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荒廃都市Concordia  作者: 椎名透
〔怨念の剣〕
49/53

プロローグ

 その日は、唐突にやってきた。


「あれ……おまえ、」


 知った顔を見かけて、一人の男が話しかける。コンコルディアは無法地帯だが、それ故に多くの住人は「コイツなら信じられる」という存在を持っていた。

 男にとっての信頼できる人物は、目の前の人物だった。最近拠点から姿を消していたので心配していたのだが、どうやら無事だったらしい。


「ったく……連絡くらい寄越せよ」


 いつものように、男が肩を叩いた。


 刹那。


 ばたり、と。自身に何が起こったのか理解する暇もなく、男は倒れる。


「…………」


 彼が信頼していたという人物は、それを無表情に見下ろした。右手には大型拳銃が握られている。その瞳には何の感情もない。


「……《異端者》の、ために」


 呟かれた言葉が、風邪に溶ける。



 ◆◇◆◇◆


 同様の事件が都市各地で起こっていた。信頼していたはずのものが、確かな絆を持っていたはずのものが、突然自分を殺しにかかる。


 神子が、悲しそうに語った。

「ゼウスより、最後のお告げです。《異端者》を殲滅なさい。彼らに手を貸すものも、すべて。彼らは私たち──いいえ、コンコルディアという都市にその牙を向けました。彼らを殲滅しなければ、わたくしたちに未来はありません」


 将軍が、悔しそうに語った。

「アイツらが動き出した。いいか、何も考えるな。『敵』を斬れ。それだけだ。俺は俺が信じたように戦う。テメエらと俺が敵対する可能性もあるが……そのときは、容赦なんざいらねえ。いいか、テメエらは、テメエらの敵を殺せ」


 首領が、静かに語った。

「今から、私たちの一族が犯した過ち──その全ての情報を開示する。お前たちには知る権利がある。全てを知って、どう動くかは自由だ。……もし、私の罪を知ってなお、私に付いてくる大馬鹿者がいるならば、全力で各区のトップたちを援助しろと言わせてもらおう」


 異端者が、叫ぶように語った。

「いいか、僕はこれから、君たちを利用する! 自分の過去のために、君たちを利用して、《異端者》のやつらを潰す! これは裏切りの行為だ! 今まで僕を信じてくれていた人たちへの裏切りだ! 僕を殺したければ、殺してくれてかまわない。僕を恨め。僕を憎め。けど、忘れないでくれ。敵が僕以外にもいることを」


 そして。

 体の一部に数字を刻んだ3人が、鐘の塔から都市を見下ろして嗤う。

「始まったわねぇ。私の撒いた種はきちんと芽吹いてくれたみたい」

「私が『選んだ』んだから当たり前でしょ!」

「…………あと、少しだ」


 4番の数字を冠した彼が、嗤う。


「これは、俺たちの復讐なんだ。あの人を殺したアンタたちへの、復讐なんだ!」


 ◆◇◆◇◆


 この先にどのような結末があれど、

 この先にどのような悲劇があれど、

 物語は、始まった。

 ──もう、誰も戻れない。



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