〜上島、ホームページ制作に本格的に取り掛かる編〜
玄関も和風で、かなり広い。右隅には、どこかの偉い人が書いたような水墨画や雉の剥製が置かれていた。
彼の誘導で広く長い廊下をひたすら進む。ある程度、進むと彼は左の方にある部屋を指差す。
「ここが自分の部屋です」
その部屋は立派な檜当たりで出来た扉で覆われていた。
「失礼します」
今度は本当に俺みたいな奴が入ってもいいのかな?と最初よりは真実味を帯びた失礼しますだ。
部屋も広く、立派な和風という感じで、部屋の奥にある障子の下のガラス部分から中庭も見える。
「すごい立派な部屋だよね・・」
本心から言った発言だからか、自然と敬語では無くなっていた。
「うん、まぁね」
彼も敬語では無くなっていた。本心からの発言だろうか?だとしたら少し嫌味だ。
部屋の中央にある年季の入った立派な和風のテーブルの上に高そうなパソコンが置かれてあった。
「これでホームページを作るんだね?」
俺はどうやら当たり前の事を無意識に質問してしまうクセがあるらしい。
「ん?ま、まぁそうだけど・・」
明らかに
「何、当たり前の事聞いてんだコイツ?」的な事を思ったかのような発言だな・・
まずは紙面でホームページのレイアウトを作成する。
「やっぱりフラッシュから入る方がいいかな?」
俺の発言だ。
「フラッシュは少し派手ですよ」
これは彼の発言。
「会社名は幸せ屋なんてどう?」
今度は俺の発言だ。
「宗教と間違われますよ。ハッピーキャリーなんてどうです?」
こっちの方が宗教ぽいだろ・・
そして数時間、色々と案を出し合った結果、会社名は
「ひとひらの葉っぱ」という名前に決まった。上記の会社名決めのやり取りは、ほとんど意味は持さない。
ホームページも会社名がひとひらの葉っぱという割と大人しめな名前という事で、癒し系な作りでいこうという事で決まった。
この紙面レイアウトを元に実際に形にしてみるとの彼からの言葉を聞き、俺は彼に頼り甲斐とたくましさを感じながら、彼の家を後にした。
「俺、本当に会社の社長でいいのかな・・ハァァ」
自分の無能さにため息をつきながら帰路につく・・