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追いつめられる心

20190904 20時更新

        ※




 皆友くんと会話を終えて、あたしは電話を切った。


(……すごく、心配させちゃってたんだな)


 いつも通りに振る舞えていると思っていたのに、様子がおかしいのはバレバレだったらしい。

 申し訳なく思う反面、嬉しい気持ちが心に広がっていく。

 皆友くんが、大好きな人が、わたしのことを想ってくれているのが伝わってきたから。


(……あぅ……でも、男の子にあの言い訳はなかったよね)


 心配させたくなかったらとはいえ、お、女の子の日とか……ありえないでしょ……。


(……なに言っちゃってるんだろう……あたし)


 思い出すだけで全身に熱が走る。

 皆友くんも反応に困っていたのがわかった。

 でも、反応がとても可愛くて……もしかしたら、あたしとの会話にドキドキしてくれてるのかなって考えると、胸がキュンとなっていく。

 こういう照れ屋なところがあるのに、いざっていう時はすごくカッコいいのだから反則だ。

 彼のことを考えると、温かくて優しくて、とても甘い気持ちが溢れていく。

 その想いが全部集まって、心の中が幸せに満たされていく。


(……ダメだなぁ。

 幸せなはずなのに、すごく苦しいよ)


 好き。

 大好き。

 不器用なところも。

 照れ屋なところも。

 優しいところも。

 本当はとっても強いところも。

 そして……人に対して臆病なところも。

 全部ひっくるめてあたしは皆友くんが好き。

 自分が、男の子に対してこんな気持ちになるなんて……思いもしなかった。

 この想いはあたしの宝物。


(……でも、だからこそ怖かった)


 想いが大きくなればなるほど、失う恐怖が強くなる。

 大切な人がいるから頑張れるのと同じくらい、大切な人がいるから弱くなってしまう時がある。

 あたしは、それを実感していた。


(……皆友くんに嘘、吐いちゃった)


 何もない――なんて、嘘だ。

 あたしはピンチだった。

 今にも叫び出したいくらい。

 きっと皆友くんなら、あたしを助けてくれる。

 だけど、信じているからこそ、救いを求めることはできなかった。

 彼を危険に巻き込みたくない。

 迷惑を掛けたくない。

 そして何より――


(……これは、あたし自身が立ち向かわなくちゃいけないから)


 強く心に誓う。

 そして、手の中に握られて、ぐしゃぐしゃになった写真を見つめた。

 その写真を見て、じわじわと悪寒が広がっていく。

 これは、校内掲示板に張られていたものだ。


(……誰が、こんな……)


 始まりは、昨夜届いたメールだ。


『お前の罪を知っている』


 最初はただのイタズラかと思い、ブロックすることも考えた。

 でも、次に送られてきたメールには、あたしの過去について書かれていた。

 相手があたしを知っている以上、無視すれば何をされるかわからない。

 戸惑いと恐怖が冷静な思考を奪う中で、さらに続けてメールが届いた。


『明日の昼休み、校内掲示板に行ってみろ』


 翌日。

 指示に従い掲示板に向かうと、中学時代のあたしの写真が貼られていた。

 あたしの過去を――弱味を知る誰かが学校にいる。

 そう思うだけで、恐怖に全身が震えた。

 これから何が起ころうとしているのか。

 犯人の狙いはなんなのか?

 考えるだけでも、怖くて怖くて仕方ない。

 でもそれ以上に、


(……もしも、あたしの過去を知られたら)


 皆友くんは軽蔑するだろうか?

 美愛やカナンはあたしを嫌うだろうか?

 あたしは居場所を失うんじゃないか。

 そんなことばかり考えてしまっていた。


(……信じているはずなのにな)


 弱いあたしは、大好きな人を信じきることすら許してくれない。

 不安が心を蝕んでいく。

 恐怖が心を壊していく。


(……ちゃんと、みんなの前では、笑わなくちゃ)


 教室に足を踏み入れる。

 この仮面はどれくらい持つのだろうか。

 気を張れば張るほどに、あたしは追いつめられていた。

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