ワン・ツー・スリー・はっくしょん
みんなはくしゃみをする数に意味があることをしってるかな?
学校の先生がクラスのみんなに向かって「えへん」と言っている。
くしゃみが1回なら、君が誰かに悪いウワサをされている。
くしゃみが2回なら、君が誰かにおかしな話にされている
くしゃみが3回なら、君のことが誰かが大好きだってことさ
くしゃみが4回なら、早く病院に行こう!風邪だよ。
「くしゃみが3回なら誰かが僕のことを好きなのか~」
たくやくんは、なるほどなと思いながら、横目で隣に座っている、せいかちゃんを見ていました。
そうなのです。たくやくんは実はせいかちゃんが大好きなのです。
「せいかちゃんが僕のこと好きだったらなんてハッピーなんだろう。」
学校から家に帰る間も、たくやくんはせいかちゃんのことばかり考えています。
いつもなら、はしゃぐ冬の綺麗な雪も今のたくやくんには何の魅力もありません。
もしかしたら今のたくやくんには明日のクリスマスも魅力がないかもしれません。
家に帰るころには、手も寒さで真っ赤になっていました。
「うー。寒い。寒い。」
そんなときです。
急にたくやくんは自分の鼻がムズムズし始めました。
「う...は...は...」
「はっくしょーん。」
そのくしゃみは、とても大きく、家で飼っている猫が飛び起きてしまうほどのものでした。
でも、たくやくんはくしゃみをした後、何かをひらめき、猫以上に飛び上がりました。
「そ、そうだ!僕がくしゃみをするとき、1回・2回じゃなくて全部3回にすれば、せいかちゃんが僕のことをすきになってくれるかもしれない!!」
たくやくんは大好きなせいかちゃんに好きになってもらうために、くしゃみをし続けることにしたのです。
1月
「は、は、はっくしょーん。は、は、はっくしょーん。はっくしょーん。」
2月
「はっくしょーん。はっくしょーん。はっくしょーん。」
雪やこんこん・ワン・ツー・スリー・はっくしょーん。
3月
「はっくしょーん。はっくしょーん。はっくしょーん。は、は、」
4月
「は、は、はっくしょーん。はっくしょーん。はっくしょーん。は、は、はっく...」
5月
「は、はっくしょーん。は、は、は、はっくしょーん。はっくしょーん。はっくし...」
花よ咲け咲け・ワン・ツー・スリー・はっくしょーん。
12月からくしゃみをし続けている、たくやくんをおかしいと思った家族やクラスの友達はたくやくんを心配し始めました。
家でもワン・ツー・スリー・はっくしょーん。
「たくや。大丈夫かい。」「たくや。大丈夫なの?」
学校でもわんワン・ツー・スリー・はっくしょーん。
「たくや君、大丈夫?」
なんと、たくやくんはせいかちゃんに心配されたのです。
たくやくんはくしゃみの噂は本当なんだと思い、もっとくしゃみを頑張ろうと思ったのです。
6月
「はっくしょーん!はっくしょーん!!はっくしょーん!!!」
7月
「はっくしょーん!!!!はっくしょーん!!!!!はっくしょーん!!!!!!」
8月
「はっくしょーん!!!!!!!はっくしょーん!!!!!!!!はっくしょーん!!!!!!!!!」
暑いのへっちゃら・ワン・ツー・スリー・はっくしょーん。
ずーっとずーっとくしゃみをしているたくやくんは学校でも大人気になってしまいました。
でも、どれだけ大人気になっても、たくやくんはせいかちゃんしか見ていません。
「よーし、もっともーっとくしゃみするぞ!!」
9月
「はっくしょーん。はっくしょーん。はっくしょーん。」
10月
「はっくしょーん。はっくしょーん。はっくしょーん。」
11月
「はっくしょーん。はっくしょーん。はっくしょーん。」
焼き芋、ホクホク・ワン・ツー・スリー・はっくしょーん。
もうくしゃみをし始めてから1年が経ちます。
この1年の間に、たくやくんは家族・クラスの友達・そして大好きなせいかちゃんにとても心配されました。たくやくんはとても嬉しかったのです。
でも、たくやくんは困っていました。
「うー。もうちょっとで12月も終わるのに、まだくしゃみがでないよ。
明後日はクリスマスだから、もう12月も終わっちゃうよ。」
焦ったたくやくんは、夜になると窓を開けて、寝ることにしました。
窓を開けると、ゴーーという風が吹く音と一緒にすごい寒さがたくやくんにきましたが、たくやくんは大好きなせいかちゃんのためにも頑張りました。
そして、朝
「うー寒い。寒いよ。寒い。」
とてつもない寒さと一緒にたくやくんの鼻には懐かしいムズムズが来たのです。
「は、は、はっくしょーん。はっくしょーん!!はっくしょーん!!!」
「や、やった。でたぞ!くしゃみだ。わーい。わーい。」
たくやくんが玄関でぴょんぴょん飛び上がっているのを見て、猫もぴょんぴょん飛び上がっていました。
学校についたたくやくん、でもなんだか体が寒くて、しんどいみたい。
大好きなせいかちゃんの隣なのに、今日はせいかちゃんの顔を見ることができなさそうです。
そんなたくやくんの様子を見て、せいかちゃんはとても心配そうです。
そして学校が終わってたくやくんは、フラフラしながらも家に帰ろうとしていました。
そんなフラフラのたくやくんの後ろから、走って追いかけてくる人がいました。
「ねぇ。たくやくん!たくやくん!!」
たくやくんはその声に聞き覚えがありました。
どんなにしんどくたって大好きな人の声は忘れません。
「せいかちゃん!!どうして!?」
せいかちゃんは恥ずかしそうにしながらも、答えました。
「えっと...たくやくんに渡したいものがあって...」
せいかちゃんはもじもじしながらも、勇気を出して、たくやくんにあるものを渡しました。
「はい!これ!!」
なんとそれは大きな大きなマフラーでした。
「え、なんで僕にマフラーなんて」
「だって、たくやくんずっとくしゃみしてたでしょ?でも、春とか夏とか秋とかに渡すのは変かなって、それに冬にはクリスマスがあるから...大人の人はクリスマスに大好きな人にプレゼント渡すんだよ。」
真っ赤になったせいかちゃんを見て、たくやくんはもっと真っ赤になっていました。
「え、せいかちゃん...それって...もしかして」
たくやくんは、とってもとっても喜びました。
自分がさっきまでフラフラになっていたことなんて忘れていそうです。
でも、大好きな人が大好きになってくれることはとっても幸せなことです。
二人は手をつないで、
もらったマフラーを二人で上から見ると♾の文字のように首に巻きながら、
歩いて帰りました。
「は、は、はっくしょーん!はっくしょーん!!はっくしょーん!!!はっくしょーん!!!!」