことなんだよね…‥‥いや本当に、何で僕らが目を付けられるのさぁ‥‥‥」


‥‥‥前世の記憶があるとは言え、この世界での僕はまだ10歳の少年。


 精神面での年齢は前世の分も足すのだろうけれども、それでもこの世界で生きていた方の精神が強いようで、かなり重荷に感じてしまう。


 そもそも、貧乏領地の男爵家の3男であり、貴族としての階級を見てもどう考えても低いのに…‥‥何故、トップの人が直接目を付けるのだろうか。例えるなら何の変哲もない平社員に社長が目を付けるとか、やくざの親分が子供に声をかけるとか、そんな感じなんだけど。


 というか、きちんとモンスターを研究している研究所とかもあるのだし、そっちの人に任せれば良い話しなのに、わざわざこちらの方に目を付ける意味が分からない。


 それだけ僕らに興味を持ったのか、あるいは気まぐれなのか‥‥‥何にしても、相手は格上過ぎる権力者だ。



「謁見となる時点で、貴族作法の授業を受けているからある程度の作法を活かせるからよかったけど、こんな形で活かしたくはなかったよ…‥‥」


 プレッシャーが凄まじいというか、感覚的に相手が皇帝だと考えると、荷が重すぎる。


 ちょっとストレスで潰されそうになっていたのだが…‥‥ハクロが机の上に置いてあった解除薬を飲み、元のサイズに戻った。


【キュルルルゥ】


 そして慰めるかのように、嘆いていた僕の体を持って、そっと抱きしめてくる。


 優し気に、ふんわりとしており、柔らかく温かい。


【キュルキュルル、キュー】


 大丈夫大丈夫、というかのように抱きしめながらそっと撫でてくるハクロ。


 どうも今の心情を察してくれているようで、慰めてくれる行為に、僕は少しホッとする。


「‥‥うん、そうだよねハクロ。荷が重すぎて、嘆いていても仕方がないよね」


 ちょっと元気が出たというか、何というか、今の励ましで重かった気が少しだけ軽くなったような気がしてきた。


「ハクロを隠さずに済むように、堂々と一緒に生活できるように、しっかりしないといけないもんね。‥‥嘆いている暇は無いな」


 ぐっとこぶしを握り締め、抱きしめてくれたハクロの頭に手を伸ばし、撫で返す。


「ありがとう、ハクロ。おかげで元気が出たよ」

【キュルルゥ~♪】


 撫で返されたのがうれしかったのか、ニコッと笑って返答するハクロ。


 うん、気が重いからって、ここで現実逃避してもいけないだろう。


 謁見を行うのは、今度の休日の午前中であり、そう長くはないはずである。


 その時間を無事にやり過ごし、きちんと手続きを終わらせれば、晴れて堂々とハクロも人前に出ることができる。


「良し、せっかく先生も手続きに協力してくれていたのだし、そのありがたい努力を無駄にしないように、下手にやらかして不敬だとか無礼だとかならないように、謁見に対してしっかりと対策を取ろう!!」

【キュルル!】


 僕が意気込んでそうはっきりと言えば、わかったと言うように元気にハクロが返事をしてくれた。


 うん、男爵家の3男だから皇帝相手の謁見が荷が重いと言えども、今回は精々必要な手続きを行うための過程に過ぎないだけの話。


 何かこう、色々言われまくるとかそう言う事でもないだろうし、むしろ皇帝という大きな存在に出会う事で、精神面的に強くなる良い機会でもある。


「それじゃ、対策会議を始めようか!」

【キュル!】


 まずは、貴族として皇帝相手にはどういう格好なのが一番良いのかという話からし始めるのであった。


「謁見となると失礼の無いように正装が必要だけど…‥‥でも、僕が正装するならば、ハクロもしっかりとした正装が必要になるよね」

【キュルル、キュル】

「ああ、自分で作れるんだっけ。だったら、見本となる衣服になるような物が無いか、図書室の方から借りてきて‥‥‥」


‥‥‥こういう時に、学園という教育機関にいる身なのはありがたい。


 学園の図書室の方はかなりの蔵書があり、授業でもその蔵書を先に見て予習しておけばいいという話もあるからね。


 彼女に似合いそうな衣服とかの見本になりそうな絵が載った本も、確かあったはずだし…‥‥探しに行こうか。あと、ちょっとは話せた方が良いかもしれないし、ハクロの言葉の練習も進めよう。










…‥‥アルスがハクロと一緒に、謁見への対策会議を行い始めていた丁度その頃。


 その対策相手である皇帝は今、自身の執務室内にて報告書を読み進めていた。


「…‥‥難しい問題というか、こういうのを見抜けなかったとは、まだまだ余の目は甘いという事か」


 はぁっと溜息を吐きつつ、彼はそうつぶやいた。


 その報告書は、アルスの男爵家についての詳しい調査内容が書かれたもの。


 色々と疑いの目があり、間諜などを用いて様々な面で調査を進めていたのだが‥‥‥‥ある程度予想はしていたのだが、こうやって改めてみると中々面倒な問題であったことが十分に認識できてしまった。


「皇帝たるもの、国民を愛し、貴族をしっかりと律せねばならないと学んでいるというのに…‥‥こういうところで見落とすこともあるとは、自身に足りない部分があるのは情けないものだな」


 自身に対して言い聞かせるようにつぶやくが、人間は全てを把握できるわけではない事は理解していても、どうしようもない気持ちだけが浮かぶ。


 報告書の内容では、家族構成やその他アルスが産まれた時からさらにそのちょっと前までのことが事細かにつづられているのだが…‥‥目の届かなかった貴族家から立ち上る闇に、少し頭が痛くなるような気がしてきた。


「何にしてもだ、まずはアルスという者を見定めねばな…‥‥このような環境で、良く無事に育てられていたのは驚きだが、何処かが歪んでいる可能性がありかねないからな」


 というかこの報告書内容を見る限り、アルスが今日まで無事に生きていたこと自体が奇跡に近いとも言えるものであった。


 もしも、何処かで何かが狂えば、それだけでヘルズ男爵家の名はあっという間に貴族の末席から消えるほどである。


 けれども、その名が本当に消えるかどうかは、結局のところアルス次第。


 場合に依っては、本人の望むようにしてやりたいところもあるが…‥‥出来れば潰したくもない。


「何にしても、ガルバンゾーはうまい事手続きをするところまで進めてくれたのは良かった。普通なら余が見定めに行くこともなく、偶然にも目を付けたという説明で納得させたようだが‥‥‥‥おかげで、しっかりと自分の目で確かめることができるだろう」


 城に勤めている侍従がそっと運んで来た紅茶を飲んでひと息を入れながら、窓の外を見てそうつぶやく皇帝。


 アルスにとってはまだ若いのに直接精神的に負担をかけるような真似をしてしまうのは悪いとは思うのだが‥‥‥それでも、皇帝という立場上、こうでもしなければ自身の目で見にくいのだ。


 報告で聞くのもありだが、やはり自分の目で確かめないと分からないこともあるし、何よりも皇帝自身には見抜くための方法があった。


「ああ、権力とは厄介なものだな。馬鹿にならないほどあるがゆえに、制限される部分もある…‥‥だが、こういう時には役に立ってしまうのも、どうなのだろうか…‥‥」


 そうつぶやきながらも、皇帝は飲み終えたカップを置き、再び報告書に目を通しながらアルスが謁見してくるその時まで楽しみに待つことにした。


「しかし、ハクロというモンスターにも興味があるが…‥‥報告書の内容を見る限り、彼に十分懐いているようだが…‥‥懐き具合を見る限り、将来的に彼は責任を負う羽目になるだろう。美女というのは羨ましいが、押しかけ女房みたいなのは少しごめんだな」


 はははっと、まだ見ぬ先を想像して少し笑ってしまい、報告書を持つ手が少し震えてしまう。


 何にしても、今度の休日の謁見時‥‥‥そしてその後の方でも、色々と楽しめそうなのは良い事であると皇帝はそう考えるのであった。


「まぁ、こちらの鬼嫁に比べれば可愛いものか。子を産み育てても美しさは衰えないとはいえ、激怒した時の表情はまさにオーガのごと、」

「誰が、オーガなのかしら?」

「‥‥‥‥」


…‥‥ついうっかり口を滑らせたところ、言い終える前に背後から聞こえてきた声に、思わず皇帝は時間が止まったように感じてしまった。


 だが、残念なことに時は進んでおり、その証拠に皇帝の背中には滝のように冷や汗が流れ始め、自身の身の危険に警鐘を鳴らしまくる。


 がくがくと手足が震え始め、周囲の気温がどんどん下降していき、逃げ道を探すも気が付いたときには肩には手が置かれて、いや、がっしりと肉に食い込むほどに力強く掴まれていた。




 悲しいかな。皇帝という権力を持っているとはいえ、相手が悪すぎて全く通用しない。


 その日、王城内でとてつもなく大きな悲鳴が響き渡り、城内にいた者たちは何が起きたのかを察し、慣れた様子で関わらないようにするのであった…‥‥誰だって、巻き添えにされたくないのである。


ドキドキと不安で心臓がなるが、避けられないことである。

ならば、いっその事腹をくくって正面からやるしかないだろう。

これが成功するか否かで、今後が決まりかねないのだから…‥‥

次回に続く!!



‥‥‥そう言えば、せっかく学園という教育機関にいるのに、友人が全然出せてないな。

まぁ、もうちょっとで出せるだろうし、今は謁見の方に集中させるか‥‥‥

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[気になる点] 2-7 >精神面での年齢は前世の分も足すのだろうけれども 前世の記憶が戻ったの10歳の時だし、単純に足していいのかな。
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