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4-11 きちんと真面目に受けているのだが

‥‥‥高等部ともなると大体の一般教養は初等部や中等部で終えているので授業の数自体は減るのだが、卒業後の生活に対しての授業が増えてくる。


 平民であれば就職やその他の道へ、貴族であれば領地経営や商売関連などが目に付くようになっていき、内容として色々と濃くなってくる。


 ついでに言うのであれば、モンスター研究科目のような授業自体もこの辺りで終わりを迎え始め、研究者への道を志し始める人もいるなど、将来に対して一番考え込む時期になるだろう。



「…‥‥ところで、先生。ハクロちゃんが参加している理由は何でしょうか?」

「頼み込まれたのよね。【私、アルスのお嫁さんになるけど、貴族家ということは、きちんと恥ずかしくない、夫人としての教養、しっかり身に付けたい!!】って言って来て…‥‥その心意気を認めて、参加してもらったのだけれども…‥‥」

「…‥‥これはこれで、どうするべきなのかしら」


‥‥‥ここでは今、舞踏会や晩餐会、その他貴族としての交流の場に出るための必要事項として身に付けるべきお化粧に関しての授業が行われていたのだが、女子生徒たちの問いかけに対して、担当していた教師は言葉を詰まらせていた。


 ここで色々と化粧をしてもらいつつ、相手に対してどのような印象を与えたり、自分の美しさを際立たせたり、婚約者がまだいないのであれば殿方を落とせるような魔性の化粧を施すつもりであった。


 だがしかし、「美しさ」に関しての感性には人それぞれの好みもあるので難しく、そのため今回はできるだけ自然にかつちょっとだけ目立つ程度のものを施したはずではあったが…‥‥そこで受けていたハクロに、問題があった。


【キュル‥‥‥お化粧、難しい。うまく、できない】

「いえ、出来てはいるのよ。自然さを出す類なら、適材なのだけれども‥‥‥‥これはちょっと、適材適所過ぎたわね‥‥‥」

「むしろ、余計なことをしないほうが、世のためのような気がしてきたのだけれども」

「「「美しさって、不公平」」」


 一人の女子生徒のつぶやきに対して、落ち込みながらも深く同意し合う生徒たち。


 彼女達の視線の先には、化粧を施されたハクロがいたのだが…‥‥その美しさは、普段以上に極まっていた。


 そもそも、ただでさえ何もしていない普段の姿でも、子猫のような可愛らしい素振りや懐きぶりを除けば美女のハクロ。


 元から美しい容姿をしており、最近ではアルスとの仲がより深まっているせいか、より美しさを増していた。


 そんな中に、ほんの僅かでさえも引きたてるような化粧を施せば‥‥‥‥それこそ、美の化身というような容姿に変貌してみせたのである。


 その容姿の美しさは筆舌で言いつくせず、自身の容姿に自信がある女性たちにとっても、彼女の前ではかすんでしまうだろう。


 1+1=2という計算式を、1+1=∞というような、頭の悪い計算に変えつつ加えてはいけない物を足したような、禁忌の光景が出来上がってしまったのであった。


「‥‥‥先生、彼女に化粧は不味いと思います。婚約者、奪われかねません」

「そうよねぇ…‥‥ハクロちゃん、スッピンの方が向いているわよね」

【そう?そっちの方が、楽】


 ごしごしと直ぐに化粧を落とし、いつものハクロの容姿に戻り、女子たちはほっと安堵の域を吐いた。


 美しいものに、より美しくなるような手を加えると、それこそ何重にも重ね掛けするような効果を見せてしまう。


 異性であれば確実に撃ち抜かれ、同性でも自身に自信を喪失させるような化粧…‥‥何て恐ろしいものなのだろうか。


 この世の中には加えてはいけない物の恐怖がある事を、この日彼女達は身をもって思い知らされたのであった…‥‥


【キュルゥ‥‥‥でも、化粧したほうが、夫人として良いかもって思ったのに』

「いえいえ、そんなことは無いわ。貴女が大事な相手にとって、一番に思われることが重要よ」

「そうそう、誰に思われるよりもまずは、ハクロちゃんが大事な人にとって本当に大事に思われるのが良いのよ」

【…‥‥うん、そうかも】

((((というか、そうでないと確実に私私達(わたし・わたくしたち)の存在意義が危ない))))


‥‥‥ついでに一致団結させる心も芽生えさせ、結果としてはいい方向になったようであった。


 なお、『異性であれば確実に撃ち抜かれ』とあったが…‥‥その犠牲者が既に出ていたことなどは、この場にいる者たちは知らないのである。












「…‥‥そうか、大輪の花が咲いたか」

「そのようでございます。そのせいで、何人かの影や間諜が出血多量で搬送されましたが…‥‥それでも、情報は得たようです」


 お化粧に関して諦めて、他の女子生徒たちと交流することでより貴族の女性としてどのようなものがいいのかという事をハクロが学んでいたころ、帝国の王城内で、皇帝はその報告を聞いて呆れていた。


「そのおかげで、他にも潜んでいた輩もあぶりだせたのは良いのだが‥‥‥生きているよな?」

「そのはずです」

「ただ、血が足りなくなって輸血が急がれる状況です」


…‥‥帝国としては、ハクロがこの国内にいることは、色々とプラスになることが多い。


 だがしかし、その反面いらぬ輩もやって来るのでその排除の手間がマイナスになるのだが、未然に防ぐことで損害を減らせはする。


 そのため、ある程度の監視の目も常につけていたのだが‥‥‥‥本日は思ったよりも釣れつつ、無差別攻撃を受けたせいで、使い物にならなくなってしまった者たちが出てしまったのは苦笑するしかなかった。


「まぁ良い。彼女は妻も目をかけているからな…‥‥何かあればそれこそ、恐ろしいことが起きるだろう」


 口にしつつ、想像してしまったのか思わずぶるっと身を震わせた皇帝に対して、臣下たちは同情の目を向ける。


 こちらはこちらで、仲睦まじい夫婦としての姿が国民に認知されているとはいえ‥‥‥そのパワーバランスのありようを彼らは知っているのだ。


 だからこそ、崩れた時の恐ろしい光景を想像するのも容易く、出来れば何事もなければいいと願ってもいるのである。


「それにしても、もう間もなく学園生活も終わりを迎えるだろうが…‥‥彼らにかかる火の粉は、まだ来るか。いや、元々はこちらへ向けてのもののようだが…‥‥話題に事欠かぬな」

 

 真っ赤な花が咲いた後始末に関しては投げ捨てつつ、ついでのように出て来た報告に関して皇帝は眉を顰める。


 色々と目立つ分、狙う輩が出てきてもおかしくはないとは思っていたものの、こうも出てくるのは予想通りとは言え面倒さはある。


 でも、放置するわけにはいかないだろう。過去に存在していた国々の中には、放置をし続けた結果、滅亡した国もあるのだから。


 帝国の長い歴史があるからこそ、そのような物事を学ぶことができ、滅亡しないように動くことができるのだから。


「だが…‥‥中には盛大に裏切って、こちらに情報を伝えてくるのがいるのもどうだと思うのだが。‥‥‥帝国内で一番の脅威は、敵すらも知らずに引き込む彼女ではないかと思えてしまうのは気のせいだろうか」

「‥‥‥何とも言えませんね、陛下」


 遠い目をしながらそう口にする皇帝に、臣下たちも目をそらしつつも同じことを考えてしまっていた。


 とにもかくにも、相手が勝手に弱体化してくれるのは手間が省けるので、色々と考えない方がこの事態を早く解決するかもしれないと思うしかないのであった…‥‥





【アルス、見て見て、お化粧諦めたけど、ちょっと髪型変えて見た!】

「おー、これもけっこう似合うよね!…‥‥でもハクロ、後ろ振り向かないで」

【え?何で、キュル?】

「いや、ちょっと普段と違うだけでかつ、まだ来て間もない新入生も学園内にいるからね…‥‥あ、運ばれていったなぁ‥‥‥」


穏やかに過ごす中で、聞えてくる物騒な話し。

けれどもそれは、彼女の耳に届く前に、色々な人たちが動いて排除をしているようだ。

まぁ、その最中に勝手に相手が自爆をしてる気がするのだが…‥‥

次回に続く!!


‥‥‥職に就き、土曜出勤、来ちゃったな。最近忙しくて、返信が遅れ気味なのは申し訳ない。

そう言えば、今回は教師の手も加えて化粧したけど、これが徹底的に極めたプロの人達に行われてしまえば、どうなってしまうんだろうか?


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