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2-5 知れそうな機会は逃してはいけない

本日2話目。

出来れば一日一話ぐらいにしたいのに、調子が良い時は結構出るな‥‥‥

…‥‥学園での授業を受け始め、数日後。


 ある程度、授業がどの様な形式で進み、各科目によってどのぐらい覚える内容に差があるのかなども把握してきた。


 そして本日は、待望のというか、待ちに待ったというべきか…‥‥知りたい情報が得られそうな授業の日である。




 席について見れば、この授業は思ったよりも人気が無いのか生徒の姿があまりない。


 そして兄たちも当然取っていない授業のようで、姿を見ないのだが‥‥‥‥まぁ、それはどうでもいいだろう。



 着席して数分後、授業開始と共に講師の方が教壇に立たれた。


「えー、今年度の新入生はこれだけか…‥‥思いのほか少ないが、まぁ良いだろう。諸君、『モンスター研究科目』という名前そのままの授業だが、入ってくれたことに感謝しよう。私は、この科目を受け持つ教員、ガルバンゾーである!」


 教壇に立った講師は目力は強く、筋骨隆々と言うべきか、どう見ても教師というより軍人だというようなオッサン。


 鍛え抜かれた感じがするのだが…‥‥この人が、この授業の講師になるようだ。


 イメージ的には、こういう授業科目だと博士的な人が受け持つと思っていたのだが…‥‥


「ああ、先に言っておこう。この肉体美でこの科目を持つ様な講師に見えないと思う生徒はいるだろうが…‥この肉体は、趣味の筋トレで鍛えられ、自然となったものだ。なので、授業を受けていても筋肉が増量することはない事は頭に入れておいてくれ。ちょっとしたクレームがあったからな‥‥‥」


‥‥‥何かこう、これはこれで聞いてみたいような部分が出来た気がしたが、それは置いておこう。


 とりあえず今は、真面目に授業を聞き始めることにした。






 そもそも、モンスターとはどういう存在なのか。


 通常の動植物のようなものに近い存在もいるのに、それらとははっきりと違う存在。


 体内に魔石と呼ばれる物体が存在することでモンスターであると判別が付くようだが…‥‥その生まれには、謎が多い。


「自然発生、自己繁殖、他者を利用しての繁殖に寄生、はたまたは人為的な生まれ‥‥‥っと、モンスターの誕生の要因を述べると、様々なモノが多い。とは言え、生まれつきそのままの姿で生涯を終えてしまう訳でもない」


 ガルバンゾー講師が述べた例としては、スライムが一番わかりやすい。


 この世界での一般的なスライムは、前世のゲームにあるような水滴プルプルではなく、ドロドロに溶けた液体に近いそうだ。


 弾力性を持ちつつ、中に蠢く魔石が存在しており、周囲を融解しながら自身の栄養源にするらしい。


「だが、その栄養によっては大幅な体の変化を‥‥‥モンスターとしての自身の種族を切り替えることがある。環境の変化によって引き起こされたり、はたまたはその時の精神状態、体調などによって細かい部分はさらに変わっていく」


 鉄分を取り込み、カッチコチの頑丈な金属ボディとなったメタスライム。


 スライム同士が喰らいあい、濃縮された結果より濃い巨大な個体となったキングゥスライム。


 葉っぱばかりを食べた結果、自ら光合成で栄養を作るようになったプラントスライム…‥‥その他数多くの種類が存在しており、様々な要因によってモンスターに起こる変化は、スライムが一番わかりやすい。


 そして、スライムに限らずモンスター全般でその変化が起きることがあるのだとか。



「この急激な変化を、進化や存在昇華、急速変化などと呼ぶ。バラバラなのは、そのモンスターがどのように変化するかによって、色々と変わってしまうところが多いのが原因である」

「なるほど…‥‥じゃぁ、やり方によってはわたしたちが人為的に要因を作り出し、都合のいいモンスターを生み出すことも可能という事ですか?」

「半分正解で、半分不正解だ」


 生徒の一人が質問すると、講師はそう答える。


 半分正解だという意味は、現在家畜となっているモンスターがいる例が該当する様だ。


 あれらもまた、元々は凶悪なモンスターであったそうだが、根気よく改良を勧めたり、信頼関係を作り上げ、元々あった牛や鶏などと交配させていった結果、従来の家畜よりもさらに高品質な肉や卵を生み出せる生物に変わったそうである。


 だが、半分不正解というのは、人間が全てを操れるわけでもないという事のようだ。


「そもそも、モンスターと言えども意志が無いわけでもない…‥‥それらを押さえつけ、無理やり都合よく改変することができるのは人間にとっては手に余る領域のようでな、過去に大失敗でひどい被害を生み出し、滅亡した国もあるのだ」


 人畜無害な類とか、何かあっても簡単に討伐できるような輩であれば問題はなかったのかもしれない。


 だがしかし、人畜無害どころか有害すぎるうえに、強力過ぎるモンスターが誕生してしまい、制御することもできずに大災害そのものとなってしまったケースがあるようだ。


「それはそれで強すぎたうえにどこかで自己崩壊を起こし収まったそうだが…‥‥何にしても、人が全てを制御できるとは思わないほうが良い。先ほど例に挙げたスライムでも、操作を試みた結果、人を喰らいつくすだけの化け物となった例があるそうだからな」


 ガルバンゾー講師のその言葉に、想像してぞっとする生徒たち。


 なんというか、異世界では定番のスライムとかでも、そんな恐ろしいことになるのか‥‥‥‥怖いな。



「‥‥‥まぁ、今のは都合のいい質問だったからこそ、怖がらせるような事を言ったが、恐怖しすぎるのも良くはない。中には、友好的に接してくる場合もあるからな」


 少々全員の背中が寒くなってきたところで、話を切り替えて講師はそう語りだす。


「そうなってくる相手がいるのであれば、こちらも真摯に対応したほうが良い。信頼関係を築けるのであれば、築いても損はない。モンスターの生み出す資源は、人の手ではどうしてもできないのが多いからな」


 モンスターの体から生み出される素材は、普通の獣などでは手に入らないものが多い。


 魔石自体は動力源の一つとして重宝されるようだが、魔石以外にもモンスターはあらゆるものを生み出せる可能性を秘めているからだ。


「綿のように軽い金属に、燃えにくい衣服や薄着なのに常に暖かい衣服を生み出す毛糸‥‥‥と、生活に必要な素材から、場合によっては軍需品など、モンスターは人にとっては扱いにくくもあるが、その分かけがえのない物を生み出してくれる相手と言うのも理解してもらおう」


 怖い存在という面を見るだけではなく、人と付き合う事で可能性を見せる面も、講師は語る。


 授業時間は限られているはずだが、それでも熱弁を振るい、僕らを話へ引き込むのであった‥‥‥‥








「‥‥‥っと、そろそろ授業の終了時間だ」


 真面目に授業に取り組んでいたら、思いのほか時間は流れていたようである。


 最初の授業なのに、中々量がすごかったような気がしたなぁ。


「では、本日はここまでだ。何か質問があれば、受け付けるが‥‥‥聞きたいことはあるか?」


 ガルバンゾー講師が問いかけてくれば、手を上げると他の生徒たちも同じように手を上げて問いかけようとしていた。


「講師自身は、モンスターを飼うなどしたことあがるのでしょうか?」

「ああ、あるとも。とは言え、あくまでも研究目的でだがな。‥‥‥惜しくは、モンスターの生態系が十分に把握しきれないこともあり、数日のうちに命を失くした悲しい事件もあったがね」


「モンスターってあまり見ることはないんですけれども、よく見られる場所とかはあるのでしょうか?」

「あるぞ。一番良いのはダンジョンと呼ばれる特別な場所だが‥‥‥生憎、初等部の生徒たちは立ち入り禁止だ。新入生はまだ未熟でもあり、勝手に入りこめばそれこそ留年が即決定すると言っていいだろう。厳しいだろうが、そこは非常に危険でもあるからな。詳しい話は、次回の授業だ」



 各生徒たちが質問していく中で、ようやく僕にも回って来た。


「モンスターの姿はかなりあるようですが…‥‥人の姿になったりするようなのもいるのでしょうか?」

「ああ、いるようだが…‥‥記録はそう多くはない。というのも、人の姿になるものはどういう訳か何かしらの強い力を持つそうだが、本能的に人前に姿を現すことはしないようなのだ。強さゆえに、邪心から狙う輩がいるというの分かっているのかもしれん」


 話を聞く限り、ハクロのようなのがいることはあるらしい。


 けれども、そうそう見る事もなく、非常に珍しいようだ。


「それにだ、場合によっては先ほど述べた進化、存在昇華によって変化しているのもいるだろうが‥‥‥人に近くなる変化をしたモンスターの話については、そう述べることは出来ない。何やら国の方でそのあたりの情報が統制されているようだが‥‥‥仮に、実物がいるのであればそこで話せるだろう。なので、これ以上はこの場では無理だということを言っておこう。ああ、これ以上の質問は受け付けんぞ。もっと知りたい生徒がいるのならば、放課後に職員室へ向かい、そこで私の部屋を聞いてやってくるがいい。貪欲に知識を求める生徒は、大歓迎だ」


 そう言い終え、講師への質問は終わり、教室から去ってしまった。



…‥‥ただ、話を聞く感じ、ちょっとハクロの種族に関しては分からないのだが、何となく存在自体に大ごとが潜みそうな気がしてきたんだけど…‥‥うん、ここまで聞いたら、徹底的に知りたい。


 貪欲に求めたいのであれば受け入れるようだし、聞きに行ってみよう。知る機会は、逃したくはないもんね。


 ついでに、ハクロも一緒に連れてこよう。直接見せたら、もっと話が聞けそうだしね。


 そう思いつつ、放課後の予定を頭の中で僕は練り始めるのであった…‥‥










‥‥‥アルスが放課後の予定を立てはじめていたその頃。


 学園の廊下をガルバンゾー講師は歩いていたが、ふと足を止めた。


「…‥‥ここまで言っておけば、あの生徒は動くのだろうか?というか、現物を持ってくるのかどうかということになるが、皇帝陛下はどう考えていらっしゃる?」


 そうつぶやくと、その背後に音もなく人影が現れる。


「‥‥‥陛下の考えでは、自然に接触し、相手から動いてもらうようにしろという事のようだ。なので、そちらは教師として、しっかりと生徒のために動けばいい」

「わかった、それで良いな」

「ああ、そうだ」


 そう確認し合い、再び歩み始めるガルバンゾー講師。



 学園内では、基本的に平民も貴族も暗黙の了承がありつつも平等ではある。


 そして、講師たちもまた、平民と貴族が入り混じっており…‥‥実は、このガルバンゾーはその中でもかなり上の立場に入る人物ではある。


 だが、それを彼は話すことはない。ただの教師として働き、研究に打ち込み、生徒たちのためになるようにできる今の生活が一番なのだから。


「ああ、それとついでに一つ忘れていたな」


 歩む中で、先ほどの者がそう口にする。


「そちらの元に、例の生徒がやってくるのは間違いないだろうが…‥‥出来れば、家の話もそれとなく聞いておいてほしいという要請があった」

「どういうことだ?名簿では、男爵家の3男だからそうそう家のことに関わることはないと思ったのだが‥‥‥」

「その男爵家なのだが、疑惑が出てきたからだ。家族構成などを念入りに調べて分かったが…‥‥まぁ、その話はまた後でだ」


‥‥‥何やら気になるのだが、それとなく聞けるのであれば聞いておいた方が良いらしい。


 深くは考えないが、皇帝の直接の指示もあるようなので、重要な事態が動いているのは間違いなさそうだ。


「やれやれ、面倒な役回りをさせられるが…‥‥まぁ良いか。わかっていても、教師としての面子もあるし、調べたいこともあるからなぁ…‥‥」


 そうガルバンゾーはつぶやきつつ、放課後に備え始めるのであった…‥‥‥

話が出れば、即座に手が回る。

その事に気が付かないが、知らなくてもいい事だったりする。

まぁ、特に問題が無ければいいのだが‥‥‥‥

次回に続く!!



‥‥‥主人公の家に関しても、なにやら話が出始めた模様。

きな臭くなってきたが、とりあえず知らないふりをしておきたい

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[気になる点] 2-5 教鞭は執るもの。教壇は立つもの。 教鞭を執る、だと教師として働く身分のことを指し、個別の授業を始める用途には用いない。 教壇に立つ、だと身分にも個別の授業にも使用可。 語源…
[一言] 見た目と名前のギャップは最高ですね。まぁ異世界ですから、名前の意味は異なるとおもいますが・・・ 軍人のような筋骨隆々なおっさんがヒヨコって(・m・ )クスッ
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