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姉と妹

20190906 21時更新しました。

        ※




 授業が終わるまでに、俺と竜胆はメールでいくつか情報の共有をした。

 確認した内容を簡易的にまとめていく。


・竜胆は日曜日の夜から『脅し』を受けていた。

・相手の正体は不明だが、竜胆の『過去』について知る人物らしい。

・日曜日の夜から数件のメールが送られてきている。

・現時点では直接的な被害はないが、今日の20時に呼び出しがあったそうだ。


 今の状況で警察は動いてはくれないだろう。

 何より竜胆自身がそこまで大事おおごとになることは望んでいないはずだ。


(……気になるのは、なぜメールがあったことを誰にも相談せず、自分自身で解決しようとしたのかだが……)


 誰しも触れられたくはないことはある。

 だから、彼女が伏せた点に関して尋ねようとは思わない。

 大切なのは、竜胆を精神的に追いつめる第三者がいる――その事実なのだ。


(……あとはこの問題をどう解決するかだが、その為には間違いなく、竜胆自身の『勇気』が必要になる)


 そんなことを考えながら、俺はスマホを取り出した。

 そして、犯人をしぼる為の手を打っていく。




          ※




 午後のホームルーム。


「最近、学生を狙った恐喝、暴行事件が頻繁に起こっているそうだ。

 生徒間で薬物が流れているなんて話も出たほどでな……。

 当校の生徒に被害は確認されていないが、何かあったら直ぐに家族や学校、警察に相談するように」


 真間先生からなんともダイレクトな連絡があった。

 このタイミングで嫌な話が出たものだが、そういった事件は珍しくはないはずだ。

 実際、竜胆に絡んできた不良たちのように、たちの悪い人間はどこにでもいる。

 報告されていないだけで、調べればそういった被害はいくらでも出てくるだろう。


「ちなみに、わたしに相談してくれてもいいぞ。

 とはいえ出来ることはほぼないがな」


 それ、自信を持っていうことだろうか?


「では諸君、気を付けて帰れよ」


 放課後の訪れと共に――竜胆は席を立った。


「凛華、今日はもう帰るん?」


 最初に反応したのは岬だ。


「ちょっと用事があって」

「そっか……。

 彼氏に送ってもらわなくていいん?」

「彼氏じゃない……らしいから」


 視線を軽く流して、竜胆は俺を一瞥いちべつした。

 その口振りは、答えを俺に委ねるようなものだった。


「竜胆、またね。

 帰ったら連絡する」

「うん。

 カナン、また明日ね」


 友人たちに手を振り、竜胆は教室を出て行った。

 彼女が出て行った教室を俺は見回す。

 怪しい動きをする生徒は少なくともクラス内にはいない。


(……さて、俺も行くか)


 竜胆から少し遅れて俺は教室から出た。




       ※




 俺は足早に真っ直ぐ自宅に帰宅する。


「ただいま」

「お兄ちゃん、おかえりなさいです」


 バタバタと玄関まで走ってきて、妹が俺を出迎えてくれた。

 でも、今日はいつもと少しだけ光景が違う。

 それは、


「おかえり……皆友くん」


 竜胆が妹の隣に立っていたのだ。


「……それと、お邪魔してます」

「ああ、いらっしゃい」


 事の経緯はこうだ。

 俺は竜胆に放課後になったら、家まで来てほしいと頼んでおいた。

 二人が落ち着いて話せて、誰の目も届かない場所を考えた際に自然とこうなっていた。

 自宅の場所は住所とマップを送る。

 こんな面倒なことをしたのは、竜胆を狙う第三者が教室内にいるのかを確かめる為だった。

 もし竜胆が教室を出て直ぐ、あとを追う生徒がいたなら限りなく黒に近い。

 だが、そんな簡単に尻尾を出す奴はいなかった。

 しかし、竜胆に連絡を送れているという時点で、犯人はかなり絞れている。


「も~お兄ちゃん、びっくりしたんですよ!

 確かに昨日、彼女さんを紹介してくださいと言いましたが、まさか今日うちに呼ぶなんて!」

「悪い。

 でも、天音がいてくれて助かった」


 天音には竜胆が家に向かっていることをメールで伝えた。

 そしてインターフォンに連絡があり次第、家に迎え入れてくれと。


「天音ちゃん、急にごめんね。

 驚かせちゃったよね……」

「あ、いいんですいいんです!

 凛華さんに会えて、天音はとっても嬉しいです!

 まさかお兄ちゃんの彼女さんが、こんなに美人さんだったなんて……」

「び、美人なんて……」


 褒められて照れてしまったのか、竜胆は視線を少し下げる。

 普段、俺と話している時よりもなんだか遠慮がある……というか、緊張してるのか?

 敬語で話してるもんな。


「あの……もしイヤじゃなかったら、凛華お姉ちゃんって、呼んでもいいですか?」

「お、お姉ちゃん!?」

「やっぱり、ダメでしょうか?」


 竜胆は感激した様子で、その場でぶんぶんと首を横に振る。


「だ、ダメじゃない!」

「本当ですか?」

「お姉ちゃんって呼んでほしい。

 いつか……本当のお義姉ねえさんになれたらって思ってるし……もっと、天音ちゃんと仲良くなりたいから」

「だとしたら嬉しいです。

 天音も、もっと凛華お姉ちゃんと仲良くなりたいです」


 二人の少女はお互いに笑みを交わす。

 なんだか見ているだけで和んでしまいそうな光景だった。


「天音……仲良くなったところ悪いんだが、ちょっと竜胆と二人切りにさせてもらってもいいか?」

「もちろんです。

 でも、今度ゆっくりと凛華お姉ちゃんとお話させてくださいね」


 俺の返事を待たず、天音はリビングに走って行った。


「……いい子だね、天音ちゃんって」

「俺の妹とは思えないだろ?」

「そんなことない。

 優しいとことか、そっくりじゃん」


 天音は優しいかもしれないが、俺は……どうだろうか?

 話しながら部屋まで歩いて扉を開く。


「入ってくれ」

「じゃ、じゃあ、失礼します」


 竜胆に入るように促すと、緊張した様子で足を踏み入れた。

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