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7、ケムルズの町へ

 さて、<愚者王>の結末から話しを始めよう。

 西の国の王は愛する妻を蘇らせるために数多の犠牲の上に戦争を始めた。不幸と絶望と渇望の戦争はさらなる悲劇を生み出すだけだった。悲痛ひつう悲哀ひあい悲嘆ひたん悵然ちょうぜん慷慨こうがい慨然がいぜん寂寥せきりょうの想いで心の中がいっぱいになるだけだった。


 王を止めるきっかけになったのはとある少女だった。

 名前も知らない少女の<死>が愚かな王の暴走を止めた。

 少女は最期に「よかった、いつもの王様に戻ったね」と微笑んで息絶えた。王は自らの過ちにやっと気付き自害することで戦争はようやく終わった。


「これがウチらの知ってる<愚者王>や」


「だがしかし、<愚者王>の悲劇はまだ終わりではなかった。ここからはワタシが続きを話そう……」


 京が<愚者王>の話しを終えて、ゲームでも語れなかったこの世界の<愚者王>の続きをミンチィ伯爵が語り出した。


「あれは5年前のことだ。忘れもしない……」


 それは<愚者王>の悲劇と云われた。

 王は自害の際に選んだ剣はただの兵士の剣である。霊具でもなければ宝剣でもないただの鉄の剣で心臓を一突きしたのだと云われている。王は戦争を止める為に自害した。しかし、無念は別の形へと変え、それが<愚者王の剣>であった。


 何故、この王国に<愚者王の剣>が存在していたのかまでは定かじゃない。国家転覆を企んだ悪の結社、共和国の陰謀論、帝国売人の密輸等いろんな憶測が飛び交うが、今はそれは置いといて。問題だったのはその呪われた剣が何故かこの王国に渡り、ソレに魅入られた若者の騎士が魔人化してダレズゴア王国の町を一つ火の海にしたという。


「多くの罪無き者が血を流した。腕に覚えがあるギルドの冒険家もいたようだが、彼らもまた魔人の力には敵わなかった。否、<愚者王>に勝てなかったというべきか。何にしろ、エルザワの町は火の海と化した……」


「その話しなら知っているわ。その魔人が元騎士だったっていうのも……」


「ゲ、ゲームの設定では魔人は魔剣を持って王国の騎士すら殺すって……まさか、それが…………」


「それが<愚者王の剣>だったのだよ」


 ゲームで語られなかった裏設定。

 リアも衣鶴もゲームをプレイしたことない京も他の生徒諸君もここまで大事になるとは想像もしていなかっただろう。たかが<MOGU×HIME>のゲームの世界だと思ってはいけない。<MOGU×HIME>の世界観は何を元に作られたのかを知ればこそだが。


「ケムルズの話しは王都でも有名でしたね。私も少し小耳に挟んだ程度ですが……魔人リグルはエルザワの町を火の海にして次の町へ向かった。その町はケムルズだった。そして、ケムルズの町は2人の英雄によって救われた。魔人を倒し<愚者王の剣>を封印して……」


「あ、あぁ……」


 ふふっ、私も経験者として発言しても問題ないだろう。そんな恐ろしいものを見るような目で見てくれるな、ミンチィ伯爵。ゲームの知識を少し披露しているだけだ。怪しまれる行動はするな。京が胡散臭そうにこっちを見ているじゃないか。

 おー怖い。


 それで2人の英雄とはゲーム設定では先代女王とその友となっている。

 1人はダレズゴア王国の先代女王スイ・ラ・ハラスモン。そして、もう1人はアーデル=キリサキ。ゲームでは友の名は語られなかった。だから、ミンチィ伯爵の話しに彼らが驚くのは無理なかった。

 アーデルとは私達の世界にいた英雄の名だ。


「まさか、英雄の名がここで出てくるとは……」


 リアは生唾をごくりと飲み込んだ。衣鶴は信じられないといった表情で「でも、新イベントの設定の話しだよね?」とまだココがゲームの中だと思いこんでいるらしい。他の連中も薄々勘付いているだろうに。京は知らぬフリを貫いているがな。


 彼女のレベならとっくに気付いているだろう。

 何にしろ、2人の英雄のおかげで町は救われた。否、この表現もおかしいか。1人の英雄の犠牲があって町が救われたといった方がいいだろう。魔人リグルとの死闘の末、先代女王は深手を負って帰らぬ人となったのだから。


「スイ様は最後の力を振り絞って<愚者王の剣>を封印することに成功した。そして、その命を全て燃やし尽くし町を救ったのだ。立派なお方だった……だが、そのお方が守った王国をまた絶望の淵に立たされようとしている。<愚者王>の悲劇がもう一度起きてはならないのだよ……ワタシにもっと勇気があれば……力があればこんなことには……」


 ミンチィは再び泣いた。自分が不甲斐無いばかりに何も先代女王の役にも立てず、虚空に向かって申し訳ありませんと泣いた。その姿はあまり哀れだった。


「で、おっさん。その封印された<愚者王の剣>を裏切りもんが狙ってるって話しやけど」


 少しドライな京が口を開いた。


「仮にウチらが裏切りもんの目的を阻止できへんかった場合の対策も立てやなアカンねんけど、魔人の特徴はどんなんか分かる範囲で教えてぇや?どういう系統の魔法使用するとかな」


「それはワタシにもわからない。実際にこの目で見たわけでもない……いや、噂では<愚者王の剣>で斬られた者は呪いで身体が硬直するとか、即死性の猛毒で動けなくなるとか……す、すまない。本当に知らないんだ」


「まー、ええか。魔剣はそれぐらい物騒な効果を持ってるもんや。そういう効果も考慮しつつ対策立てたらええ。んで、ソレはケムルズの町に封印されとんのか?」


「あ、あぁ……きっとそうだ。早く対策を打たねば……」


 きっと、というのは確実な保証がないからだろう。しかし、そうでなければゲームは進まない。


「ワタシが聞いた話しでは、スイ様が封印した<愚者王の剣>は英雄アーデルの手によってスイ様の遺体と共に埋葬されたと聞いている。だから、不味いのだ。ケムルズの町はスイ様の故郷。スイ様が眠るお墓があるのだよ」


「じゃあ、うかうかしてられんな。墓荒しはネクロマンサーの専売特許や。作戦もはよー決めやんとな」


「………」


 それは挑発のつもりだろうか、京。A組の生き残りはケムルズに逃げ延びたと堂々を嘘をついたり……何を考えているのだろうか。

 まぁ、いい。今は話を進めよう。京の言う通り、うかうかしていられないのだ。


「なるほど、なんとなくゲームの流れが分かってきたわ」


 流石、リア。


「それじゃ一度、整理してみましょうか……裏切り者は<愚者王の剣>を狙っています。目的は<愚者王>の悲劇を再び引き起こすためです……ここまでは皆さんオッケーですね?」


「うん」


「同じく……」


「オッケーや」 


 疑われたくなければ喋るな?というミンチィ伯爵や京の視線が突き刺さるのだが。だが、断る。この物語の主役は私だ。私が仕切らないでどうするのだ。

 それに、彼らに注目されることがこれほど心地よいとは思わなかった。


「<愚者王>の悲劇。私には裏切り者がどうしてコレを再現したいのかそこまでわかりません。魔人になって英雄にリベンジしたいのでしょうか? 英雄の卵から本物の英雄が出てくるかもしれないから対決したいのでしょうか?

 それとも、本当にこの国を滅ぼそうとしているだけなのかもしれません。この国に恨みがありクーデターを起こそうとしているのかもしれません。相手は愚者ネクロマンサーですから、そういう方向も考えられます。ですが、いろいろ想像はできますが真実は定かじゃないのが現時点の段階ですね」


 真実とは……物語の終盤になってやっとわかるものである。このクエストはそういうものだ。


「でも、姫。<愚者王の剣>は封印されてるんだよね?」


「そうなのですよ、衣鶴。良い所に気がつきましたね」


「封印されてるってことはソレを手に入れてもそれだけじゃ魔人の解放はできないってことだよね?」


「やけど、おっさんが焦ってる所からして見ると封印は裏切りもんでも解けるっつうことなんやろーな」


「はい、私もそう思います。英雄達のみが知る封印術式であればよかったのですが、そうでもなさそうなのです。ゲームの流れからすれば、次に私たちが向かうケムルズの町にヒントがあるのだと睨んでおります」


「封印を解くカギ探しってとこかしら?」


「その通りです、リア」


 ケムルズの町には先代女王の墓があり<愚者王の剣>と共に眠っている。封印された剣は何の変哲もないただの兵士の剣であるが故にただ錆びているだけのボロボロの剣でしかない。力も持たなければガラクタ同様だろう。

 しかし、ケムルズの町にその封印を解くカギがある。

 否、正確に云えばカギが出現するイベントが起きる。


「ミンチィ伯爵。そのカギとは何か、貴方は知っているのでしょう?」


「………」


 微笑んで脅そう。そして、私が許可する。喋れ。


「血」


「「「チ?」」」


「封印を解放するには王族の血が必要だと聞いたことがある。そう。そこの自称の姫でなく、本物の姫の血が必要なのだよ……」


 私も本物の姫ですが……とは今は置いといて。


「でも、この国のお姫様ミラ・ラ・ハラスモンちゃん(12)は王都にいるんじゃ……」


「まさか……ミンチィさん、ケムルズの町に来る予定なの……??」


 あのミラちゃんが……!? などと童貞野郎共はざわめいていたがスルーして。


「今日が何の日かも君達には分からないのだろうな……」


 4月9日。今日は特別の日。

 それはダレズゴア王国にとってもミラにとっても大切な日である。


「今日は先代女王の命日だ。母親の墓参りをするのは当然のことだろ……」


 正午に彼女はやってくる。だから今日を選んだ。と、そういう嘘の情報を彼らに与えて……


「待ってください、ミンチィ伯爵。それだと裏切り者はお姫様を犠牲にして<愚者王>の悲劇を再現するつもりですか?」


「だから、君たちに止めて欲しいのだ。ミラ王女の身にまで何かあれば、私は死んでも死にきれない」


「ね、ねぇ、水原……これってマジの話し……??」


 メガネ君の言葉に隣となりにいたギャル子も事の重大さに気付いたようだ。


「ここがゲームの世界であろうとそうじゃなくても僕は裏切り者を止めるよ」


「この中に犯人がいるんだったら、ここで裏切り者を暴けないの?」


「それは無理や、ウチらは探偵やないんねん。証拠探したり推理するんも時間かかるやろ?」


「正午までにケムルズの町に辿り着けるかどうかすら危ういのよ、北染さん。どんな罠や妨害がこの先あるかもわからないっていうのに……推理してる時間なんてないわ」


「そ、そうなの?水原ぁ」


「そこで僕にフラれても困るんだけど……」


 どうなの?メガネ君。


「僕よりもゲームやり込んでそうな(廃人な)クラリーの意見を聞いた方がいいと思うな」


 廃人ナメるなよ、メガネ君。


「それよか、ウチの禁じ手で手っ取り早くクエスト終わらしてもええんやで?」


「な、なにするつもり……??」


「ウチ以外、ここで皆殺しにすることや」


「そ、そんな……っ!?」


「ひぃ………っ!?」


 北染よりも衣鶴の方がビビってまた漏らした。


「確かに手っ取り早いわね。でも、京……矛盾しているわよ。京が裏切り者だった場合、京の一人勝ちになるだろうけど、ここまでゲーム進めてきた意味がなくなるわ」


「冗談やん。それにここでウチ1人になってもケムルズに先に辿り着くであろうA組の生き残りと一対一で対決するんは避けたいところや」


 それも矛盾している。奇妙に生き残ったA組の1人は京の隠し玉で間違いないだろう。それを隠れさせて裏切り者の目を欺いて、何が目的なのか私には読めない。警戒は怠ってはいけない。そして、ケムルズまでの道中で京には退場してもらおう。


「まあまあ、冗談はその辺にしときましょうか。それよりもケムルズまでの道のりはどうされますか? 強行軍で行くとしても、このまま皆さんで固まって行動するのも危険だと思うのですよ。グループを3つ程に分けるのがよろしいかと」


「そやなー。おっさん、ここら周辺の地図あるか? できればケムルズまでのルートを割り出したいねんけど」


「京、それなら私が既に用意しているのですよ」


「流石やな、クラリー」


「えっへんなのです」


 スマホじゃ画面が小さい。なるべく彼らが一度に見れるように図書室から古びた地図を拝借していた。というか、後ろから覗き込んできた男子生徒の顎にヘディングを喰らわせてあげといた。どう考えても童貞をこじらせたこの男子が悪い。気安く肩に手を触れるな。


「こ、ここのルートはやめときましょう……レベル60前後のウネウネしたモンスターが巣くっていたはずです。餌食になれば捕食されるまでウネウネですね、きっと」


「うへー。確か私たちも何度か食べられたことあるよね、姫?」


「衣鶴、あまりアレを思い出させないでください」


「戦闘はなるべく避けるべきね。ウネウネは二度とごめんだわ」


 ケムルズの町までおよそ40kmってところだ。

 森の中から街道に出るまで枝分かれた道が一つあり、そちらは湖まで繋がっている。英雄と魔人の最終決戦の地だ。そして、そこから伸びる道を降りればケムルズの町が見えてくるだろう。だが、あそこにはウネウネがいる。忘れもしない……私のアバターがあんなことになってしまったことを。


「街道に出たらルートが3つに別れています」


「1つはママンボ山の帝国領行きで実質の通行止めでしょ? 町とも反対方向だし」


「残る2つは?」


 ここらの地形を知らない京は訊ねてきた。


「1つは正真正銘のケムルズの町へのルートですね。ですが、おそらくここのルートでA組とB組の主体が壊滅したのでしょう。どんな罠があるかわかったものではありません」


「強行軍の失敗例やな。ラスト1本はどないや? この道、どこに続いてんねん?」


「エルザワの町です……」


 もう何も無い焼け跡地だ。行くだけ無価値な町であるが……


「ですが、ここのルートをこう利用すれば……」


 ミンチィの許可無くマジックペンで地図に進行ルートを書いていく。


「草原を横切るってワケやな……」


「要注意なモンスターのレベルは30前後だよね。一角ペンギン、二角カンガルー、三角ゴリラ」


「ゴリラもおんのか?」


「どれも普段は温厚だけど縄張り荒らされたら……ほら、ね?」


 ほら、ね? じゃない。ペンギンはロケットのように飛んでくるし、カンガルーは完全にボクサーだし、ゴリラとか初心者には鬼畜仕様だ。


「なら、ウチの独断と偏見で作戦決めてええか?」


「まー異論があれば抗議しますけどね」


 うんうん、と頷く一同。

 脳死している生徒もいるだろう。戦意喪失で投げやりの生徒もいる。だから、妖怪退治屋という肩書きを持つ京を頼りにしている。皆が期待する。これは彼らをまとめやすく大きく利用できるポイントだ。


 さて、京はグループを2つに分けた。

 京を筆頭にメガネ君、ギャル染(北染)、その他を合わせて59名。この大所帯は例の草原の横断ルートを進軍する。それは私が思っていた以上に厄介な強行軍になりそうだ。


 それに対して、私、リア、衣鶴、A組に彼氏がいて泣いてた女子とその取り巻きの女子7人グループ、そして童貞野郎5人の少数鋭15名グループ。

 私たちはあのウネウネが出るかもしれない危険な湖を通る山ルートだ。解せぬ。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。本当にこの作戦で行くの……??」


 流石にこれは……と、女子7人グループのリーダー格の女子・百瀬ももせが抗議の音を上げた。


「まーまー、こちらも危険でしょうがミンチィ伯爵から頂いたこの<ゴーレム>で一気に山を下りましょう。百瀬さん」


「ふん……」


 まー怒るのも仕方が無いし、仲良くする義理もないわけだ。

 私達は作戦会議を終えて、それぞれがケムルズの町へ向かう準備に取り掛かり屋敷を出た。それぞれが身体強化を補強できるだけお互いにバフを掛け合い、もう一度それぞれ作戦と自分の役割を確認し合った。

 見送りに外に出ていたミンチィ伯爵は私を脅えた顔で窺っていたがスルーして。


「ありがとうございます、ミンチィ伯爵」


「い、いやいや、礼には及ばない。ワタシはこれぐらいしか君達の力になってやれなくて申し訳ない。だが、ソレは上手いこと乗りこなしてくれたまえ。そして、ミラ王女とこの国をお願いする……」


 ミンチィ伯爵お手製の土壌魔法で土と屋敷内に落ちている落ち葉で作った<ゴーレム>で強行軍に出る。衣鶴はミンチィ伯爵から土壌魔法の基礎を軽くレクチャーしてもらい、よほど気に入ったらしく<ゴーレム>に名前を付けてた。それが「ぷらちな馬」だ。ぷらちな感は皆無だが。


「おっさん、おおきにな。それとおっさんから死相が出とるから気いつけや? 変な気を起こしたらアカンで?」


「そ、それはまいったな。君たちのピンチに駆けつけようと密かに企んでいたのだが……わかった、屋敷で大人しく待っておこう」


「それがええ……」


「ふん……おっと、失礼。それでは行きますよ、下僕げぼくたち」


「「「「「誰が下僕だ!??」」」」」


 童貞野郎共とのお決まりのやり取りも終えて、私達のグループは先に進軍する。


「よっしゃ、ウチらも行くで。作戦開始や!」


「「「「「おーーーっ!!」」」」」


 そして、京が率いるグループも屋敷を後にした。

 さぁ、ケムルズの町へ。





☆――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 私達がミンチィ伯爵の屋敷を出発するのと同じ時刻、AM10:00――――

 ダレズゴア王国の朝は騒々しかった。玉座の間、この王国の58第目の王女、ミラ・ラ・ハラスモン(12)の少女が爆弾宣言していたのである。


「ミ、ミラ様、今なんとおっしゃいました……?」


「やっぱりママのお墓参り行きたい……」


「それは駄目です! 絶対に危険ですから!!」


「ママの命日なのにミラがお参りできないなんておかしいよ。たとえ裏切り者をおびき寄せるための作戦中だとしてもね! ミラには関係なっしーんぐ! というかー、ミラがその裏切り者を退治してみせよーぞ!!」


「あぁ、スイ様。この哀れなアホをお許しください………」


 誰がアホかー! とお転婆娘は家臣にオリジナルの粘着魔法をぶつけた。それはねちょねちょとしていて、くっついたらすぐに取れないやっかいな魔法であり、ぐわーとコミカルに床とへばりついた辺りまだ平和であった。


「嫌だ。絶対に行く。今、決めた。もう決めた! 行くったら行くの!! はい決定~!! それに小太郎様は意地悪すぎるよ!! なんでクラリスのお姉ちゃんに本当のこと全部教えてあげないの!! ミラはこんな茶番劇でお姉ちゃんが傷ついて悲しむなら、そんな幻想はミラの爆裂魔法でぶち壊してあげる!!」


「いやいや、そんなことしたら駄目ですって!! 絶対!! だーめ!!」


「じゃあ、今すぐお墓まで連れてってくれないとこの城を爆発します。さん・にぃ・いち……」


「このガキャ………っ!!」


 こうして私の知らない所で計画が狂い始めていった。

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