ちなみに俺は皆友です。
20190905 17時更新
そんな中、
「なになに? なんか楽しそうじゃん、オレらも混ぜて」
軽い口調で寄って来たのは、山城と浦賀、そして飛世――男子のクラスカースト最上位の生徒たちだ。
「ガールズトーク中なんですけど~!」
「んだよ~、湊くんもいるしよくね?」
湊って誰だよ……とは聞かなかった。
山城は明らかに俺を見ているから。
ちなみに俺は皆友です。
「湊って誰だし?」
「え~、湊くんっしょ?」
岬の呆れた様子に、山城は首を傾げた。
まぁ、こいつにとって俺はその程度なのだろう。
「山城……湊くんじゃなくて、皆友くんだよ。
な?」
爽やかで人当たりのいい笑みを浮かべながら、飛世が俺の名前を訂正した。
まさかこいつが俺の名前を憶えているなんて……それはかなり意外だった。
文武両道、品行方正、容姿端麗――欠点がないクラスの中心。
いや、欠点がない人間などいるわけはないが……少なくとも表向き、飛世の立ち位置はそんなとこだ。
こんな超優等生なら、クラスメイトの名前を全員覚えていてもおかしくはない……か?
それとも、何かが原因で……多少でも俺に興味を持っていたのか。
「まぁ……」
一応、当たり障りのないよう頷いておく。
「あ~、皆友くんか、わりぃ、オレさ、人の名前とか覚えるの苦手で、マジごめん」
「山城……気を付けてよ。
クラスメイトの名前を間違えるとか、ちょっと感じ悪いから」
浦賀が苦言を口にした。
呆れ半分と言った様子で。
「皆友、ごめん。
山城も悪気があるわけじゃないから」
流石は野球部でバッテリーの女房役。
旦那の失敗に対するフォローも完璧だった。
「いや、そこまで気にしてないから」
「さっすが皆友くん、マジ心がひろいわ~!」
心が広くなくてもいいけど、いきなり肩を組まないでくれるか?
オレらが話すのは、今日が初めてだよな?
なのに何この距離感?
「てかもうあっち行けし! あ、翔也はいてくれてもいいよ?」
「お~い、それ差別っしょ? 美愛、ひどくね?」
「ひどくない~。
翔也なら恋愛経験豊富そうだし、女の子の気持ちになって考えてくれそうだし、色々と相談に乗ってくれそうじゃん?」
岬の中で、飛世の評価はかなり高いようだ。
だが山城とのほうが会話に親しみはある気がする。
「ま、邪魔しちゃ悪いから俺たちは戻るよ。
それに、まだ食事中なんだろ?」
「……邪魔しちゃってごめんね。
皆友くんも、またね」
山城を置いて、飛世と浦賀が去って行く。
「ちょ、二人とも行っちゃうわけ? そりゃないっしょ~?」
「あんたたち、なにしに来たん?」
「いやさ、なんか盛り上がってんな~って、皆友くんとあんま話したことなかったから、ちょっと興味あってさ」
山城の言葉には戸惑いがない。
自身の感情に正直なのだろう。
それは正直、羨ましくすらある。
「てか……」
去り際、山城が俺に近付いてきた。
「皆友くん、誰狙いなん」
あぁ……そういうことか。
山城は三人の中に気になっている女子生徒がいるのだろう。
「男同士でこそこそなんなん?」
「あ~……ま、また機会があったら、な。
んじゃな~」
機会が果たしてあるのだろうか?
だが、竜胆たちと表向き接触していたら、今後こういうことが起こってもおかしくはなさそうだ。
「ったく――って、あ、もう時間ないじゃん。
早く食べちゃおう!」
「ん……」
「二人とも、お言葉に甘えて少しもらうね」
そして三人は昼食を食べ始めた。
「皆友も食べたいのあったら言ってみ。
そしたらうちが、あ~んしてあげる」
「皆友くんへの誘惑禁止! そういうのしていいのは、あたしだけだから……!」
竜胆が俺を抱き寄せてきた。
勢いのままに俺の顔が彼女の胸元に埋まり、そのまま抱きしめられる。
「ちょ……おまえ……」
「皆友くんは黙ってて!」
頭を抱え込むようにぎゅっとされて、柔らかな感触が頬に伝わってくる。
今の竜胆は多分、自分がどれだけ大胆なことしてるかわかっていない。
「凛華、やっぱマジなんだぁ~」
「……本当は付き合ってる?」
こんな会話をされてしまったら、俺がどう言おうと、生徒たちの間で勝手な解釈をされるだろう。
だが、それはもう仕方ない。
向けられる関心も敵意も困惑も……今は全て受け入れる。
今後――竜胆の為に、ここで生まれた立場を利用できる可能性があるかもしれないから。




