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3-35 物語のようにはいかないけれども

たまにはやってみて、本日2話目

‥‥‥ダンジョン、その言葉だけを聞くのであれば、どの様なものが浮かぶのか。


 地形が入れ替わったり、何かとトラップが仕掛けてあったり、時にはお宝が眠っていたり‥‥‥そういうのが詰まっているというイメージを持つだろう。


 まぁ、大体は当てはまっていたりするらしい。


 世界の各地にあるダンジョンの中には入るたびに地形が変化したり、お宝とまではいかなくとも貴重な鉱石が採掘できたり、はたまたはモンスターだけがうじゃうじゃと湧き出るだけで潰されたものもあるそうだ。


 とはいえ、定期的に狩ることさえできればそれなりに安全でもあり、内部には美しい景色が眠っていたりすることもあるので‥‥‥



「事前に申し込めば、安全確認の後にこうやって観光もできるのはいいかも」

【キュル、でも観光、向いてない】

「それもそうよね。この辺り、岩ばかりですもの」


 

 ギルドで手続きをした2日後。僕らは今、ゲードルンの内部に入ることができていた。


 申請すれば、モンスターの出現する速度やその強さなども考慮して狩りがされ、内部を見ることができるようになる。


 とは言え、このダンジョンは他のダンジョンとは一つ異なる特殊な構造があるのだが‥‥‥それの対応はされていた。


「それで、あっちが帰らずの穴底とか言うやつなんだろうけれども…‥‥柵がしっかりされているな」

「あれも魔道具の一種よ。普通の建材で作るとダンジョンがすぐに排除するらしく、何かと手間暇をかけているらしいのよねぇ」


 このゲードルン唯一の名所と言うか、迷所と言われる帰らずの穴底。


 そこに落ちれば最後、どこともわからない場所に飛ばされるらしく、行方不明者や違法投棄などがされないように、対策として柵が張り巡らされていた。


【キュル‥‥‥でも、この感じ‥‥‥うん、そうかも。ココ、私がいた場所に近いかも】

「やっぱり、ハクロのかつていた群れの住みかであっているのか?」

【多分。‥‥‥でも、柵、無かったよ?】


 護衛の騎士たちが念には念を入れて周囲を囲んでいる状態で内部を進みつつ、ハクロがそう口にする。


「ギルドの方で貰った情報だと、このダンジョンは地下へ向かう階層構造で、最深部近くには流石にモンスターの強さが強すぎて、設置しても破壊されるから付けていないとあるけれども‥‥‥そのあたりに、あったのかもしれないわね」


 ハクロいた場所を考えるのであれば、柵が取り付けられていないという最深部付近。


 だがしかし、ここでも最新の情報を聞いて見たのだが、蜘蛛のモンスターの出現情報などはなかった。


 僕と出会った数年前にまでさかのぼって見たが、それでも情報はなく、考えられるのはそうそう立ち入ることができないような奥にあったのか、あるいは目撃しても狩られてしまい、情報の伝えようがなかったかになる。


【多分、後者。人の肉、兄弟姉妹、好まなかったけど、お母さん食べていたかも】

「‥‥‥その光景って見た?」

【狩っているのだけは見た。でも、誰も食べる気なかった】


 ハクロの話によれば、人間を狩っていた姿は見たらしい。


 けれども、人肉と言うのは他のモンスターの肉と比べるとはるかに劣るとでもいうのか、誰も彼も好き好んで食べることは無かった。


 と言うか、先ず襲われなければ狩る気もないような弱い物として見ていた風潮があったらしく、ひっそりと暮らしていたから目撃されなかったのではないかと言う話にもなる。


「でも、狩られているなら行方不明者扱いで、捜査とかありそうなものだけど‥‥‥」

「んー、それが難しいのよね。冒険者って、結局は自己責任扱いなところが大きくて‥‥‥場合によっては単なる事故扱いで消えることがあるのよ」


 僕の言葉に対して、アリスはそう答える。


 なんというか、冒険者は一貫千金を夢見る人たちと言えば響きは良いのだが、その命はいつ落してもおかしくはないと受け止められているらしく、そこまで重要視されるわけでもない。


 そもそも国が騎士たちを派遣して定期的に狩っているので、お宝目当てに蠢かれてもそこまで気にも留める気はない事も多いのだとか。


 辛辣と言うべきか‥‥‥‥まぁ、それでも夢見る人が多い分、一応ある程度の覚悟などを持っている人もいるらしく、良く異世界物のテンプレで出るような腐った人なども少ないので、信頼などはあるらしい。


 あっても、わざわざ行方不明者を捜せるのかどうかというのは別らしいが‥‥‥どことなく、この世界の残酷さを垣間見た気になった。




 とにもかくにも、こうやって内部を歩けるのは良いが、一応騎士たちの護衛は必要で一緒にいる状態。


 狩られて安全状態と言っても予想外なこともあるので、気は抜けない様子。


「ついでに、そこいらに間諜たちも潜ませているわね。先行して探ってもらい、念には念を入れてしっかりと安全確保をさせているのよ」

「徹底的にやっているのかぁ…‥‥」


‥‥‥冒険者、いらなくない?


 ふとそう思ったが、一応ダンジョン内で出る魔道具などは貴重であり、取りこぼしがあった場合面倒な事にもなりかねない。


 だからこそ、目ざとく見つけてくれるような人たちが必要でもあるからこそ、冒険者と言う存在は亡くならないようだが…‥‥それはもはや「冒険」していない気がする。


「それだとむしろ、探索者、探究者、発掘者とか言う方が正しいかもね」

「あら、それはそれでいいわね。元々、冒険者の名称自体はどこからか来た旅人が付けたって話があるけれども‥‥‥役割的には、そういう言葉の方が似合いそうだし、今度改名案として出してみるべきね」


 ぼそっとつぶやいたつもりだったが聞かれていたようで、今度改名案として提出されることが決定したようであった‥‥‥‥










‥‥‥アルスたちがダンジョン内を突き進み、ハクロのかつていた場所を探している丁度その頃。


 ギルド内では、疲れた騎士たちがひと息をついていた。


「ふぅ‥‥‥昨日の今日で、直ぐに排除したが、帝国の皇女が内部の視察に来るとは…‥‥流石に何かあっては不味いと思い根絶したが、大丈夫だろうか?」

「大丈夫だとは思う。何もかも切り捨て、薙ぎ払いつくし、当分出てこない状態だからな」

「ついでに冒険者たちも、この状況を見てお宝探しに向かったし、異常があればすぐにでも報告が来るだろうよ」


 ギルド内に作られた休憩所で、お茶を飲みながらそう口にしあう騎士たち。


 流石に昼間から酒を飲む気分にはならず、油断せずに気を引き締めたいからこそ茶で済ませるのだが、それでもひと仕事をやった達成感はあふれていた。


「しかし‥‥‥皇女様とやらの友人たちに、蜘蛛のモンスターがいたよな?美女が生えていたが、アレはアレで大丈夫なのか?」

「問題ないはずだ。話によると、帝国の方で公認されているらしく‥、早い話が人畜無害で危険性はそうないらしい」

「そうか…‥‥にしても、モンスターなはずなのに、美しい美女なのは不覚にもドキッとさせられたな」

「ああ、美女なんてなかなかお目にかかれるようなものではないからな‥‥‥」


 うんうんと頷き合い、同意し合う騎士たち。


 女騎士などがいないわけでもないのだが、この国内では男性騎士の方が多いので中々女性と知り合う機会は少なく、それこそ美女なんぞ幻の扱い。


 なので、珍しい美女に目にかかれた機会の対価として根絶するレベルでモンスターを狩ることは、むしろ安すぎると思えてしまう。


「そう言えば、ここに来た目的も聞いたが、数年前まで存在していたらしい蜘蛛のモンスターの群れの住みか探しと言う話だが…‥‥そんなの、聞いたことがあったか?」

「いや、無いな。最深部近くまで潜ったが、あのあたりは猪やシカのモンスターが多かったはずだ」

「蜘蛛とかそれこそ目立つ様なものだとは思うのだが、心当たりがなぁ‥‥‥」


 首を傾げ、唸る騎士たち。


 彼らもここで定期的に狩りをしてそれなりに長く働いているのだが、そんな群れの情報などは聞いたことが無かった。


 ない理由として考えられるのは、情報を得る前に人が失せたか、群れそのものがどこかに潜んでいたか、はたまたは‥‥‥


「‥‥‥人為的に工作されていたとか?」

「でも、蜘蛛のモンスターは狩りの名手とまで言われるような者で、それが群れでいたら隠すこと自体がかなり危険だぞ?」

「いや、蜘蛛に限らず群れを成すほどの時点で警戒して届け出をするものだと思うのだが…‥‥」


 何かと謎があるが、それでも彼らには分からない。


 ただ一つ言えるのであれば、これはこれで何か大きな問題ごとが垣間見えそうということぐらいだろうか。


「まぁ、とりあえずここで休会した後は、皇女様の帰還時の安全のためにも、出てこないように狩るか」

「ああ、そうするか。不意を突いてドバァなった現象は、以前に遭った謎の溢れ出しの時で嫌になったからな」

「そもそもアレの原因も捜索中だが‥‥‥人為的な可能性が大きいらしいからな。ならば、そんな工作をされる前に警戒しておく方が良いだろう」



 何かと面倒事が起きる場所でもあるが、それでも人々の安全のためにも騎士たちは動き出す。


 この行動ひとつで何かが変わるとも思えないが、それでも何もしないよりはましなはずだ。


 そう思いながら、この貴重なひと時の休憩をゆったりと味わいつつ、一仕事のためにも剣や鎧のこまめな手入れをし始めるのであった‥‥‥


「にしても、あの美女良いなぁ‥‥‥モンスターだとしても、お付き合いしたいよ」

「ああ、うちは美女いないからなぁ‥‥‥」

「お前は奥さんいたはずだろ?」

「ああ、いると言えばいるが‥‥‥最近、がみがみ怒鳴るからなぁ。この間ちょっとだけ、羽目を外して酷い目に遭って…‥‥おおぅ、あのお仕置きババァとは比較にもならんわ」

「はははは、それお前の奥さんに聞かれたら今度こそ死ぬぞ。今いなくて良かっ‥‥‥」

「「「‥‥‥あ」」」


「ん?どうしたんだ、何で皆急に俺の後ろを向いて口を開けて黙って…‥‥」








【‥‥‥キュル?なんか上で、悲鳴聞えなかった?】

「悲鳴?どんなのだよ?」

【んー、断末魔とかじゃなくて、謝るような、後悔するような…‥‥気のせいかな?】


‥‥‥首をかしげるハクロではあったが、どうやらダンジョン内で誰かが襲われたとかそういう類ではないらしい。


 別に気にしなくても良いようなので、そのまま先に進むのであった。

何か聞こえたらしいけど、僕らが気に留める事もないらしい。

それはそうと、先へ進んで確認をしていくほうが良いだろう。

彼女がかつていた場所は、この先にあるのか‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥騎士?まぁ、うん、人数は減ってないはず。

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