イベントプロローグ
「ただいま我が故郷! お帰りなさい僕! そしてこんにちは住人たちよ! いやあ本当に久しぶりだなあ! 何年ぶりだっけ? タケナカとマサムネは元気かな? かわいいかわいい仲間たちも元気かな? あ、でも入れ替わってる可能性あるよなあ……。ちゃんと確かめないとだね」
にこにこと笑顔を浮かべた青年が、第四区の一角でそう言った。黒いパーカーに七分丈の迷彩柄ズボン。そこから延びる右足は鋼でできた義足だった。
「僕のことみんな覚えているかな。別に覚えてなくても覚えてもらえばいいから全然平気だけどね。いやあそれにしても変わってないね。鐘の塔もまだあるし……あ、そうだ」
にたり、とイタズラを思い付いた子供のような笑顔を青年は浮かべた。頬に入れた『No.0』の黒い刺青が歪む。
「錆びてても一応鳴るしね。上るのもそう苦じゃない。準備運動だと思えばなんとかなるし……」
よし、決定! と青年は大きな声で言った。
「久しぶりに帰ってきたんだ。今、この都市にどれくらいの実力者がいるかも気になるし、タケナカとマサムネにはちゃんと伝えてるし……大丈夫だよね。第一区は問題ないだろ、第二区はむしろ喜ぶだろ、第三区は……アリアさんごめん、後で仕入れた毒草持ってくね」
随分と大きな独り言は、まだまだ続く。「タケナカ怒るかなあ。あいつ心配性なんだよなあ」「マサムネに一番に会いに行くべき? いやでもあいつは自分から会いに来てくれるよな」
青年は、第四区トップのナンバーゼロは笑う。高らかに嗤う。
およそ一分後。コンコルディアに錆びた鐘の音が鳴り響いた。